↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くさなぎときつねの思い出ごはん。  作者: ちはやれいめい
きつねの章《しょう》
PR
3/30

3 ヒントはとおい思《おも》い出《で》の中《なか》

「とにかく作《つく》ってみるか。ええと、じゃがいも、にんじん、玉《たま》ねぎがちがうなら、これか、それともこっちか」


 父《とう》さんは古いレシピノートまで引《ひ》っぱり出《だ》してテーブルに広《ひろ》げる。


 カレーの味《あじ》を改良《かいりょう》するために、材料《ざいりょう》をどう変《か》えていったか書《か》きためている。


 雪路《ゆきじ》はとくいげにしっぽをふる。


「その昔《むかし》、わしがはらをすかせてたおれていたところにな、草凪《くさなぎ》はめしを分《わ》けてくれたのさ。それがとてもとてもうまかった。その礼《れい》に、悪《わる》いあやかしとたたかう力《ちから》をかしてやるようになったんだ。草凪《くさなぎ》はよわい若造《わかぞう》だったからな。わしが力《ちから》をかさねば、とっくの昔《むかし》にあやかしのえじきになっておったところだ」


 どこまで本当《ほんとう》なのかな。

 たぶん茶《ちゃ》わん一杯ていどの小《ちい》さな話《はな》を、ラーメンどんぶりくらいにもっている。


「はいはい。雪路《ゆきじ》がすごいのと、具《ぐ》がゴロゴロ大《おお》きく切《き》られていないことだけはわかったんだけど、もっとほかにない?」


「そうさな。具《ぐ》はほとんど入《はい》っていなかった。でもうまかった」



「わけわかんないよ! せめて、肉《にく》はわかる? カレーって使《つか》う肉《にく》によってだいぶ変わるから」


「マコト、歴史《れきし》の背景《はいけい》をもとに推理《すいり》するのよ」


 母《かあ》さんがどこからか、ぶあつい歴史書《れきししょ》を引《ひ》っぱり出《だ》してきた。

 ふだんはかけていないのに、メガネなんてかけて、人《ひと》さし指《ゆび》でメガネのブリッジをおしあげる。


「いい、マコト。明治四年《めいじよねん》に肉食《にくしょく》が解禁(かいきん)されて、日本人《にほんじん》はこのころから肉《にく》を食《た》べるようになったの。それまでは仏教《ぶっきょう》の教《おし》えに則(のっと)って、ぶた、牛《うし》、トリなんかの肉《にく》を食《た》べなかったの。あとは、生類哀(しょうるいあわ)れみの令《れい》っていう肉《にく》や魚《さかな》を食《た》べるのを禁止《きんし》する法律《ほうりつ》が江戸時代《えどじだい》にあったせいも、少《すこ》しはあるだろうけれど。現代《げんだい》みたいにカレールーをスーパーで買《か》うなんてこともできないから、使《つか》ったのはカレールーじゃないのはたしかだわ」

「へぇ。ルーがないの? じゃあご先祖《せんぞ》さまはどうやってカレーを作ったのかな。それともカレーじゃない?」



 話《はな》しあう私《わたし》たちに、雪路《ゆきじ》が言《い》う。


「ルーというのは知《し》らんが、草凪《くさなぎ》はその茶色《ちゃいろ》いごはんを作《つく》るとき、黄色《きいろ》っぽい粉《こな》を入《い》れておったぞ」


「カレー粉《こ》、かな? カレー粉《こ》で作《つく》ったってこと?」


「そうだ。平《ひら》たいナベに粉《こな》を入《い》れておった」


「これはだいぶ役《やく》に立《た》つヒントじゃないか」


 父さんが本《ほん》を開《ひら》いて、「カレー粉《こ》から作《つく》るカレー」のレシピを見《み》つけた。


「カレー粉《こ》と小麦粉《こむぎこ》、バターをいためる。雪路《ゆきじ》が食《た》べたカレーに近《ちか》づくかもしれん」

「なるほど。のこる肉《にく》は……いくつかためしていくしかないかな」


 具《ぐ》が少《すく》なめのカレー粉《こ》のカレー。うちの店《みせ》で出《だ》している具材《ぐざい》ゴロゴロカレーとはまったく別《べつ》ジャンルのカレーだ。


「マコト。ご先祖《せんぞ》さまがカレーを作《つく》ったのは、日本《にほん》でまだ玉《たま》ねぎのさいばいが始《はじ》まっていないころかもしれないわ。となると、代用《だいよう》で使《つか》われたのは長《なが》ネギじゃないかしら。もしも玉《たま》ねぎがあったとしても、とおい国《くに》からかなりの日数《にっすう》をかけて海路《かいろ》ではこばれてくるから、だいぶ高価《こうか》だったはずよ」

「すごいね、母《かあ》さん……」

「フッフッフー。そうでしょう、もっとほめていいのよー。これでも高校《こうこう》のときは学年《がくねん》トップだったのよ」


 母《かあ》さん、ドラマに出《で》てくる名(めい)たんていみたいだ。

 


「じゃあ雪路《ゆきじ》。玉《たま》ねぎカレーと長《なが》ネギカレーを作《つく》ってみるから、どっちがより近《ちか》いか食《た》べてみてよ」

「ふむ、よかろう」


 

 食《く》わせてくれとたのんできた立場《たちば》なのに、なんだかえらそうだった。


 ※生類哀(しょうるいあわ)れみの令《れい》

 1685年《ねん》に将軍(しょうぐん)の徳川綱吉(とくがわつなよし)が作《つく》った法律《ほうりつ》。

 あらゆる生《い》き物《もの》を殺《ころ》してはいけない。虫《むし》やヘビ、トリもきずつけちゃダメ。

 魚《さかな》つりもダメ。

 捨《す》てられた子《こ》はまもりましょう、お年寄《としよ》りにはやさしくしましょう、というマトモな項目《こうもく》もある。

 徳川綱吉《とくがわつなよし》がなくなったあとはいしされました。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。