Act35.5:少年の消えた学園にて
学園長が金に汚いのは仕様です。多分。
書いてて赤い服とミニスカのツインテが見えた。
静也が学園から出奔した翌日、学園は大騒ぎになった。
アリアが朝食の為に静也の元を訪れたが、部屋の何処を探しても彼とケル坊は見つからず、学校のあちこちを奔走するも徒労に終わる。
ナナセ達に声を掛けて一特科総出で静也を探すが、学校の何処にも彼の姿は無かった。
レインに話を聞こうと職員室を尋ねれば、レインも学校から消えていたという。
それを聞いたアリアは迷わず学園長室に足を運んだ。
「お母様ッ!何故わたしに黙っていたんです!?」
「まあまあ、落ち着きなさいな」
バァン!とアリアが机に手を叩きつけ、学園長と書かれたプレートが床に落ちた。
静也が失踪した原因が母の仕業であると気付いたからだ。
そんなアリアに母であり、学園長であるトリシャが手を挙げて制する。
「あなたが怒るのも無理ないことなのは分かってるわ。でもこれは必要な事よ」
トリシャは落ち着いた声で、諭すように事情を説明する。
自身が静也の存在を公表したこと。
それを知った静也が出奔する旨を伝えに来たこと。
随伴者としてレインを宛てたこと。
そしてそうする必要があった理由を説明する。
「いい?わたしが静也くんの存在を公表したのは、『彼がこの学園に召喚された』という情報で世界の目が学園に向くことが狙いよ」
「………」
トリシャの言葉にアリアは納得行かないながらも耳を傾ける。
「そして静也くんが出て行くのを引き止めなかったのは『世界の目から静也くんを逸らすため』。どうしてか解る?」
「………それは、まあ」
言わんとする事はアリアにも理解できた。
静也の存在を大々的に公表し、召喚した組織が学園だと主張すれば、自然と世界中の目が学園に集中する。
その間静也が学園を出て行き、何処か別の場所で目撃情報が上がれば、その情報を手に入れた組織はそれが誤情報だとして処理される確率が上がる。
そしてそれは魔王の軍勢でもあり得ることだ。
情報の撹乱。
それがトリシャの目的であった。
「静也くんが誰にも言付けを残さずに学園を出て行ったのは、わたしの策を察してくれたから。………そんな顔しないの。必要な時は連れ戻す様にレインに指示しておいたから」
目を伏せるアリアにトリシャは彼女の頭を撫でてからそう口にした。
レインは条件付きながら、複数人を転移させる空間魔法を行使できる。
それを用いれば静也を連れ戻す事は可能だ。
学園内でその魔法を使えるのは、勇者召喚の秘術を継承してきたことで空間魔法の知識に明るいアリアとトリシャ、そして比類無き才を持つレインだけだ。
静也がアリアと距離を置いている以上、レインを随伴させたのはそういった理由であった。
「(それに、静也くんも要所々々で戻らなきゃいけないのは分かってるみたいだし)」
最後に静也と話した内容を思い出しながら内心で呟く。
『ま、今となっちゃ暫く用無しだがね』
彼が学園中に抜け道を作った旨を口にした際、こう言っていた。
『暫く』という言葉を付け足していたということは、戻る目処があるという事。
幾ら情報を流し、世界の目を学園に釘付けにしても、それを長期間持続させられる訳ではない。
時間が経てばトリシャの流した情報がブラフだと看破される。
それを隠蔽する為には静也が学園に居るという事実が必要だ。
具体的には、学園内の大きな催しの際に呼び戻す必要がある。
それを静也も理解していた様子だった。
「待つのは女の甲斐性よ。我慢なさい」
「………はい」
しょんぼりと項垂れる娘の姿を見て、最初の出戻りは早めにするようにレインに頼もうかとトリシャは考える。
「(………それに、戻ってきて注目が集まれば勇者とのパイプを作ろうとして、各国の重鎮が子供や孫を学園に寄越すだろうから、学園の収入もうなぎ登りだし♡)」
内心でそんな企みを想像しながら。
静也が看破出来なかったトリシャのもう半分の目的。
それは世界の目を釘付けにすることで、長期的に入学希望者を引き入れられるという金欲にまみれたものであった。
数日後、トリシャは全校生徒の前で静也は諸事情があってレインと校外学習に出ているとでっち上げ、失踪騒動は一応の沈静を保った。
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