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アイテムが欲しい、ただそれだけ  作者: 秋海棠


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38.なんとかなった


 森田さんとの相談を終え、帰ってきてからいくつかトロールの攻略動画を見た。

 その中には「マジックワンド」を使って戦っている動画もあったが、やはり中級ボス、そう簡単には倒れない。

 正面から放つ魔法や攻撃にはことごとく反応して、持っている棍棒を振り魔法なんかは霧散させていた。

 ただ、移動速度は速くないので、回り込まれての側面や後方からの攻撃は躱すことが難しいようだ。

 結論、トロールを正面から攻撃してはならないということに至った。


 私はわりとスピードタイプだから、トロールを翻弄することは可能だろう。

 後ろや側面から「マジックワンド」を使用して攻撃し、槍で後ろから心臓と首を狙う。

 イメージは完璧だ、イメージは。

 でもきっとそう簡単にはいかないんだろうなと思いながらも、「マジックワンド」を早く使いたくてソワソワしている。

 


 そして三日後、父と母が日本一周へ旅立った翌日、私は市川中級ダンジョンへやってきた。

 ちょっとソワソワからドキドキに変わってきている。

 動画だけ見ている分には勝てるイメージはあるのに、いざ本番を前にすると緊張をしてきた。

 着替えて入場手続きの列に並んでいると自分の鼓動がうるさく感じる。


 私の番になり、受付の女性に火属性の「マジックワンド」の貸し出しもお願いしますと伝えると、「準備いたします」と彼女は一旦その場を離れた。

 しばらくして「マジックワンド」を手にして戻ってきた彼女は、「こちらのボタンを押してください」というので、言われた通り押すと、【使用者を登録しました】といつも通りアナウンスされた。


「これで登録完了です。レンタルは一日5,000円、退場手続き時にお支払いいただきます。使用方法はご存知でしょうか?」


「初めてなので知らないです」


「かしこまりました。こちらのボタンを押した状態で『ファイアーボール』と叫んでいただければ魔法が放たれます。押すだけでは発動しません。また、ボタンを10秒長押ししてしまいますと使用者リセットされてしまい、仮に魔石の残弾数が残っていたとしてもリセットされ、魔石は戻ってまいりませんのでご注意ください。初級の火属性の魔石一つで十回発動可能ですが、魔石はお持ちですか?」


「リセット……魔石はないので二つ欲しいです」


「二つですね、かしこまりました。こちらも退場手続き時にお支払いとなります。よろしければこちらにサインをお願いいたします」


 淡々と説明をしてくれた女性からタブレットを向けられ、レンタルの同意書を確認してサインをした。

 「では、お気をつけて行ってらっしゃいませ」と言われ、杖を渡された。


 今度はダンジョン入場の列に並ぶ。

 手の中の「マジックワンド」見てちょっとにやけてしまった。

 魔石は先ほど一つセットしたからすぐ使える。

 これはあれだ、試し撃ちをしてからボスに挑むべきだな、うん、そうだ。

 決して使いたいだけではない、初めて使う武器の試し撃ちは必須だろう。


 一階層から五階層あたりでは人が多いでの、なんとなく試し撃ちを見られるのは恥ずかしい。

 なので、一旦杖はしまって、「フレグランス」をつけ、最短ルートで八階層を目指すことにした。

 一階層から三階層あたりのモンスターには出くわさなかった気がするが、これは「フレグランス」の効果なのだろうか?でも、四階層以降は普通に出くわした。

 このダンジョンは洞窟型だからマウンテンバイクが使えず、その分時間もかかってしまったが、なんとか八階層に到着。

 周りを確認するが、人もあまり見当たらない。

 

「よしっ!出番だ」


 ウキウキで「マジックワンド」をアイテムボックスから取り出す。

 左手に槍、右手に「マジックワンド」……あれ、両手塞がった……

 『ファイヤーボール』を放ってからしまって槍に持ち帰る?いや、普通に杖が邪魔だ。放り投げる?いや、二発目が放てない……これは盲点。

 入場する時は槍もアイテムボックスに入れてたから気づかなかった。


 私はとても不器用だ。利き手でないと照準なんか定まらないし、ましてや両刀など不可能。

 おまけに槍は両手で持つ仕様。

 みなさんどうしていたっけ……あ、何発か放った後、腰に刺してる?

 良い物理攻撃が入ったら、腰から抜いて放ってる?色々あるけど、今更だが戦いづらそうだ……

 危ない危ない、ちゃんと確認してからにしてよかった。

 

 まずは、この八階層のモンスター、オークに魔法を当てられるかを試す。

 体格は比べるまでもなくトロールの方が大きいのだが、速さとか動きがオークに近いと思って、この階で試すことを決めた。

 

 正面から棍棒を振りかざすオークを避け、後方に回り込む。

 その瞬間、腰に刺した杖をとり、ボタンを押して『ファイアーボール』と叫ぶと火の玉がオークの背中に向かって飛んで行った。

 火の玉が着弾するとボンッという大きな音が鳴り、煙の向こうでオークが膝をつくのが見えたので、また杖を腰に刺し、槍で心臓付近を後ろから刺し、戦闘終了。


 うん、いけなくもない。

 だけど、やはりモーションが多くて面倒だ。

 でも、これ以外に思いつかないんだよね。

 なんだかんだでオークは攻略できたし。

 後何体か試して、トロール戦に行ってみよう。



♢ ♢ ♢



【最下層ボス・トロールヲ撃破シマシタ】

【市川中級ダンジョン初回クリア報酬、金トコンパクトウォーターサーバーヲ獲得シマシタ】

【市川中級ダンジョン通常クリア報酬、ポーション(中)ヲ五本獲得シマシタ】


 トロール戦、なんとかなった。

 巨体なわりにオークよりも俊敏だったから、腰から「マジックワンド」を抜いた時慌てて一度落としてしまったのには焦ったけど、なんとか攻撃を回避して、杖を拾って『ファイアーボール』を放ち、槍で何度か攻撃をし、辛くも勝てたという次第だ。

 スピードでは確実に上回っていたから攻撃を受けることはなかったけれども、チクチク攻撃している様はあまりかっこいいものではないなと少し落ち込んだ。

 誰かに見せるわけでもない、勝てれば良いだけなのだからなんの問題もないのだけど、朔太郎さんのあのかっこいい攻撃を見た後では少し思うところはある。

 それに、このままでは下松中級ダンジョンは難しいだろう。


 まあ、戦い方を嘆いてもしょうがない。

 それよりも勝てたことを喜ぶことと、何よりもアイテムだ! 

 早速私の横に現れた宝箱を開け、中のものを確認。

 ポーション瓶五本に小さい宝箱、そして、280mlペットボトルサイズのボタンがいくつか付いた白い直方体。

 

【間モ無ク出口へ転送シマス】

【宝箱ノ中身ヲ全テ取リ出シテクダサイ】

【ナオ、宝箱ノ中ニアル小箱ハソノママ持チ出セマス】


 ポーションと宝箱をしまい、白い直方体に見入っていたらアナウンスが流れてしまった。

 お楽しみはまた後でということだろう。


 出口に転送され、退場手続きへ向かう。


「退場手続きをお願いします」


 そう言い、PNカードを渡すと、


「佐藤様ですね。「マジックワンド」のリセットと返却をお願いいたします」


 言われた通り、ボタンを長押しすると【登録を解除しました】とアナウンスが流れる。

 これは初めてだ。登録解除時はこうなるのね。

 そのまま「マジックワンド」を返却し、レンタル料金と魔石の料金も支払う。

 結局魔石は二つ購入したが、一つ分しか使っていない。

 残りは今回のアイテムで必要なのでそのまま支払った。

 ついでに金の買取依頼と攻略証明の宝箱も提出し報奨金の手続きをし、「コンパクトウォーターサーバー」に必要な魔石も購入。

 中級ダンジョンから金が出始めたことにより、金の相場は一時期よりもだいぶ安定しているが、良い収入になった。

 報奨金も後日入るしウハウハだ。



 スキップしたい気持ちを抑えて実家に戻ってきた。

 誰もいないが、「ただいまー」とウキウキで入る。

 まずは体をキレイにして、ご飯を食べてからにしよう。

 お風呂に入り、帰り際買った高級肉をいい焼き加減のステーキに、最後はちょっとお高いケーキ1ピース。

 初中級ダンジョン攻略ということで奮発だ。

 ウマウマと満足した後、リビングでさあ今日の成果を確かめるぞとアイテムボックスから件のアイテムを出し、「鑑定鏡」で鑑定。


【コンパクトウォーターサーバー】

【給水機・サイズ調整可・温度調整可】

【必要魔石:火・水・風・光・闇 各(小)1点】


 シンプルな解説だ。

 ネット情報では、よく見る置き型のウォーターサーバーのサイズから、今の小ささまで思った通りのサイズに変更できるとか。

 これはサイズ固定ではなくいつでも変更可能なんだそうだ。

 大きくする必要ある?とも思ったが、小さいままだと注ぎ口も小さい。大きい鍋とかに注ぐには注ぎにくいからとかもあるのかも。

 それに置く場所も各家によって変わってくるだろうし、《挑戦者》ならば小さいに限るだろうし。

 各々の使い方ができるという点ではとてもありがたい。

 しかも魔石がなくなるまで水は出続ける。水の魔石小を一つ予備で持っていればなんとかなりそうだ。

 一番初めに無くなるのが水の魔石だと書いてあったから。

 今まで、アイテムに必要な魔石しか購入していなかったが、予備を購入しておくのはいいかもしれない。

 持っているアイテムで魔石の燃料切れは今のところ起きていないが、起きたときにわざわざ買いに行くのも面倒だし。

 今度ダンジョンに行ったらせめて二つずつは購入しておこう。

 まとめておけばアイテムボックスの枠も使用するのは一つで済むだろうし。


 そんなことを色々考えながらも魔石をセットしていく。

 左横についたボタンが起動ボタンらしく、使用者登録をする。

 これを二回タップすることで好きなサイズに調整可能なんだとか。

 これ、鑑定の説明には載ってなかったからIDCが調べてくれたんだろうなと思うと、やはり頭が下がる。

 私は情報を見たまま使用ができるのだから。本当にありがとうございます。


 そして、アイテム「ゴミ箱」と同じくらいの大きさにして机の上に置く。

 正面に△▽のボタンがあり、その上に数字が表記されている。

 これは出てくる水の温度だそうだ。今は10℃に設定されている。

 それを変えることなく上下ボタンの下にある⚪︎ボタンを押してコップに注いで飲んでみた。


「普通に美味しい!」


 ミネラルウォーターみたいに飲みやすく温度もちょうどいい。

 お茶とか飲むなら温度をあげればいい。5℃から100℃で調整できる。

 そして、サイズを変えてみて手のひらサイズに戻してまた水を出して飲んでみた。

 変わらず美味しい。

 これは重宝する。このアイテムを売りに出す人が少ない気持ちがすごくわかる。

 どこでも美味しい水が飲めるんだから手放せなくなるね。

 まあ、魔石にお金がかかるからなんとも言えないけど、使いすぎなければすぐに無くなるってこともない。

 今どのくらいで魔石がなくなるのかIDCが検証していると情報にあった。

 飲食店とかでなく家庭で使う分には結構持つのではないだろうか?


 しかし、これを体験してしまうと「トゥクトゥク車」の期待値が上がりまくる。

 重量的にも私のアイテムボックスには入りそうだから持ち運びもできるはず。

 ああ、楽しみだな。

 でもその前にどうやって攻略するかちゃんと考えなきゃ。



お読みくださりありがとうございます。

今後更新ペースが少し遅くなりそうですが、引き続きよろしくお願いします!

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