表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小侍従、季を渡る ~光源氏のハーレムを阻止したかっただけなのに~  作者: 春凪とおる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/5

第一話 名残りばかりの春

春うららかな日。

小侍従というより、藤原の姫として、実家で日を受けていた。


——ああ、大学生に戻ったみたい。


なんて、思う。

まさかの姫生活で、ここのところ、心せわしなかった。


——大学生?


そんな言葉が、ふと浮かんでは消える。

和歌をつくらされ、筆をとらされ、ただ静かに座る時間。

どこかで知っているような、知らないような。


衣擦れの音が、すぐそばで止まった。


「姫さま、伯母上さまがお待ちにございます」


……来た。


——ああいうことも、あったのだし。


通されたのは、いつもより奥の間だった。

御簾の向こうに、人の気配がある。


——逃げ場は、なさそうだ。


伯母上は、相変わらずでいらした。

凛とした面差しに、わずかに伏せられた眼差しさえ、隙がない。


言葉はまだ交わされていないのに、

この場のかたちは、ことばに先んじて整っている。


——少し、おそろしい。


「よく参りましたね」

「お呼びにあずかり、参りました」

「春のうちに決まるご縁は、やはり良いものですから」


そう言って、声がわずかにやわらぐ。


——逃げ場は、なさそうだ。


「ありがたきことにございます」


そう答えながら、視線を少しだけ落とす。

断る理由は、どこにもない。


けれど、進む理由も、見つからない。

ふと、春の霞がよぎる。


——ことばにするなら。


結ばずも 春の霞に まぎるれば

名残ばかりの 風ぞやさしき


その話は、春の中に、ほどけるように消えていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ