第二十二話 変わらないところ
人は変わっていく。
住む場所も、環境も、考え方も。
それでも、ふとした瞬間に昔の自分を思い出させるものがある。
湊くんと会うようになってから。
私の日常には、少しずつ小さな変化が増えていた。
仕事帰りに少し話す。
休日に食事をする。
昔の話をする。
そんな時間が、自然に増えていった。
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不思議だった。
小学生の頃は、毎日顔を合わせていた。
教室で隣にいて。
休み時間に話して。
帰り道を一緒に歩いた。
でも今は。
会えるのはたまにだけ。
それなのに。
一緒にいる時間は、昔とは違う安心感があった。
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ある日の帰り道。
駅へ向かって歩いていると。
道の端で、女性が何かを探していた。
落とし物をしたのか。
何度も足元を見ている。
周りを歩く人たちは、気づかず通り過ぎていく。
私は足を止めた。
「大丈夫ですか?」
声をかける。
女性は少し驚いた後、安心したように笑った。
「ありがとうございます。」
一緒に探すと、すぐに落とし物は見つかった。
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その場を離れると。
隣を歩いていた湊くんが、少し笑った。
「やっぱり変わらないね。」
「え?」
私は首を傾げる。
「そういうところ。」
「どういうところ?」
聞くと。
湊くんは少し考える。
「誰かが困ってることに、すぐ気づくところ。」
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その言葉に。
胸の奥が少し温かくなる。
昔から。
私は特別なことをしているつもりはなかった。
ただ。
困っている人がいたら気になる。
それだけだった。
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「湊くんって。」
私は笑う。
「昔からそういうところ見てたの?」
すると湊くんは少し照れたように笑った。
「見てたよ。」
「え?」
「柚のこと。」
さらっと言われて。
返事に困る。
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昔は。
湊くんのことを、遠くから見ていた。
何を考えているのか分からなくて。
でも、優しい人だと思っていた。
今は。
少しずつ分かる。
湊くんもまた。
人のことをよく見ている人だった。
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「でも。」
湊くんが続ける。
「昔の柚しか知らないと思ってた。」
「今は?」
聞くと。
少し間を置いて。
「今の柚も、ちゃんと柚だなって思う。」
そう言った。
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その瞬間。
胸が少しだけ高鳴った。
昔好きだった人。
ずっと心の片隅にいた人。
でも。
今、目の前にいる湊くんは。
もう思い出の中の男の子じゃない。
今の湊のこと。
もっと知りたいと思っている。
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帰り道。
並んで歩く二人の影が伸びていた。
昔とは違う道。
昔とは違う時間。
でも。
変わらないものもあるのだと思った。




