第四章 30話 思い出す
宴会を抜けてヤギ小屋の中で娘達との行為を終えた直後のモモタウロスは、空中に浮かぶ妙な格好をした人物と睨み合った。
多分、アレクサンドリアよりずっと先の南に広がる魔境の民と思われる。
その人物と小屋の中で睨み合った。
魔女コスのクールジャックとの初顔合わせ。
如何なる状況にも元服以来臆さなかったモモタウロスが、何故か言いようの無い恥ずかしさをこの時感じた。
ここで言う元服とは、戦に出て戦士になって帰ってくる事を言った。
11歳の時によく行って遊んでいた山があった。
そこは、家から遠く、歩きで2日程掛かる距離だった。
森を抜けて川を上流に進み湖を泳ぎ又その先の森を抜けると、高い山が聳えていた。
この山の麓で狼達と戯れ合うのが、この時期のモモタウロスがハマって楽しんでいた事だった。
そしてもう一つこの頃この場所に来て、偶に気になる事があった。
近くに住むノルマン人風の出立ちの娘が、ココの近くの森で木の実や山菜や野苺を採りに来ていた。
ブロンドの長い髪が麻の頬被りから出ている。
白い肌で碧眼の綺麗な瞳。
編み上げ靴に、膝丈の麻の着物を着た娘。
いつもこの娘を見かける時は、籠にきのこと木の実と野苺を朝から採って夕方に帰って行く姿。
歳は15くらいなのかな?と気になっていた。
母と、偶に来る商人が連れている従者くらいしか女を知らない当時のモモタウロス。
同い年の友が欲しかった。
純粋に同い年位の女の子に興味もあった。
そんな時その娘が、山菜採りをしていて誤って崖から滑落した。
近くにいたモモタウロスは、崖を駆け上がり落ちる彼女を受け止めて抱いたまま滑り落ち下敷きになった。
彼女は無事で、下敷きのモモタウロスから直ぐ降りてお礼を言っているみたいだった。
彼女との間には、言葉の壁があった。




