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人間社会は、親父を潰せなかった


本家の朝は、少しだけ変だった。


いや、だいたい毎日、変だった。


受付小屋の前には、昨日増えた板がまだ並んでいる。


武器はここに置け。

暗殺もだめ。

鍋に毒、だめ。

変なものは受付へ。


牧人は、その四枚を見て、朝から頭を抱えた。


「これ、来た人が見たらどう思うんだ」


ザガが腕を組んだ。


「分かりやすいと思うぞ」


「暗殺もだめ、が分かりやすくて困るんだよ」


ニコは無表情で板を抱えていた。


大事


牧人は板を見た。


「大事だけどな」


ヒナが梁の上で笑った。


「やだ、親父が負けた!」


ベロは鍋の前で言った。


「鍋に毒、だめ。これは消すなよ」


「消さないけど、普通は書かないんだ」


「普通は毒を持ってこねえ」


「それはそうだ」


ミズハが水桶の横で笑った。


「最近、物騒な事が多いわね」


イトは梁の上で糸を揺らした。


「外、来る」

「今日は、硬い足」


牧人が顔を上げる。


「またか」


イトは首を横に振った。


「敵じゃない」

「でも、硬い」


ザガが門の方を見た。


「役所か」


その声が落ちた直後、灰色の道の向こうから人影が見えた。


水越篤臣。

副官。

澄玲。

それから、都市防衛局の連絡担当が二人。


多すぎはしない。

だが、軽くもない。


澄玲は本家に住んでいるわけではない。


けれど今日は、来る理由があった。


正式な記録を持って。


正式な肩書きで。


市属ダンジョン監察局。

特別保護監察官として。


---


水越たちは、受付小屋の前で止まった。


まめじいが帳面を開く。


「お名前とご用件を」


水越の副官が一瞬だけ固まった。


都市防衛局の警備統括官に向かって、普通に受付している。


しかし水越は普通に答えた。


「都市防衛局、警備統括官、水越篤臣」

「冥門組本家周辺に関する正式確認だ」


まめじいは頷き、普通に書いた。


「ご同行は」


副官が答えた。


「副官一名、連絡担当二名」

「市属ダンジョン監察局、久慈野監察官」


澄玲は小さく頭を下げた。


「本日は、正式窓口として同行しています」


牧人は澄玲を見た。


「正式窓口?」


澄玲は頷いた。


「はい、今日から、冥門組本家に関する都市側・監察局側の確認事項は、原則として私を通します」


牧人は困った顔をした。


「そんな大ごとにしなくても」


澄玲は即答した。


「大ごとです」


ヒナが梁の上で笑った。


「やだ、澄玲さんが即答!」


水越は、門前の板を見ていた。


武器はここに置け。

暗殺もだめ。

鍋に毒、だめ。

変なものは受付へ。


水越は少しだけ目を閉じた。


副官が小声で言った。


「実物で見ると、圧がありますね」


水越は低く返した。


「圧があるのは、板ではなく経緯だ」


ザガが言った。


「武器は置いていけ」


水越は腰の短剣を外した。


副官も外す。

連絡担当も外す。


澄玲はもともと武器を持っていなかった。


ニコが板を出した。


水越、武器置いた


水越の副官が、なぜか少し安心した顔をした。


ヒナが笑う。


「やだ、都市防衛局が板に認定された!」


水越は低く言った。


「その板は記録に残すな」


澄玲は手帳を開きかけて、閉じた。


「残しません」


ニコは少し考えて、板を裏返した。


水越、ちゃんとした


水越は言った。


「それも残すな」


ヒナは梁の上で崩れた。


---


その時、門前の外から妙に元気な声が近づいてきた。


「親分さーん!」


豪志だった。


両手に紙袋を抱えている。


息を切らし、目を輝かせている。


ナナが短く言った。


「うるさい」


「すいません!」


豪志は一度止まった。


三秒後に、また走った。


「でも、すごいもの買ってきました!」


ザガが眉を寄せる。


「何だ」


豪志は紙袋から、一冊の雑誌を取り出した。


大きな文字が表紙に踊っている。


きょうのおかず


牧人は首をかしげた。


「料理の雑誌か」


豪志は震える声で言った。


「表紙は料理雑誌です。でも、今週号は違います」


ヒナが梁の上から身を乗り出す。


「何が?」


豪志は雑誌を開いた。


「鷹宮隼人さんの記事が載ってます!」


水越の副官が、一瞬だけ目を伏せた。


澄玲が小さく息を吐いた。


牧人は思い出した。


「不倫記事のやつか」


豪志は大きく頷いた。


「はい!でも、すごいんです!」


ザガが嫌な顔をした。


「何がすごいんだ」


豪志は雑誌の見出しを読み上げた。


「人気俳優・鷹宮隼人、キャベツ畑で密会か」

「お相手は、共演女優ではなく“紫ナスの着ぐるみ女性”」

「所属事務所、野菜関係者との交際を否定」


場が止まった。


ヒナが梁の上で、ゆっくり聞いた。


「野菜関係者?」


ザガが低く言った。


「人間社会は、どこまで行くんだ」


ミズハが水桶の横で笑った。


「不倫記事なのに、食材欄みたいね」


ベロが鍋の前から顔を上げた。


「キャベツとナスを変な記事に使うな。食材に失礼だ」


牧人はそこに反応した。


「そこか」


豪志は興奮したまま続けた。


「しかも、記事の横におすすめレシピが載ってます!“疑惑のキャベツ炒め”と“密会ナス田楽”です!」


ヒナが吹き出した。


「やだ、不倫記事に献立がついてる!」


水越の副官が、一瞬、吹き出した。


水越が見た。


副官は真顔に戻した。


「失礼しました」


水越は低く言った。


「本題に戻れ」


ベロが言った。


「その前に、ナス田楽の作り方だけ見せろ」


牧人は言った。


「そこは見るのか」


豪志は、鷹宮のコメント欄を指差した。


「鷹宮さんの事務所コメントもあります」


ザガが嫌そうに聞いた。


「何て」


豪志は読み上げた。


「本人は、『俺の恋愛を献立にするな』と困惑している、とのことです」


ヒナが腹を抱えた。


「やだ、おかずにツッコミ!」


ベロが真顔で言った。


「献立にも失礼だ」


牧人は言った。


「そこもか」


ニコが板を出した。


鷹宮、またおかず


水越の副官が、とうとう小さく肩を震わせた。


水越が見た。


副官は真顔に戻した。


「失礼しました」


ミズハが水桶の横で笑った。


「人間社会って、忙しいのね」


イトが梁の上で短く言った。


「おかず、強い」


牧人は頭を抱えた。


「今日は何の話をする日なんだ」


澄玲が手帳を開いた。


「本来は、冥門組本家の今後の扱いについてです」


ヒナがまだ笑っている。


「やだ、扱いよりおかずが強い!」


水越は低く言った。


「始めるぞ」


その声で、空気が少しだけ戻った。


少しだけだった。


---


石卓は使わなかった。


受付小屋の横に、イシコが低い石の台を出した。


以前の会談用の石卓より小さい。


澄玲がそれを見た。


「今日は控えめですね」


イシコは短く答えた。


「前、威圧した」


ザガが言った。


「自覚あったのか」


イシコは頷いた。


「少し」


ヒナが笑った。


「やだ、反省してる!」


水越は石台の前に立った。


牧人も向かいに立つ。


澄玲は横に立ち、手帳ではなく正式書類を持っていた。


水越は言った。


「結論から言う」


牧人は頷いた。


「うん」


「冥門組本家は、危険だ」


門前が少し静かになる。


クロの右が目を細めた。


ザガも黙る。


ナナが戸の前に立ち直る。


水越は続けた。


「封環層に触れている」

「旧石門が反応している」

「人間、魔物、避難者、封環層由来の存在が一か所に集まっている」

「守谷牧人個人への依存も強い」

「都市防衛上、危険でないとは言えない」


牧人は黙って聞いていた。


水越は、少しだけ間を置いた。


「だが」


澄玲が書類を持ち直した。


水越は続ける。


「現状で排除すると、被害が大きすぎる」

「そして、排除する根拠も足りない」

「さらに、本家があることで、灰環大迷宮内の避難者被害は減っている」


牧人が顔を上げた。


「減ってるのか」


澄玲が答えた。


「はい」

「少なくとも、右奥へ入った保護対象の再被害率は低いです」

「灰粉処理、食事、寝床、通行整理があるため、迷宮内で倒れる人数も減っています」


ベロが鍋の前で言った。


「飯を出してるからな」


ミズハも言った。


「水もね」


ぷるが、ぷるんと揺れた。


ヒナが言った。


「ぷる先生もね!」


水越の副官が小声で言った。


「公式には、灰粉処理担当個体です」


ぷるん。


ぷるが少しだけ不満そうに揺れた。


豪志が雑誌を抱えたまま言った。


「ぷる先生の特集も、きょうのおかずに載せたらどうですか」


ベロが即座に言った。


「やめろ、鍋の信用が落ちる」


ヒナが笑った。


「やだ、おかずへの信用が厳しい!」


水越は額に指を当てた。


「話を戻す」


---


水越は報告書を開いた。


「報告書だけを読めば、ここは危険集団の拠点だ」


牧人は少し困った顔をした。


「拠点って」


水越は続けた。


「実物を見ると、飯の列がある」

「ぷるが灰を落としている」

「小型種が寝ている」

「ニコの板がある」

「鍋がある」

「受付小屋は、なぜか要塞だ」


イシコが短く言った。


「受付」


水越は訂正した。


「受付小屋だ」


ヒナが梁の上で笑った。


「やだ、水越さんが訂正した」


水越は疲れたように息を吐いた。


「危険ではある」

「だが、報告書と現物の差がひどすぎる」


副官が小声で言った。


「そのまま書きますか」


「書くな」


「では」


「現地実態との乖離が大きい」


副官は頷いた。


「それなら書けます」


牧人は少しだけ首をかしげた。


「そんなに違うか」


水越は牧人を見た。


「違う」


「そうか」


「君は、危険なことをしている」


「そうなのか」


「そうだ」


水越は少し間を置いた。


「だが、危険なことをしている自覚が薄い」

「それが一番厄介だ」


ザガが低く言った。


「それは俺らも思ってる」


牧人はザガを見た。


「そうなのか」


全員が頷いた。


牧人は黙った。


ヒナが笑った。


「やだ、全員一致!」


---


澄玲が正式書類を開いた。


「市属ダンジョン監察局としても、結論は同じです」


牧人は澄玲を見る。


澄玲は、いつもの手帳ではなく、公印のある書類を持っていた。


「冥門組本家は、監察対象です」

「危険評価は継続します」

「封環層および旧石門との接触についても記録を続けます」

「ただし、現時点で排除対象とはしません」


牧人は少し眉を寄せた。


「排除って言葉、怖いな」


澄玲は頷いた。


「怖い言葉です」

「だから、使い方を間違えてはいけません」


水越が続けた。


「都市防衛局の結論も同じだ」


副官が書類を読み上げる。


「冥門組本家について、現段階では討伐・封鎖・強制排除を行わない」

「監視、記録、交渉による管理へ移行する」

「都市防衛局からの直接接触は制限する」

「市属ダンジョン監察局の特別保護監察官を、正式窓口とする」


牧人は澄玲を見た。


「澄玲さんが?」


澄玲は頷いた。


「はい、私が窓口になります」


「大変じゃないか」


「大変です」


「やめてもいいんじゃないか」


澄玲は即答した。


「やめません」


ヒナが梁の上で笑った。


「澄玲さん強い!」


まめじいが帳面を抱えて近づいた。


「では、わたくしの帳面も、引き続き補助記録でございますな」


水越が言った。


「本家側現場台帳だ」


まめじいの目が少し輝いた。


「正式名称でございますな」


ニコが板を出した。


まめじい、公式


まめじいは胸を張った。


牧人は頭を抱えた。


「公式にしないでくれ」


水越は低く言った。


「その板も残すな」


澄玲は手帳を閉じた。


「残しません」


ニコは少し考えた。


板を裏返した。


まめじい、だいたい公式


牧人は言った。


「悪化した」


ヒナは梁の上で腹を抱えた。


---


豪志は、その間ずっと雑誌を抱えていた。


話が少し落ち着いたところで、そっと手を上げる。


「すいません」


ザガが見る。


「何だ」


豪志は雑誌の別の頁を開いた。


「あの、ここに、別の記事があるんですけど」


ザガが目を細める。


「今度は何だ」


豪志は、声を少しだけ落とした。


「都市、冥門組本家の処分を見送りか」


場が止まった。


豪志は雑誌を抱えたまま続けた。


「つまり、人間社会は、冥門組や親分さんを潰せなかったということですか」


水越が、豪志を見る。


澄玲も見る。


牧人も見る。


豪志は慌てて雑誌を胸に抱えた。


「あ、いや、その、言い方が悪かったですか」


ナナが短く言った。


「悪い」


豪志は小さくなった。


「すいません」


水越は、しばらく黙っていた。


それから言った。


「言い方は悪い」


豪志はさらに小さくなる。


水越は続けた。


「だが、結果だけを見れば、そうだ」


牧人が困った顔をした。


「潰すとか言うな」


水越は牧人を見た。


「人間社会は、君を潰すことに失敗した」

「正確に言えば、潰す方が被害が大きいと判断した」


牧人はさらに困った。


「俺、何もしてないんだけどな」


ヒナが笑った。


「やだ、何もしてない人が都市判断を変えた!」


豪志は少し元気を取り戻した。


「これ、記事になりますかね」


ザガが言った。


「するな」


豪志は雑誌を見せた。


「でも、きょうのおかずなら」


ベロが怒った。


「おかずを巻き込むな」


ミズハが笑う。


「もう巻き込まれてるわよ」


豪志は調子に乗りかけた。


「見出しはどうでしょう」

「人間社会、親分を潰せず」

「理由、鍋と受付とぷる先生」


ザガが言った。


「黙れ」


ナナも言った。


「黙る」


ニコが板を出した。


豪志、記事にしない


豪志は板を見た。


「すいません!」


水越の副官が、小さく吹いた。


水越が見た。


副官は真顔に戻る。


「失礼しました」


水越は疲れたように言った。


「報告書と現物の差が、ここにも出ている」


---


水越は、最後に牧人へ向き直った。


「守谷牧人」


「うん」


「君には、今後、いくつか守ってもらう」


「何を」


「右奥への無断立ち入りを許さないこと」

「保護対象を勝手に移動させないこと」

「封環層や旧石門に変化があれば、澄玲監察官へ共有すること」

「外部から来た者は、受付を通すこと」

「危険物は、受付で止めること」


牧人は最後の項目で少し顔をしかめた。


「変なものは受付へ、ってことか」


水越は一瞬だけ黙った。


「そういうことだ」


副官が小声で言った。


「正式には、危険物および用途不明物の事前申告です」


ニコがすぐ板を出した。


変なものは受付へ


副官は板を見た。


「……分かりやすいですね」


水越が低く言った。


「負けるな」


副官は咳払いした。


「失礼しました」


澄玲は牧人に言った。


「私からもお願いします」

「本家が大きくなるほど、言葉が外へ出ます」

「牧人さんの何気ない一言が、外では方針や宣言になります」


牧人は苦い顔をした。


「またそれか」


「またです」


「じゃあ、俺は何を言えばいいんだ」


ニコが板を出した。


飯、食べる?


牧人は板を見た。


「それは言える」


ベロが鍋の前で頷いた。


「言え」


ヒナが梁の上で笑った。


「やだ、親父の安全発言、飯だけ!」


水越は、それを見ていた。


そして、少しだけ納得した顔になった。


「なるほどな」


副官が聞いた。


「何がですか」


「潰せなかった理由だ」


副官は首をかしげる。


水越は言った。


「あれは、命令では動いていない」

「飯で動いている」


ベロが鍋の前から言った。


「飯は大事だ」


水越は頷いた。


「そこは同意する」


ヒナがまた笑った。


「やだ、都市防衛局が飯に同意した!」


---


結論は、石台の上に置かれた。


討伐ではなく、監視と交渉へ移行する。


澄玲が正式窓口となる。


都市防衛局は、直接干渉を制限する。


迷宮庁と攻略組には、危険情報として共有する。


本家側は、現場台帳と受付運用を継続する。


牧人は、最後の一文を見た。


「俺が何かすることは?」


澄玲は少し考えた。


「今まで通りで」


水越がすぐに言った。


「それが一番困る」


ザガも言った。


「困るな」


ミズハも笑った。


「でも、変に変わられるより困らないわ」


イトが梁の上で短く言った。


「親父、親父のまま」


クロの中央が、低く言った。


「それでいい」


牧人は困った顔をした。


「俺だけ分かってない気がする」


ヒナが笑った。


「やだ、いつもの親父!」


豪志が、そこでまた手を上げた。


「では、今日の結論をまとめます!」


ザガが止めるより早かった。


豪志は胸を張る。


「冥門組本家は危険!」

「でも潰すともっと危険!」

「だから澄玲さんが窓口!」

「変なものは受付へ!」

「鷹宮さんは今日のおかず!」


場が、止まった。


水越が目を閉じた。


澄玲が額を押さえた。


牧人が頭を抱えた。


ヒナが梁の上で大笑いした。


「やだ、最後だけ関係ない!」


---


水越は帰り際、もう一度本家を見た。


雨よけ。

鍋。

受付小屋。

板。

クロ。

牧人。


報告書では、危険構造と書かれる。


現物では、飯の匂いがする。


水越は低く言った。


「危険ではある」


副官が隣で頷く。


水越は続けた。


「だが、報告書と現物の差がひどすぎる」


副官は言った。


「そのまま書きますか」


水越は即答した。


「書くな」


副官は少し笑いそうになって、堪えた。


水越は歩き出した。


「現地実態との乖離が、また広がった」


「はい」


副官は書き留めた。


後ろで、豪志の声がした。


「親分さん! 俺のダンス見てください!」


ベロが怒鳴った。


「鍋の近くで踊るな!」


ヒナの笑い声が続く。


水越は振り返らなかった。


振り返らなくても、だいたい分かった。


飯の匂いと、板と、灰色の線。


変なものを受付へ回す、妙に強い生活圏。


報告書には、書けない。


水越は、それでよかった。


---


旧帳場の奥。


石板に、薄い文字が浮かんでいた。


仮記録。

討伐、保留。

監視、継続。

交渉、開始。

窓口、記録。

次へ。


誰も、その文字を読んではいなかった。


ただ、受付小屋の前で、ニコが新しい板を出していた。


変なものは受付へ

豪志、踊るな

飯、食べる?


牧人は、それを見て言った。


「最後だけでよくないか」


ベロが鍋の前で言った。


「最後は大事だ」


ヒナが梁の上で笑った。


「やだ、結局、飯!」


クロの中央が、短く言った。


「飯だな」


牧人は少しだけ笑った。


「飯にするか」


本家の門前に、ようやく少しだけ、いつもの声が戻った。


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