第四章 40話 キャラバン隊1日目の野営
初日の野営地に到着した時には、ハインツ達案内人以外の皆疲労困憊であった。
いつもの山越えは、3人程の護衛兼従者を連れての山越えで2〜3ヶ月程の余裕ある往路だが、今回は大人数なキャラバン隊で、荷物も多く強行軍である。
何時もはロバに乗りながらなのだが、今回ロバは無く連れているのはヌミビア馬である。
馬には乗れない。
乗るには太腿と膝を上手く使いバランスをとりつつ馬体を挟み続ける特殊な技術が必要であり、ましてヌミビア馬は足が速い。
その様な高度な乗馬技術ハシムには無い。
だから今回ハシムは、歩きとなった。
後の時代に出来る鎧の無い当時の乗馬は、それだけの技術体力が必要であった。
「よしここなら開けている。
ここに天幕を張ろう。
飲み水があまり無いので、皆このヤギのチーズとヤギの油と干し肉で済ませてくれ。
あまり薪も使いたく無い。
焚き火は一ヶ所。
見張り守がついでに見といてくれ。
夜の火の守で狼避けのコノ香を炊いて欲しいが、煙が辛くて目に染みるので、皆が天幕で寝てから火に入れてくれ。」とハシムが見張り守をする従者達に説明をしてから味気の無い夕食である。
干物もチーズも硬く噛み切れない。
おかげで顎も歯も痛い。
臭いヤギ油を舐める。
空は星が無く風は凪。
静かで暗闇。
光は焚き火のみ。
「雪が降るかもな」
ボソっと食事をさっさと済ませた案内人の1人ピートがそう言うと「吹雪はしないか?」と、モモタウロスが訪ねた「今は凪で星が無い月も見えない。
しかしまだ草の匂いが立ち込めていない。
降るとしても小雨雪程度だと思う」
山の案内人ならではの言い回しで、大事は無いと察したモモタウロス。
ハシムのキャラバン隊の皆の瞼が重くなりつつあった。
暗闇にぽつんと今、光の揺れを発している焚き火。
その火に入れた最初の薪は未だ炭になり切らない。
未だそんな時間なのに睡魔の唄で朦朧とする。
初日の行軍にしては疲れの酔いがキャラバン隊の体を痺れさせている。
しかし何故かモモタウロスの五感は、疲れが多くなる程に暗闇が深い程に冴えていく、、いつも事だ。
熟睡なぞはした事が無い。
そんな夜だった。




