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Act33:『遊び』

総合100P到達しました。

総合PV16000突破しました。

ありがとうございます。

日常回もそろそろ終わりかなー。

 ウィジス学園、第二体育館。

 マットの敷かれた中央に少年が目を閉じて立っている。


「…………」


 態勢からだ半身はんみ金属棒ミスリルロッドを逆手に握る両手は、脱力してぶら下げる。

 振り子の如く左右に揺れる少年、赤月静也。

 それを相棒(ケル坊)教師レインがじっと見守る。


「……ふっ」


 目を開けて少年が動いた。

 右のロッドを切り上げ、間を置かずに逆のロッドで左薙ぎ。

 それに合わせて左上段から蹴りを振り、背を向けて右足で後ろ回し蹴り。

 蹴りを打った勢いに乗って背中越しに横から右手のロッドで突きを打ち、前後反転して順手に握り直した左のロッドで正面から突く。

 更に左足を軸にして反転、右袈裟斬りから膝蹴りを打つ。

 一瞬だけ前に動いた直後、再び身体を反転させて左のロッドを背後に投げつけた。


『ガウッ!』


 先端がブレずにまっすぐ飛んだロッドを、ケル坊が咥えてキャッチする。


「お、ナイスキャッチ」


『ワンッ!』


 静也がロッドを受け取って頭を撫でてやると、ケル坊は嬉しそうに吠えた。

 ぱちぱちと拍手が飛ぶ。


「お見事。普段の喧嘩殺法とは大違いだな」


「普段は喧嘩殺法で悪かったな」


 レインの軽口に静也は口を尖らせて答えた。


「今のが白雲流『浮雲うきぐも』を元にした『俺の型』。どうよ?」


 静也の言葉にレインは自らの顎に手を当てた。


「ふむ…白雲流というのは、複数対一の状況に重きを置いた剣術みたいだな」


「………へぇ」


 レインの見解に静也は少し驚いた風に口笛を吹く。


「よく分かったな。確かに白雲流は介者剣術かいしゃけんじゅつを元にした、乱戦時に戦うための剣術だよ」


「…かいしゃけんじゅつ?」


 聞き覚えの無い言葉にレインは首を傾げた。

 「知らねーわな」と苦笑しながら静也は言葉を続ける。


「鎧着込んだまま斬り合う剣術の事。鎧の隙間から急所にザクッとやるんだ」


 ロッドを剣に見立てて突き刺す動作を見せる。


「……戦の中で生まれた剣というわけか」


「そゆこと。まあ俺は突くよりも斬った薙いだの方が性に合ってるし、さっき見たみたいに蹴りなんかを混ぜてアレンジしてるけどね」


 ロッドを回して持ち直し、それで肩を叩きながらそう締めくくった。

 その様子にレインはくすくすと苦笑する。


「邪道だな」


「邪道じゃなきゃ天才あんたみたいなのと勝負にならねーもんよ」


 レインの言葉に静也は眉間にしわを寄せ、歯を剥き出して呟いた。


「実感が篭ってるな」


「まーねー。同門連中はみーんなそういうのばっかだった…」


 静也は軽い調子で言葉を吐くが、それが徐々に萎んでいく。

 その様子にレインは眉をひそめた。


「静也?どうした?」


「……………何でも無え。ヤなこと思い出しただけだ」


 心配そうに声を掛けたレインに静也はそう返し、僅かに険しくなった顔に手を当てる。


「(………どうせ『こっち』にいる間は関係ない。今は忘れろ、俺)…あ、そういや先生よ。ひとつ訊いてみたい事があったんだけど」


 思考を切り替えるついでに静也はレインにひとつ質問を投げてみた。


「うん?何かな?」


「今までの動きを見て、俺の戦闘技術ってレイン先生の中でどの辺りの位置にいる?正直に答えてくれ」


「……む」


 静也の質問にレインは難しい表情を見せる。


「………はっきり言えば、評価するのが難しいな」


「あら、そらまたどうして?」


 難しい表情のままレインは眼鏡を上げて唸った。

 どうやら単純にレベルが低すぎて話にならない訳では無いらしい。


「身体能力の高さで言えばお前は上の中程度だが、技量に関して言えば中の下だ。しかし…」


「しかし?」


 静也は続きを促す。


「複数の格闘技を織り交ぜた徒手空拳と白雲流。これらを適切に組み合わせた時の実力が測りづらいんだよ」


 困惑を多分に含んだ顔でレインは説明を続ける。

 曰く、静也の格闘技術は地球リラオードで生まれたものなので、単純にレイン自身が知らないという部分がひとつ。

 更に、静也がそれらを織り交ぜ、彼独自の動きを作っているというのがひとつ。

 最後に、明確な型を持たない白雲流そのものが赤月静也という少年の実力を測りづらくしているそうなのだ。


「今の説明に付け加えると、お前がわざと動きに無駄を排していないのも一助になっているな」


「……………そ、そこまでお見通しかよ」


 レインの言葉に静也は驚きを露わにした。

 確かに静也の動きには無駄が多い。

 拳や蹴りが大振りになることは元より、足運びにも無駄な遊びが散見される。

 そしてそれを静也が敢えて残しているものだとレインは気付いていた。

 大振りな攻撃は相手を誘い込むための罠。

 無駄な足運びは相手の動きを制限するための騙し(フェイント)

 突出した才能のない静也に取ってその無駄な動きは、レインの様な強者と渡り合う為の戦略だった。


「実際、わたしでも読み切れない事が少なからずあるしな」


「………の割に、一回も白星取ったこと無いのですが?」


 静也がじとりとレインをめ付けると、彼女はふふんと鼻を鳴らす。


「そこはそれ、経験の差というやつだ」


「………反則チートが」


 レインの一言に、静也は呆れと悔しさを含んだ表情でその場に寝転んだ。

 それを見たケル坊が静也のそばに寄り、ぺろりと頬を舐める。


「慰めてくれんのかー?ありがとよケル坊ー」


『クーン』


 静也はわしわしと身体を撫でてケル坊にじゃれつく。

 それを見てレインはくすくすと微笑んでいた。

ご拝読いつもありがとうございます。

ご意見ご感想お待ちしております。

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