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『あの日の「ここ」から』  作者: てぃな


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第三十二話 これからの話

未来は、突然決まるものじゃない。

何気ない毎日の積み重ねの中で、少しずつ形になっていく。



「来年も、ここ来たいね。」


何気なく言った言葉だった。


でも。

その瞬間。


少しだけ不思議な気持ちになった。



来年。


その言葉を自然に使えること。


それが嬉しかった。


昔は。


「またね」


と言っても。


本当にまた会えるか分からなかった。


卒業したら。

離れたら。

それぞれ違う道に進んだら。


どうなるかなんて分からなかった。



でも今は。


来年の話ができる。

その先の話もできる。


それが当たり前みたいに感じる。



「柚。」

「ん?」


湊くんが歩きながら言う。


「昔さ。」

「うん。」

「卒業した後も、普通に会えると思ってた。」



その言葉に。


少し胸が痛くなる。


私もそうだった。


ずっと続くと思っていた。


でも。

現実は違った。



「でも。」


湊くんは続ける。


「離れたから分かったこともある。」

「何?」


聞くと。


少し笑う。


「大事な人って、離れても消えないんだなって。」



胸がいっぱいになる。


昔の私なら。

きっと泣いていた。


でも今は。

隣で笑える。



「湊くん。」

「ん?」

「変わったね。」


そう言うと。


湊くんは笑った。


「柚も。」



小学生の頃。


湊くんは遠い存在だった。


何でもできる人。


私には届かない人。


でも今は違う。



悩むところも知っている。


弱いところも知っている。


それでも好きだと思える。



帰り道。


駅の前で立ち止まる。


「またね。」


いつもの言葉。


昔から使っていた言葉。


でも。

今は少し違う。



「また明日。」


湊くんが言った。


その一言に。


胸が温かくなる。



明日がある。


来週がある。


来月もある。


来年も。


きっと。



長い時間を越えて。


やっと隣に戻ってきた人。


これからは。

離れないようにするんじゃなくて。


一緒に歩いていくんだと思った。

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