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Act26.5:追憶.1

伏線回。

『………いつまで型の練習やってんの、あんた』


『あぁ?』


 白道着と黒袴姿の彼女の言葉に、同じ格好の静也は面倒臭そうに構えを解いた。

 それだけで板張りの床に汗が滴り落ち、窓の隙間から差し込む光できらきらと反射する。


 ―――ああ、これは夢だ。


『納得行くまでやるに決まってんだろ』


『納得行くまでって…基礎は確かに大事だけどねぇ、ちっとは乱取りか打ち込み位しなさいっての』


『うっせ。俺の才能の無さ分かってて言ってんのかメスゴリラ』


 静也の言葉に彼女はクワァッ!と赤い瞳を見開いた。

 『あ、ヤバ』と静也は身構える。


『どわぁっ!?』


 防御も受け身もままならず即座に襟を捕まれ、投げ飛ばされた。


『このアホジャリめ。誰がメスゴリラですって?』


『ぐ…アナタサマでごぜぇやすよ』


『よーし分かった。今すぐ竹刀を取れェイ!』


 投げられても減らず口を叩く静也に、彼女は真っ白な長髪を逆立てて叫んだ。


 ―――やっぱり、夢でも怖えなー。


『チッ…めんどくせー女』


『聞こえてるわよアホジャリ。………って、あんたまたそんなテキトーな構えを…』


 正眼の構えを取る彼女は、二本の小太刀の竹刀を逆手に構える静也に呆れた目を向ける。


『基本自体は流派ウチのモンだろ。第一、俺に正道は合わねーよ。だからこうやってッ!』


『わっ!』


 蛇のように竹刀が飛び、彼女は驚いた声を上げつつもあっさりと防いだ。


『邪道じゃなきゃマトモに勝負も出来ねーよ』


 ―――その割には簡単に躱されちまうんだけどな。


『この天の邪鬼め』


『なんとでも言え、乳魔人め』


 彼女がああ言えば、静也は贔屓目抜きに豊満な胸を左手で指さしながらそう言葉を返した。


『触らせないわよエロガキッ!』


『だぁっ!誰が触るか!つーか手加減しろよッ!』


 互いに笑いながら竹刀を向け合う。


 ―――ま、結局この後ボコボコにされたけど。


『ぜひー…ぜはー…このアマ…ちっとは弟子に優しくしろ…』


『弟子だからこそビシビシ行くのよ。というか一度くらい師匠って呼びなさいよ』


『誰が呼ぶか』


 そう言って静也は息を整え、すぐに跳ね起きた。


『……相変わらずの体力オバケね』


『るっせ。これしか取り柄になりそうなモンが無えんだから仕方無えだろ』


 唇を尖らせる静也に『確かにね』と彼女は苦笑する。


 ―――ああ、懐かしい。けど…。


 そんな時、道場の門戸が叩かれた。


 ―――やっぱり、この時か。


『あ?客?』


『まさか入門希望者!?』


 バタバタと彼女は応対の準備に駆け出す。

 静也はその様子を興味無さげに眺めていた。


 ―――そうだ、もしもこの時、アイツが来なきゃ。


『すいませーん。ここって剣術道場ですよね?』


『そう!いらっしゃい!白雲流しらくもりゅう剣術道場へ!』


 ―――彼女ウタが死ぬことは無かったのに。

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