表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あの日の「ここ」から』  作者: てぃな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/35

第二十二話 変わらないところ

人は変わっていく。

住む場所も、環境も、考え方も。

それでも、ふとした瞬間に昔の自分を思い出させるものがある。



湊くんと会うようになってから。

私の日常には、少しずつ小さな変化が増えていた。


仕事帰りに少し話す。

休日に食事をする。

昔の話をする。


そんな時間が、自然に増えていった。



不思議だった。


小学生の頃は、毎日顔を合わせていた。

教室で隣にいて。

休み時間に話して。

帰り道を一緒に歩いた。


でも今は。

会えるのはたまにだけ。


それなのに。

一緒にいる時間は、昔とは違う安心感があった。



ある日の帰り道。


駅へ向かって歩いていると。

道の端で、女性が何かを探していた。


落とし物をしたのか。

何度も足元を見ている。


周りを歩く人たちは、気づかず通り過ぎていく。


私は足を止めた。


「大丈夫ですか?」

声をかける。


女性は少し驚いた後、安心したように笑った。


「ありがとうございます。」


一緒に探すと、すぐに落とし物は見つかった。



その場を離れると。


隣を歩いていた湊くんが、少し笑った。


「やっぱり変わらないね。」

「え?」


私は首を傾げる。


「そういうところ。」

「どういうところ?」


聞くと。


湊くんは少し考える。


「誰かが困ってることに、すぐ気づくところ。」



その言葉に。

胸の奥が少し温かくなる。


昔から。

私は特別なことをしているつもりはなかった。


ただ。

困っている人がいたら気になる。


それだけだった。



「湊くんって。」

私は笑う。


「昔からそういうところ見てたの?」


すると湊くんは少し照れたように笑った。


「見てたよ。」

「え?」

「柚のこと。」


さらっと言われて。


返事に困る。



昔は。


湊くんのことを、遠くから見ていた。

何を考えているのか分からなくて。

でも、優しい人だと思っていた。


今は。

少しずつ分かる。


湊くんもまた。

人のことをよく見ている人だった。



「でも。」

湊くんが続ける。


「昔の柚しか知らないと思ってた。」

「今は?」


聞くと。


少し間を置いて。


「今の柚も、ちゃんと柚だなって思う。」


そう言った。



その瞬間。

胸が少しだけ高鳴った。


昔好きだった人。

ずっと心の片隅にいた人。


でも。

今、目の前にいる湊くんは。

もう思い出の中の男の子じゃない。


今の湊のこと。

もっと知りたいと思っている。



帰り道。


並んで歩く二人の影が伸びていた。


昔とは違う道。

昔とは違う時間。


でも。

変わらないものもあるのだと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ