すれ違う想い
いや、ちょっと待て!これはまずい。状況がまずすぎる!!
「ちょ、ちょっと待って!ソアラちゃん!!」
「なあに、お兄ちゃん?」
「私たちは、その、家族で、それも兄妹という設定でしたよね?」
「うん。そうだよ、お兄ちゃん」
「だとすると、今のこれは……ちょっとこう……その……」
「お兄ちゃん、ソアラのこと、好きになってくれないの……?」
というか、なんだろう。嬉しいはずなのに、無理をして俺に好かれようとするソアラが、なぜか悲しくなって、胸がズキリと痛んだ。だって、こんなこと、ソアラちゃんがやりたくてやっているわけはない。俺は、彼女が悲しい顔をするのを見たくないと、この瞬間、思ってしまった。
「もう、やめるんだ、ソアラちゃん!もっと自分を大切にして――」
俺は振り向きながら、ソアラちゃんの腕をつかんで辞めさせようとする。だが――
「キャッ、お兄ちゃん!?」
足元を滑らせ、ソアラの上になり、のしかかってしまう恰好になる。
「お、お兄ちゃん………」
ソアラは、潤んだ瞳でオレを見つめ、そっと目をそらした。
――アレ?この構図、なんかヤバくないか?俺が襲ってると勘違いされてるだろ絶対。
と、そこでソアラの股間に変な物を見つけた。
ソアラのズボンと股の間から一直線、上方へ何かが飛び出している。
それはイキりたった、チ○コだった。
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・・・・・・・・いや、違う。よく見ると、短刀だ。
心臓が止まるかと思ったわ。ふざけるな。
それはそうと、なんだコレ。
「ソアラちゃん、それは一体・・・」
そう俺がソアラちゃんへ問い掛けると、ハッとした顔をして短刀をズボンから取り出し、隠すように握り締めた。
「お兄ちゃん、これは、その・・・」
ソアラちゃんは顔を背ける。そしてその目に涙が浮かび始める。
一拍おいて、ソアラちゃんは意を決したように打ち明けた。
まさに悲壮感に満ちた表情で。
「襲われた時に、コレを使うの・・・」
俺はゴクリと喉を鳴らす。
襲われた時・・・?そう言えば今、お兄ちゃんに襲われたよね。
「使う、というと、どういう風に・・・?」
恐る恐る、そう俺は問い掛ける。
大丈夫。大丈夫だ。問題ない。
しかし、ソアラちゃんは涙を流しながら言った。
「この短刀で・・・・自害するの!!」
なんで!?
武将の妻か!!
しかも、そっちが誘ってきたのに!
・・・いや待て。本当に、本当にそうなのか?
ひょっとして、俺はとんでもない勘違いや思い違いをしているのでは無いだろうか。
そうでなければ、目の前で今にも自害しようとしている妹の説明がつかない。
そうだ、ひょっとすると俺のことを試すために、あんなことをして来たのかも知れない。
だが彼女は信頼した兄に裏切られ襲われそうになったショックで、今まさに短刀を抜き放とうとしている。
何というお兄ちゃん愛。これはもはや信仰に等しい。彼女にとってお兄ちゃんとは崇高で、絶対の信頼を置ける存在でなければならなかったのだ。
何とかしなければ・・・何とか!
「待って!ソアラちゃん!早まってはいけない!!」
俺はとっさに短刀を掴み、奪い取る。
「あっ、お兄ちゃん!返して!それが無いと自害できないよ!?」
させてたまるか!
しかしどうする!?
とにかく例えソアラの勘違いであっても、兄が妹を襲おうとした事実は変わらない。
とにもかくにも誠意を込めて、二度とこんなことはしないと宣言すれば、自害を取りやめてくれるかも知れない。
俺はソアラちゃんに一喝する。
「必要ないっ!!」
「えっ・・・?」
ソアラちゃんはびっくりしたような顔でこちらを見た。
俺はソアラちゃんの肩を掴み、顔を近づけてジッと目を見る。誠意を示すのだ。
いま一度、兄の信用を取り戻す。お兄ちゃんは、二度と、妹には手を出さない!
「必要ないんだソアラちゃん。もうそんなものは」
ソアラちゃんは目を見開く。そしてその瞳が揺れ、声が震える。
「でっ、でもお兄ちゃん、その短刀がないと、その、襲われた時にっ!」
だが再び、ソアラちゃんへ怒鳴る。とにかく勢いで押し切る!
「必要ないと言っているだろう!!お兄ちゃんを信じろ!!」
ソアラが絶句する。
見つめあったまま、時が流れる。
そのままどのくらいの時が流れたろうか、ソアラちゃんから左手が差し出され、救いを求めるかのように揺れた。
「お、お兄ちゃん・・・いいの?本当に?」
俺はソアラの左手を握り締め、今度は静かに言って聞かせる。もう一息だ。
「いいか、ソアラちゃん。いや・・・ソアラ。何度でも言う。そんなモノは必要ない。もう一生、必要になることは無い。お兄ちゃんを・・・信じるんだ」
俺の言葉を聞いてしばし茫然とするソアラ。そしてその顔が歪んだかと思うと、顔をクシャクシャにして泣き始めた。
信頼していた兄に襲われそうになって、よほど怖かったのだろう。罪悪感に胸がズキリと痛む。
「お、おに、お兄ちゃん・・・信じる。ソアラ、お兄ちゃんのこと、信じるよ」
そう言うとソアラが抱きついてきた。
・・・ふぅ、何とかソアラの信頼を取り戻せたようだ。
本当に、もう少しでとんでもない勘違いをする所だった。
「ずっと一緒だよ、お兄ちゃん・・・」
ソアラはこちらに抱きつき安心しきった表情をしている。
ソアラの背中を撫でながら、今後は早とちりする前に相手の話をちゃんと聞こうと、心に誓うのだった・・・・。




