第三十話 変わったこと、変わらないこと
好きと言葉にしたからといって、何もかもが急に変わるわけじゃない。
でも、同じ時間でも少しだけ見え方が変わる。
付き合うことになってから。
私たちの関係は、少しだけ変わった。
……と思う。
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「おはよう。」
朝、湊くんから届くメッセージ。
それだけ。
たった一言。
でも。
今までとは違う。
「恋人から届いた言葉」
そう思うだけで、少し嬉しくなる。
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でも。
会えば、いつも通りだった。
仕事の話をする。
くだらないことで笑う。
昔の話をする。
変わらない。
だから時々、不思議になる。
本当に付き合ったんだよね?
って。
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ある日。
二人で食事をしていた時。
湊くんが笑った。
「なんか変な感じ。」
「何が?」
「柚と付き合ってるって。」
思わず笑ってしまう。
「湊くんでもそう思うんだ。」
「思うよ。」
少し照れたように言う。
「ずっと近くにいたのに。」
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その言葉に。
胸が温かくなる。
そうだった。
私たちは。
付き合う前から、お互いのことをたくさん知っていた。
好きになる前から。
大切だった。
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「でも。」
湊くんが続ける。
「嬉しい。」
「え?」
「今まで友達だった時間も大事だけど。」
少し間を置いて。
「これからは、恋人として柚の隣にいられるから。」
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顔が熱くなる。
昔だったら。
こんな言葉を聞いただけで、何も言えなくなっていたと思う。
でも今は。
少しだけ笑える。
「湊くんって、たまにすごいこと言うよね。」
「そう?」
本人は本当に分かっていない顔をする。
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帰り道。
昔と同じように歩く。
並んで歩く距離。
話す内容。
笑うタイミング。
何も変わらない。
でも。
手が触れそうな距離にいることを意識してしまう。
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「柚。」
「ん?」
「手、繋いでもいい?」
その一言に。
なぜか笑ってしまった。
「今さら?」
「今さらだから。」
湊くんも笑う。
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小学生の頃。
隣を歩くだけで嬉しかった。
名前を呼ばれるだけで特別だった。
今は。
手を繋ぐことができる。
好きだと言える。
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でも。
一番嬉しいのは。
昔から変わらない人が。
今も隣にいてくれることだった。
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帰り道。
握った手の温かさを感じながら思う。
恋人になったから、幸せなんじゃない。
湊くんだったから。
この人だったから。
ここまで来られたんだと思った。




