Act35:凸凹トリオ
話数が進むたびに文字数が減ってる…。
文章力が欲しい。
グラールの工房を訪ねてから三日後の深夜。
静也は訓練着姿で部屋のベッドに腰掛けていた。
「………水、携行食、得物、路銀よし」
新たな籠手と脛当ての固定具をバチリ、バチリと留め、具合を確かめる。
銀と赤が鈍く反射する新型の爆裂籠手はより流線形になり、防御性能の向上は静也にも見て取れた。
鉄製の鞘に収まったふた振りの刀、長い刀を右肩から背に掛け、短い方は後腰に吊り下げてあり、鞘の峰側にミスリルロッドを分解して差し込んである。
腰の両側には革製のホルスターに収まった大型拳銃がぶら下がっていた。
バックパックに入っているものは着替えが数着と迷宮から盗ってきた金品と調理器具、小型のノートPCとペダル式発電機と外付けHDD、プラスチック製の食器が数組、非常食として棒状に固めた市販の固形携行食をそれなりに詰め込んでいる。
「……んで、移動手段よし」
『誰が?』
「アシスタンツッ!」
スパンッ!とケル坊がいつの間にか持っていたハリセンで静也の脳天をぶっ叩く。
「オイ、使い魔…」
『それはそれ、これはこれ。いちおう使い魔なのは名目上だから』
「くっ、流石王族…プライドが高いったぁ!?」
減らず口に再度張り倒された。
「………叩くなとは言わない。俺が悪いから。けどせめて、せめて加減してくれ」
『ごめんごめん』
獣人の腕力で叩かれれば流石の静也とて痛かったようだ。
涙目で半ベソをかく静也を見てケル坊は苦笑しながらメモ書きをかざした。
『で、忘れ物ない?』
「んー…他には…」
ガサガサと部屋の中を漁る。
「…………あっ」
レインに散々バレたお宝の新たな隠し場所をひっくり返している最中、静也の手が止まった。
「…………」
『シズ?』
メモをかざしながらケル坊が静也の顔を見ると、その表情は苦々しく歪んでいた。
その手には黒地のバンダナと、それに包まれた一房の髪と長方形の何かが収まっている。
『綺麗だね。女の人の髪?』
空に浮かぶ雲のように真っ白な髪を見てケル坊がメモを見せるが、静也は表情を動かさない。
「…………チッ」
ケル坊のメモに目もくれず、静也はバンダナから取り出した髪と長方形のそれ――――4人の少年少女と1人の女性の写った写真立て―――をバックパックに収め、バンダナを頭に巻いた。
荷物の中身を再三漁って他に必要な物が無いかを確認する。
「………うん、こんなもんか」
持ち出せるもの全てが収まっているのを確認した静也はバックパックを背負い、その上からマントを羽織った。
「行くぞ」
「!」
静也の言葉に、ケル坊は頷いて狼の姿となる。
部屋の窓を開けた静也はその背に乗ってケル坊頭を撫でた。
「重くないか?」
『ワンッ』
「大丈夫だよ」と一声鳴いて静也を乗せたケル坊は窓から外に飛び出した。
イグドラシルの幹を伝い、農場を突っ切り、学園と外を隔てる門の前に二人はたどり着く。
一度ケル坊から降り、学園を振り返った。
「………」
――――色々あったな。
この数ヶ月で様々な出会いがあった。
編入初日から他クラスの生徒と一悶着起こしたり、実戦稽古と称してボコボコに叩きのめされたり、迷宮攻略したりと、退屈のない毎日。
死にかけた事もあった。
皆で生き残って最後に笑いあった。
その思い出を胸に少年は前を向く。
「…………」
「どうした?狐につままれた様な顔をして」
前を向いた先には、褐色の肌と銀の長髪、眼鏡の奥にある赤い瞳が知的な印象を与える美女。
一特科の担任教師であるレイン・シチリカの姿がそこにあった。
「………色々ツッコミたい所はあるけど、何そのカッコ?」
静也は呆れたように額に左手を当て、右手でレインの姿を指さす。
今の彼女の格好は静也の訓練着と同様のズボンと黒インナーの上から皮鎧を着こみ、更にその上にウエストを太いベルトで絞った真っ白なコートを着ていた。
腰には銀色の輝きを放つ細身の剣。そしてバックパックを背負っている。
「旅に出るんだ。準備は入念にな」
「…………」
―――やっぱついてくる気か。
敢えて声に出さず、じとりと睨めつけて意図を伝える。
言わんとする事を理解しているのか、レインはにこりと口端を上げた。
「……クラスの連中はどうすんだ?」
「ユーツに押し付けた」
「言い切りやがったなオイ!ユーツ先生ご愁傷様!」
淀みない言葉に静也は全力でツッコンだ。
「つーかなんで一緒に来んだよ?」
「学園長にお前のお目付け役を頼まれたんだよ」
「………あのアマ」
その一言を聞いた静也は、脳裏に浮かぶトリシャへの恨み言を呟く。
トリシャなりの考えがあって随伴者を付けたのは静也にも分かるが、それにレインを宛てたのはいたずら好きな学園長の面白半分だと思われる。
「あー、先生」
「来るなと言っても付いて行くぞ?」
「…心を読むな」
にこにこと笑みを向けるレインに対し、静也はげんなりとした表情を隠そうともしない。
なんだかんだ言って責任感のある彼女のことだ、こうなったら梃子でも動かない。
「………」
静也は右後方に座るケル坊に目を向ける。
『……ぴ、ピュー…』
「テメーこっち見ろバカ犬」
狼形態なのに口笛を吹いて素知らぬ顔をする使い魔に僅かな怒りを滲ませた。
立つ瀬が無くなった静也はガシガシと頭を掻いて首を鳴らし、諦めた様子でため息を吐いた。
「わーったよ、好きにしろ。どーせゼブオードじゃ常識やら金勘定の価値すら分かんねーし」
「うん、宜しい」
くすくすと笑うレインに気怠げな目を向けながら、静也は門から一歩踏み出す。
その右側にケル坊が、左側にレインが並ぶ。
狼と人間とダークエルフ。
奇妙な3人の旅路が始まった。
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