空から来たうるさいのが、だいたい全部持ってきた
「親分ー! 上! 上から変なの来る!」
朝の広場に、ザガの叫びが落ちた。
牧人が顔を上げる。
本家の上の崩れた天井穴。そのさらに向こう。灰環大迷宮の高い空洞を、小さな影がぐるぐる回っていた。
いや、小さくはない。
翼がでかい。
その真ん中に、人の形がある。
「……鳥?」
「鳥じゃねえ! 捕まってる!」
とベロ。
「また上から降ってきたぞ」
とザガ。
「イシコ姐さんの時は石が降ってきた。今度は鳥か」
とベロ。
「本家は空から降るのが好きだな」
「そういう問題じゃない。心臓に悪い」
と牧人。
よく見ると、影は縄つきだった。でかい翼のついた誰かが、網みたいなものに絡まって、半分落ちかけている。しかも、下の通路から三人の人間が縄を引っ張っていた。
「こっちだ! そのまま落とせ!」
「翼、傷つけるなよ! 値が下がる!」
上から声が降ってくる。
「うるっさいわね! 最初から傷ついてるわよこの扱いで!」
声が高い。よく通る。やたら元気だ。
次の瞬間、網が切れた。
「ちょっ——」
どさあっ、と本家の前の草地に落ちた。
土埃が上がる。翼がばさっと広がる。その中心で、誰かが咳き込んだ。
小柄だった。
体は人間の少女くらいの大きさしかない。でも背中の翼だけ、やけに大きい。灰青色の羽が地面いっぱいに広がって、身体が半分埋もれて見える。
髪は明るい茶色で、あちこち跳ねている。目は丸くて大きい。くるっとしていた。顔立ちはかなりかわいい。
ただし、口が止まらない。
「痛っ! 今のは痛い! 翼から落ちるのと足から落ちるのは全然違うんだからね!?」
第一声がそれだった。
ザガが小声で言う。
「……ハーピーか」
まめじいが帳場の窓から顔を出した。
「あの翼の色と大きさ……上位種ですな。ハーピークイーン」
「上位種がなんで網に引っかかってんだ」
とベロ。
「知らないわよ! 寝てるとこ捕まったのよ!」
聞こえていた。耳もいいらしい。
牧人はその場で頷いた。
「元気だな」
「そこ!?」
少女はぱっとこっちを見た。
「元気じゃないわよ! 縛られて落ちてきたのよ!? 見て分からない!?」
「分かる」
「じゃあほどいて!」
「やかましいな」
人間の売り屋が三人、通路から駆け込んできた。
牧人は一目で分かった。装備が違う。
汚れた革鎧ではあるが、下に仕込まれた鎖帷子は厚い。腰の短剣は実戦用。先頭の男は長剣を背負っている。足運びに隙がない。後ろの二人も、片方が弓、片方が術式杖。三人とも、動きが素人じゃなかった。
「B級か、いやA級レベルかな」
とザガが低く言った。
「A級崩れじゃないかな」
とベロ。
「まともなギルドにはいられねえ類の」
上位ハーピークイーンを正面から捕まえる腕は、こいつらにはない。
だが網は別だった。
翼の羽ばたきを殺す細工入りの対空網。縁には眠り薬の粉。しかも、崩れた高所の休み場を狙って落としてきた形跡がある。
まともに勝ったんじゃない。
飛ぶ個体を、飛べない状況にしてから売る――そういう慣れた汚さだった。
先頭の男が前に出た。目が据わっている。
「そいつは俺らの荷だ。返せ」
「荷じゃないでしょ!」
と少女。
「荷って言うな! 翼ある女の子を荷って言うな!」
牧人はもう少女のそばにしゃがんでいた。
翼に巻かれた縄を見る。細いが固い。しかも片翼の付け根に金具が食い込んで、羽が傷ついていた。
「痛い?」
「痛いに決まってるでしょ! あと、かわいい顔に泥ついた!」
「そこも気にするんだな」
「大事でしょ!」
先頭の男が一歩踏み込んだ。長剣の柄に手をかけている。
「聞こえなかったか? 返せと言った。空域で正規に捕った。こっちの商品だ」
「だめだな」
と牧人。
「何が」
「翼、傷ついてるだろ」
「は?」
「治してからじゃないと飛べない」
「飛ばして売る気はねえよ! 翼は見世物用に残すだけだ!」
牧人の手が止まった。
少しだけ、声が低くなった。
「飛べない翼にするために残すのか」
「商品価値の話だ。口を挟むな」
「だめだ」
牧人が立ち上がった。
「怪我してるやつを売るな」
「それはお前の都合だろ」
「そうだな。だから返さない」
先頭の男が長剣を抜いた。
刃が鳴る。使いての抜刀だ。速い。
後ろの弓使いが矢をつがえ、術式杖の男が詠唱に入った。三人の動きに淀みがない。この三人は、本気で戦い慣れている。
ザガが槍を構えた。
「やるか」
「やるさ。上位種一匹で俺たちは半年食える」
先頭の男の目が本気だった。A級崩れとはいえ、金がかかれば退かない。そういう種類の人間だ。
そこで、空気が変わった。
クロが立ったからだ。
門前で寝ていた三つ首が、のそりと起きる。
先頭の男の目が動いた。クロを見た。一瞬、剣を持つ手が止まる。だが、まだ抜いたままだ。
「……デカいな。だが、数はこっちが——」
クロの中央の頭が、低く唸った。
音ではなかった。空気そのものが震えた。
地面が揺れる。壁の苔がぱらぱらと落ちる。広場の空気が、一瞬で冬になった。
先頭の男の剣が、かたかたと鳴り始めた。
手が震えている。
A級の腕で、A級の度胸で、それでも止められない震えだった。
「災厄級……」
後ろの弓使いが呟いた。弓を構えたまま、指が動かない。術式杖の男は詠唱を止めていた。口が動かなくなっている。
イシコが一歩前に出た。
地面がまた揺れた。石の巨体が門の影から現れ、三人の退路をゆっくり塞ぐように立った。
前にクロ。後ろにイシコ。横にザガの槍。
先頭の男だけが、まだ剣を握っていた。握っているが、もう突き出せない。腕が言うことを聞いていない。
ザガが槍の穂先を、男の喉元に向けた。
「帰れ」
一言だった。
男の目が揺れた。長剣を見た。クロを見た。イシコを見た。もう一度、網に絡まったままの少女を見た。
値踏みの目だった。まだ計算している。A級崩れの生存本能と、商売人の未練が、喉元で戦っている。
クロが、もう一度唸った。
今度は短かった。ただ、さっきより近かった。
男の剣が落ちた。
手から滑ったのではない。指が開いた。
「……覚えてろ」
「覚えない」
とザガ。
「A級の腕で汚い商売してるやつの顔は、特に覚えない」
とベロ。
三人は退いた。イシコが半歩ずれて道を空けた。先頭の男は長剣を拾い、後ろの二人は走った。男だけが最後に一度振り返り、それからようやく背を向けた。
足音が遠ざかっていく。
広場に静けさが戻った。
少女はその間、ずっと目を丸くしていた。
そして、クロの六つの目と、正面から目が合った。
「えっ、でっか! 何あれ! ちょっと待って、かわいくない!?」
「かわいいって」
とザガ。
「親分と同じだ」
とベロ。
クロの右の頭だけが、少しだけ偉そうに鼻を鳴らした。
牧人は縄を切りながら言った。
「かわいいだろ」
「いや、見た目は怖い! でもなんか目は優しい! 何これ!」
「分かる」
と牧人。
「分かるの!? 分かるんだ!?」
---
翼を洗う。泥を落とす。折れた羽根を整える。
ミズハが水を持ってきた。ナナが薬草を運んだ。ぷるがぺたりと翼に張りついて、汚れだけ吸った。
「ぷるる」
「何これ! くすぐったい! でも汚れ取れてる! 何これ!」
牧人は翼の付け根を丁寧に見た。金具の跡。擦り傷。羽軸の折れ。
「致命傷じゃない。でも、しばらく長く飛ぶのは控えた方がいい」
「しばらくって、どのくらい」
「二、三日は安静にした方がいい」
「二、三日……」
少女は少しだけ声が小さくなった。
「……飛べなくなったらどうしよう、って、ずっと思ってた」
「飛べる。羽根は傷ついてるけど、根元は生きてる」
「……ほんとに?」
「ほんとに」
少女の目が一瞬だけ揺れた。
それから、ぱっと元に戻った。
「じゃあ信じる!」
切り替えが早い。
牧人は軟膏を塗りながら、少し驚いた。
「お前、泣かないんだな」
「泣いたら翼が重くなるの。知らない?」
「知らなかった」
「嘘だけど」
「嘘かよ」
「でも泣かないのは本当」
少女は笑った。少しだけ、無理に笑っている感じがした。でも、牧人は何も言わなかった。
代わりに、軟膏を丁寧に塗り続けた。
少女は最初こそ騒いでいたが、途中から妙に静かになった。
「……しみる?」
と牧人。
「ちょっと」
「ごめん」
「いや、平気。そういう"ごめん"は好き」
ザガとベロが目を合わせた。何か言いたそうだったが、何も言わなかった。
---
治療が終わった。
翼に薄い布を巻いて、固定する。少女はそれをじっと見ていた。
「……ちゃんと巻くんだ」
「ちゃんと巻く」
「ちゃんと手当してもらうの、久しぶり」
少しだけ、声が小さくなった。
牧人は手を拭いて立ち上がった。
「飯、食うか」
「……え?」
「粥しかないけど」
「食べる!」
返事が早かった。
食堂に入る。
苔角うさぎが足元を横切る。牙ネズミが隅で丸まっている。ぷるが食堂の床を磨いている。まめじいが帳場から粥の匂いを嗅いでいる。
少女はきょろきょろした。
「何ここ」
「本家」
「本家?」
「親分の家」
とザガ。
「あと、帰ってきていい場所」
とベロ。
「急にいいこと言うな」
「たまにはな」
少女は粥を受け取って、一口食べた。
止まった。
「……おいしい」
「粥だけどな」
「おいしい」
もう一口。もう一口。止まらなくなった。
牧人はそれを見て、少し安心した。食べられるなら大丈夫だ。テイマーの勘がそう言っている。
少女は粥を半分食べたところで、顔を上げた。
「ヒナ」
「ん?」
「名前。ヒナ」
「そうか。ヒナな」
「うん」
「俺は牧人」
「知ってる。親父でしょ」
牧人が止まった。
「……親父?」
「うん」
「俺、そんな歳じゃないんだけど」
「災厄級と一緒にいる親父って、噂になってるよ。それに歳じゃなくて、空気が親父だよ」
「噂?―空気?」
「うん。ご飯くれて、怪我見てくれて、怖い犬と一緒にいて、でも本人は全然怖くない。それは親父」
牧人はしばらく黙った。
「……理屈は分かるけど、納得はしてない」
「諦めろ親分。ここじゃ全員そう呼ぶ」
とザガ。
「そうだぞ」
とベロ。
「そうですな」
とまめじい。
「ぷるん」
とぷる。
牧人は粥をかき混ぜた。
「……多数決で親父にされた」
「最初からだよ」
とザガ。
ヒナは嬉しそうに笑った。
「じゃ、親父って呼ぶね」
「好きにしろ……」
「する!」
---
ヒナは捕まる前から噂を聞いていた。
「A級帰りの生還者。災厄級と生きて出た親父。変なシマの親分」
空域を飛んでいると、外輪の補給所や茶屋から声が上がってくる。空の子は耳がいい。地上の人間が思っている以上に、上から声は聞こえる。
「それで、噂の親父のところに来ようとしてたのか?」
と牧人。
「来ようとしてたわけじゃないけど、気になってはいた。そしたら捕まって、気づいたら落ちてきた」
「来る気なかったのに来てるじゃないか」
「運命ってやつ」
「雑だな」
「空の子は細かいこと気にしないの」
「さっき泥がついたって気にしてたろ」
「顔は別!」
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午後。
ヒナはすぐに馴染んだ。
苔角うさぎを抱いて「軽っ!」と騒ぎ、クロの右の頭だけ撫でようとして威嚇され、イシコに「屋根の上、使っていい?」と聞き、ナナに「羽、洗っても土場は踏まないで」と怒られ、ミズハを見て「きれいなお姉さんいる!」と目を輝かせた。
ミズハは少しだけ困った顔をした。悪い気はしていない顔だった。
まめじいが帳面に何か書いている。
「名前、ヒナ。種、上位ハーピークイーン。保護経緯、売り屋より救出。翼負傷あり、治療済み。仮所属、預かり」
「もう書いてるのか」
と牧人。
「記録は早い方がよろしいので」
「預かりって何?」
「保護対象です。まだ所属ではない」
「所属って、何に」
「本家に」
「本家って、定着してるんだ?」
「はい」
牧人はため息をついた。
ヒナだけが笑った。
---
夕方。
食堂で全員が粥を食べた。
ヒナは牧人のすぐ横に座った。距離が近い。牧人は気にしていない。周りだけが気にしていた。
「あの子、ずいぶん近いな。親分は気にしてないけど」
とベロが小声で言った。
「気にしてないんじゃなくて、気づいてねえんだよ」
とザガ。
「それが一番たちが悪い」
とナナ。
ミズハだけが何も言わず、粥を食べていた。
ヒナは食べ終わると、窓の方を見た。
「ねえ、親父」
「何だ」
「外、ちょっと見てきていい?」
「翼、大丈夫か?」
「近場なら平気。ちょっと飛ぶだけ」
牧人は少し考えた。
「無理するなよ」
「しない」
「嘘つくなよ」
「……ちょっとだけ無理する」
「正直だな」
「正直な方がかわいいでしょ」
牧人は何も返さなかった。ザガが天井を見た。
ヒナは窓から出た。翼を広げる。小柄な体がふわっと浮いた。痛そうに少しだけ顔をしかめたが、すぐに風を掴んだ。
地上ではちょこまか動く小さな女の子だった。
空では違った。
翼が一度はばたくだけで、音もなく高度が上がる。天井穴をくぐり、灰色の空洞へ抜けていく。風の掴み方が正確だった。無駄がない。上位種というのは、こういうことなのだ。
ベロが口を開けたまま見ていた。
「……速えな」
「上位ハーピークイーンだからな」
とザガ。
「地上ではあんなにうるさいのに」
「空が本来の居場所なんだろ。たぶん」
---
ヒナが戻ってきた。
ばさっと降りて、牧人の前へ着地する。少し息が弾んでいる。でも、目はきらきらしていた。
「親父」
「どうした」
「外輪がざわついてる」
ザガとベロが顔を上げた。
ヒナは息を整えながら言った。
「A級帰りの生還者って噂、かなり広がってる。補給所でも、外輪の茶屋でも、探索者が話してた」
「何て?」
「"A級の中に人間が住んでる" "災厄級がいる" "変なシマがある"。だいたいそんな感じ」
牧人は粥の鍋を洗いながら聞いていた。
「……噂か」
「噂だけど、見に来るやつが出てくると思う」
「見物か?」
「見物もいるだろうけど、それだけじゃないと思う。嗅ぎ回ってる感じの匂いもあった」
「匂い?」
「空から見ると分かるの。地上の人間が、どっちの方向を見てるか」
牧人はふうん、と頷いた。
「じゃあ、板増やすか」
「板!?」
とヒナ。
ニコがもう板を持っていた。
見物は静かに→
勝手に入るな→
うさぎ追うな→
「何これ! かわいい! でも看板!? 対策が看板!?」
「板でできた家ですからな」
とまめじい。
「板でできてないだろ」
と牧人。
ヒナは翼をぱたぱたさせて笑った。
---
夜。
牧人が部屋に戻った後。
食堂に残ったのは、ザガ、ベロ、ナナ、ミズハの四人だった。まめじいが帳場にいる。ぷるは隅で平たくなっている。
ザガが口を開いた。
「ヒナの話、どう思う」
ベロが答える。
「外輪がざわついてるのは前から分かってた。ただ、空から裏づけが取れたのは大きい」
ナナが言った。
ヒナは、捕まる前から外輪寄りを飛んでいた。
補給所の上。茶屋の屋根。崩れた見張り石の陰。
人間の声が上がる場所と、魔物が避ける流れを、空からずっと見ていた個体だ。
だから、「何か来る」の勘が早い。
今日一日で役に立ったというより、もともとその役をやっていたと考えた方が近かった。
「見に来る人間が増えるなら、門の警戒を一段上げた方がいい」
ミズハが静かに言った。
「嗅ぎ回ってるやつの正体が分からないと、対処が決まらない」
ザガが頷いた。
「ヒナに、もう少し外を見てもらう。翼が治り次第、定期で回させる。それでいいか」
「異存なし」
とナナ。
「あの子、使えるよ」
とベロ。
「かわいくて使える、って本人が言いそうだな」
「言うだろうな」
まめじいが帳面を開いた。
「記録は、結果だけ残します」
ザガが立ち上がった。
「親分が寝てる間に、段取りだけは済ませる。いつものことだ」
全員が頷いた。
ぷるが、ぷるん、と一回だけ震えた。起きていた。
---
その夜。
ヒナは食堂の隅で、壁にもたれて翼を畳んでいた。
寝床はナナが用意してくれた。藁と布。悪くない。本家の中は、外の空洞より暖かかった。
目を閉じる。
翼の付け根がまだ少し痛む。でも、飛べないほどじゃなかった。明日にはもう少し遠くまで飛べる。
……飛べなくなったらどうしよう、って。
ずっと思っていた。
売り屋に捕まったとき、最初に思ったのは「殺される」じゃなかった。「翼を切られる」だった。その方がずっと怖かった。
飛べない自分は、自分じゃない。
でも今日、あの人は「飛べる」と言った。
根元が生きてる、と。
あの手は、翼の仕組みを分かっている手だった。触り方が丁寧で、力の入れ方が正確で、痛いところを避ける角度を知っていた。
テイマーだったんだ、と後から聞いた。
なるほど、と思った。
あの人は、怖い親玉でも、強い支配者でもなかった。
ただ、怪我してるやつを放っておけない人だった。
それだけで、ここにいたいと思った。
ヒナは目を開けた。
食堂の天井に、小さな穴がある。そこから風が通る。外の空洞の匂い。鉄と苔と、少し湿った空気。
明日は、もう少しちゃんと外を見てこよう。
この家の周りで何が動いているのか。
誰が来ようとしているのか。
空から見れば、分かる。
ヒナは翼を少しだけ広げて、また畳んだ。
痛くなかった。
---
翌朝。
牧人が食堂に来ると、ヒナがもう起きていた。
窓の縁にちょこんと座って、外を見ている。翼を畳んだ姿勢は、大きな鳥が止まり木にいるみたいだった。
「早いな」
「空の子は朝が早いの」
「そういうもんか」
「そういうもの」
ヒナはくるっと振り向いた。
「朝ごはん、ある?」
「ある」
「魚も?」
「ある」
「最高」
それで、だいたい決まった。
ヒナはその日から、本家に預かられることになった。
まだ“所属”とまでは言わない。
でも、少なくとも追い返される側ではなくなった。
外は、少しずつ近づいてきている。
でも牧人は、今日も畑を起こすつもりでいた。




