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『あの日の「ここ」から』  作者: てぃな


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第十四話 離れていく季節

離れることは、忘れることじゃなかった。

ただ、同じ時間を過ごせなくなるだけだった。



中学校の入学式の日。

私は少し緊張しながら、新しい制服に袖を通した。


鏡を見る。

小学生の頃より少しだけ背が伸びた自分。


知らない校舎。

知らない先生。

知らない人たち。


ここから、新しい毎日が始まる。


私は女子校へ進学した。

周りには同じように受験を頑張った子たちがいて、みんな少し大人びて見えた。


最初は緊張していたけれど、少しずつ友達もできた。

休み時間に話す相手ができて。

一緒に帰る友達ができて。

毎日は思っていたより忙しく過ぎていった。



湊くんは、地元の中学校へ進んだ。

同じ街にいる。

少し行けば会える距離。

でも。

会うことはなかった。


小学校の頃は、毎日顔を合わせていたのに。

不思議だった。


距離なんて、そんなに変わっていないはずなのに。

私たちの時間は、別々に進み始めていた。



SNSでは繋がっていた。

たまに、湊くんの投稿が流れてくる。

部活の写真。

友達と写っている写真。

知らない制服。

知らない場所。


「元気そうだな。」

そう思う。


それだけ。


昔みたいに、


「今日何してたの?」


なんて聞くことはなかった。


誕生日にメッセージを送ることもなかった。

嫌いになったわけじゃない。

話したくないわけでもない。


ただ。

何から話せばいいのかわからなくなっていた。



ある日。

スマホを見ていると、湊くんの投稿が目に入った。

友達と撮った写真。

そこに写る湊くんは、楽しそうに笑っていた。


私は少しだけ驚いた。

小学校では見慣れていた笑顔。


でも。

今の私は、その笑顔を知らない。


知らない友達。

知らない毎日。

知らない時間。

その瞬間、初めて気づいた。


湊くんの世界は、私の知らないところで広がっているんだ。


そして。

私の世界もまた、湊くんの知らない場所で広がっている。



中学一年の終わり頃。

久しぶりに小学校の友達で集まった。

莉央も、大和も、変わっていなかった。


「久しぶり!」

笑い合う。


でも。

一人だけ来られなかった。


湊くん。


予定が合わなかったらしい。


その名前を聞いた時。

胸の奥が少しだけ動いた。

まだ、忘れていなかったんだと思う。



家に帰ってから。

小学生の頃の写真を見る。


運動会。

公園。

卒業式。


そこには、いつも湊くんがいた。

私は小さく笑った。


「懐かしいな。」

そう呟く。


もう戻れない時間。


でも。

なくなったわけじゃない。

私の中には、ちゃんと残っている。


あの頃の初恋は。

少しずつ形を変えながら。

思い出になっていった。

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