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『あの日の「ここ」から』  作者: てぃな


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第十五話 それぞれの未来

時間は、思い出を消すものだと思っていた。

でも本当は、大切なものを心の奥にしまっていくものだった。



中学二年生、三年生になる頃には。

私はすっかり新しい生活に慣れていた。

女子校という環境は、最初に思っていたよりずっと楽しかった。


友達と笑って。

勉強に追われて。

時には悩んで。


小学生の頃には知らなかった世界が、少しずつ広がっていった。

昔のように、毎日湊くんのことを考えることはなくなった。


でも。

何かの瞬間に思い出すことはあった。

帰り道で見かけた青いランドセル。

公園の近くを通った時。

バレンタインの季節。


そんな小さなきっかけで。


「あの頃、楽しかったな。」

と思う。

それだけだった。



高校生になる頃には、私はもう小学生の頃の自分とは違っていた。

少しだけ自信がついた。

友達も増えた。

好きなこともできた。


周りから、

「雰囲気変わったね。」

と言われることもあった。


昔の私は、自分に自信がなかった。

少しぽっちゃりしていて。

可愛い服を着たいと思っても、似合わない気がしていた。


でも。

少しずつ、自分を好きになれるようになっていた。



湊くんのことは、たまに思い出した。

SNSを見ることも、いつの間にか減っていた。


でも。

久しぶりに投稿が流れてきた日。


私は少しだけ画面を見つめた。

そこには、昔とは違う湊くんがいた。


背が伸びて。

大人っぽくなって。

知らない人たちと笑っている。


「湊くんも、変わったんだな。」

そう思った。


少し寂しい。


でも。

不思議と嫌ではなかった。

私も変わっているから。



高校を卒業する頃。

小学校の卒業アルバムを久しぶりに開いた。

最後のページ。

寄せ書き。

その中に、湊の文字があった。


短い言葉。


『元気で』


たったそれだけ。


あの日の「またね」を思い出した。



あれから何年も経った。

私たちは、それぞれ別の場所で生きていた。

もう小学生の頃みたいに。

毎日会える距離ではない。

何でも話せる関係でもない。


でも。

あの頃の時間は、確かに存在していた。


そして私はまだ知らなかった。

人生は時々。

忘れたと思っていた大切な人を。

もう一度、自分の前に連れてくることがあるということを。

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