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アイテムが欲しい、ただそれだけ  作者: 秋海棠


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36.参考になった?

 

 観光で気持ちのリフレッシュをして、下松中級ダンジョンで挑戦を再開し、ちょうどレベル47になったところで七月中旬になり、実家に戻ってきた。

 七月後半に父と母は旅行へ。

 その間家の守りは私がする。

 実家に犬や猫などのペットがいるわけではないから、私がいる必要はないんだけど、10日間も留守にするとなると何となく心配でね。


 実家に戻ってきて早速、注文しておいた香水をアイテム「フレグランス」に一滴垂らす。

 うっすらアイテムが光り使えるようになったのか、バルブを押してシュッとしてみた。

 甘すぎずスッキリした香りだ。

 これで初級のモンスター除けになるんだとちょっと不思議。

 ふりかけすぎなければ、ふわっと香るくらいなので通常使いにも良いな。


「あら、良い香りね」


「でしょ? これもアイテムなの」


「そうなの、どんな効果があるの?」


「初級モンスター除けの効果」


「それはいいわ! 襲われないってことでしょう?」


「まあ、そうなんだけど、戦わないとレベル上がらないし……初級のモンスターにしか効かないよこれは」


「そう……私は無理に戦わなくてもいいと思うけど……」


 父も母も、モンスターと私たちが戦うのはあまり賛成していない。

 確かに娘や息子に危ないことはしてほしくないというのが親の思いなのかもしれないけど、一応人類滅亡の危機に瀕しているわけである。

 ただ、あと何百年後の話だからか、私を含めてだがどこか他人事という感じが否めない。

 ぶっちゃけ現人類の何%が危機感を感じているかといえば少ないような気はするが、真面目に取り組んでる人たちだっているんだ。

 IDCの人達がいい例だろう。

 人類の未来のために少しでも多くの情報をと言っていた。

 そんな崇高な気持ちはないけれども、そんな人達を前にすると自分でもできることをしようとは思える。


「まあ、私の場合は私利私欲のため、無理して戦ってるわけじゃないから。でも、他の《挑戦者》はどうかわからないよね。ちゃんと人類のことを考えて戦っているのかもしれないし、私と同じように報酬やアイテム狙いかもしれないけど、頑張ってる人は応援したいよね」


「そうね、私にできないことをしているんだものね。応援しなきゃね」


「ごめん、なんか偉そうなこと言って」


 「いいの、私もちゃんと考えなきゃいけないことだから」と気を悪くしたような様子はない。


 そんな偉そうなこと言った私だって、他の《挑戦者》のことなんて何も知らない。

 日本にもう一人上級ダンジョンを攻略した人がいて、その人はダンジョン挑戦の配信者であることくらい。

 しかし、その人の名前すら知らない。

 母のことを言えた義理ではないな。


「思えば、私も他の《挑戦者》のこと全然知らなかったわ」


 今、世にはたくさんのダンジョン挑戦動画がある。

 だが、”無姫”の件があったから、意識的に《挑戦者》の動画から離れていた。

 でも、今は見るべきかもしれないとさえ思えてきている。

 他の人の攻略方法は情報だけでもとても役立つ。

 それが動画となればなおわかりやすいだろう。


 でも、どうして戦いながら配信ができるのか不思議だった。

 『神の声』の配慮でダンジョン内でも電波は入る。

 しかし、スマホや動画用カメラを体につけて戦っていたら、モンスターの攻撃や自分の動き・攻撃で壊れる可能性が高い。

 初級ダンジョンなら攻撃を受けずに配信可能かもしれないけど、中級や上級にいたっては無理だろう。

 だが、そんなお悩みを解決したのもアイテムだ。

 その名もアイテム「追跡ドローン」。

 使用者登録をして起動をすると、自動追尾で使用者を追ってくれる。

 もちろん手動での操作も可能。

 カメラやスマホを取り付けることも可能な上、極め付けにモンスターからの攻撃を一切受けない仕様なんだとか。


 モンスターの攻撃を一切受けないとかそんなこともできるのか?とかなり驚いた。

 そして、このアイテムを獲得できる初級ダンジョンは、各県に一つは存在するそうだ。

 だからダンジョン挑戦を生配信する人が多いんだとか。

 でもそのおかげで、他の《挑戦者》がライフを削ることなく挑戦できたり、IDCも情報を元にマップに反映するそうだ。

 ただ、中にはタチの悪い配信者もいるらしいから、IDCはそれを所属の《挑戦者》に依頼して検証、確認を行っているんだと前に森田さんが言っていた。

 その依頼は今のところ私にはきていないが、他のIDC所属《挑戦者》がしてくれているんだろう。

 私も動画は見ていないが、情報のおかげで前準備をできたり恩恵に預かっている身だ。

 自分にももしそんな依頼が来たら協力しようと思えてきた。

 初めは依頼とか面倒臭いなと思っていたのにな……

 

 自分が写っている動画はともかく、他の人の動画はチェックするべきではないだろうか。

 それこそ欲しいと思っている「トゥクトゥク車」が獲得できる下松中級ダンジョン、「コンパクトウォーターサーバー」の市川中級ダンジョンのボス戦を。

 

 早速実家のリビングで視聴を開始。

 まずは父と母が留守の間に通おうと思っている市川中級ダンジョンのボス、トロール戦。

 このボス戦を配信している人はポンちゃんという女性の《挑戦者》。

 クラスは斥候で、隠密行動や偵察が得意な職業なんだとか。

 どうやって戦うのかと見ていると、この人はアイテムボックスを持っているみたいで、そこから何やら液体を取り出していた。

 余裕があり、解説しながら戦ってくれているのだが、再生能力のあるトロールには炎の魔術や酸をかけて再生を防ぐのが効果的とか。

 ほうほう。

 だが、素人は簡単に酸のような劇物は取り扱えないから、ちゃんとIDCに報告と相談して購入するようにしてねと可愛く注意喚起していたのが印象的だ。


 印象は可愛いのだが、戦いかたはなかなかのエグさだった。

 アイテムボックスから出した無数の小瓶を、その素早さでいろんな角度から投げつけ、全身爛れた状態に。

 弱って膝をついたところを短剣で胸をぐさり。

 そして、もしものために喉もぐさり。

 そうするとパァーンとトロールは消え、攻略完了。

 一方的な戦いだった。

 そもそもこのトロール戦も初めてではないと初めに言っていた。

 この戦いかたを見つけたのも、他の人が炎で再生を止めているのを見て思いついたんだとか。

 次に戦う人の役に立つために動画アップしまーすって言ってからのウィンクは、自分を可愛いと認識している人しかできない所業だなと思ったけど、その戦いかたはとても参考になった。



 次に見たのは下松中級ダンジョンのボス、ビッグシャーク戦。

 このボス戦を配信していたのは、あの岡山上級ダンジョンを攻略した朔太郎という《挑戦者》。

 しかもこの動画が配信されたのは、八ヶ月以上も前。 

 まだダンジョンができて一年も経っていない頃に中級ダンジョン攻略を普通に行っていた、凄まじい人だ。

 朔太郎さんもアイテムボックスを持っていて、落下しながら一キロ以上はありそうな大きな木を繋げた板を下に投げてそこに着地。

 きっと既に他の中級ダンジョンの初攻略をしていたんだろうなと、木の板の大きさでアイテムボックスの容量を推測。


 ボスが中央に現れ、すごい勢いで背鰭が向かってくる。

 と、目の前で急に消えていなくなった。

 すると、朔太郎さんは刀を使うようで、腰に下げた刀に手を掛け、中腰の構えをする。

 なんかそれがすごく様になっていてかっこいい、侍みたいだ。ただ、服装はサバゲー装備というチグハグな感じだけど。

 

 下から大きな魚影が見えたと思ったら、ザバァーンという音ともにサメの大きな口が迫ってきた。

 が、次の瞬間にはパァーンっとサメが消え、攻略完了の合図。


「え、意味がわからないくらい速いんだけど?」

 

 思わず声が出てしまった。

 スローにしてみてみたけど、それでも速い。

 なんかよくわからないけど、サメの口が迫ってきたらそのまま真横に刀を抜いて終わり。

 どうやらサメは真っ二つになって消えた模様。

 凄すぎてなんの参考にもならなかった。

 これが八ヶ月以上前の実力……恐ろしや上級ダンジョン攻略者。

 きっと他の上級ダンジョン攻略者も、このくらい意味がわからない強さなんだと思い知らされる。

 同じ上級ダンジョン攻略者に名前を連ねるなんて烏滸がましいわ。



 今日の動画視聴はここでやめておいた。

 結局恥ずかしくて凹む結果となったけど、市川中級ダンジョン攻略配信はとても参考になったので、取り入れようと思う。



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