29.レベルアップはまだまだ先だった
夕飯のお弁当を食べ終え、二人ともお風呂で体をほぐした後。
「さて、明日の話をしようか。落ち着いた?」
「ごめん、大丈夫」
どうやらお腹も膨れ、お風呂でリフレッシュできたからか、弟の様子も落ち込みから浮上してきたように見える。
「今日はなかなか苦戦したね、明日は急いでこの階層を抜けて、七階層へ行こう」
「そうしよう……七階層だと小型の悪魔みたいなモンスターだったっけ」
「そう書いてあるね、尻尾の鉤部分に毒があって麻痺?するみたいだから気をつけよう。解毒ポーションは何個ある?」
「五個買ってある」
私は三個。解毒ポーションはすぐ取り出せる場所に用意し、もし苦戦するようなモンスターだったら戦闘が終わったら一度脱出しようという話になった。
私は問題なくて、弟は苦戦するという場合は弟だけ脱出することに。
無理はしない、弟は残りライフ2らしいし。
弟はダメだったら、また中級ダンジョンの一階層から五階層あたりでレベル上げを頑張ると前向きな話もしていたから、もう大丈夫だろう。
明日の戦闘を見てみてだ。
♢ ♢ ♢
結果的に言えば、弟も私も七階層は問題なく進めた。
七階層に行くまでの六階層のモンスターにはやはり手こずったかが、お互い二、三体ぐらいの遭遇で七階層へつけたので、そのまま進むことに。
七階層の悪魔的な小型モンスターは、飛んで移動し鉤尻尾で攻撃、麻痺したところを鋭い爪で攻撃というものだったが、あっさり躱せて、薙ぎ払いや一閃突きで難なく倒せた。
弟もスピードには対応できるので攻撃を受けることなく倒せていた。
一体700の経験値は結構美味しいという話になり、しばらくこの階層で経験値稼ぎをすることにした。
二十体ほど倒したところで弟はレベルが上がったと喜んでいた。レベル29だそうだ。
私も見てみたが、レベルが上がるまでには程遠い。
次のレベルまでは経験値210万くらい必要なのに、今溜まっているのは7万程度。十階層のモンスターでも少なくとも2,000体は倒さなければならないってことだ。
え、無理じゃ無い?
記憶がない時の私は、どんだけダンジョンで倒し続けたんだろう。
気が遠くなる数字を改めてみてしまうと気持ちが萎える。
セーフティエリアで休憩をしながら、次の階層の情報を検索する。
八階層は豚の頭をした人型のモンスター、皆よく知るオークだ。
このモンスターは腕力が強く、斧を持って攻撃してくる。ただ、その振りは大振りであると書いてある。
「レベル上がって良かったね、次はオークだって」
「全然良かったって思ってない言い方じゃん。まあ、姉ちゃんのレベル上がるまではまだまだか。俺は今日17時で切り上げるけど、姉ちゃんは残ったら?」
「っ!? そうか、あんたと一緒に出なくてもいいのか。何故か私も一緒に出る気でいたけど、オークションの日まではまだあるし、もうちょっと頑張ればいいのか……」
「そうだよ、十階層のモンスターは蛇らしいから毒には気をつけたほうがいいけどね」
「毒か……解毒ポーションがなくなりそうだったら撤退しようかな」
そんな話をして、セーフティエリアを出た。
八階層へ進み、オークとも戦闘したが問題なく倒せる。
この階層でも二十体近く倒して次の階層へ。
九階層は魔法を放ってくるゴブリンだった。意外に何発も連続で魔法を放ってくるので避けるのに必死になった。
だが、魔力?が無くなるのも早くて、魔法攻撃さえかわせれば難なく倒せる。
少し休憩を挟みながら、モンスターを倒していくこと五時間。
十階層の蛇型モンスターは毒があるってことだったから、弟が切り上げる17時までは九階層で経験値稼ぎをした。
自分自身よく体力が持つなと思うが、レベルが上がっているおかげなのかもしれないし、体が慣れているんだろうなと自分のことながら不思議になった。
「じゃ、次はオークションの時に」
「うん、気をつけて」
そう言って弟は中級ダンジョンから脱出していった。
私も今日は九階層のセーフティエリアで休むことに決めた。
既に【レンタル屋】も出ていて、今回はちゃんと申請確認をした。
しっかり申請を出してくれている《挑戦者》であることが確認できて一安心。
【レンタル屋】の申請確認をしたことはIDCへも報告がいくので、近くにいるIDC所属の《挑戦者》へも通知がいき、確認済みであることは周知されるようになっていた。
通知をちゃんと見ていなかった私は後でそれを知って、同じ人に聞かなくて良かったと安堵した。
「テント」へ戻り、「シューズ」を脱ぎ、「可動掃除機」の運転を確認しながら「タワーファン」をつける。
まだまだ我が家にあるアイテムは少ない。
このダンジョンの通常クリア報酬の「コンパクトウォーターサーバー」も欲しい。
試しに、このダンジョンのボスモンスター情報を調べてみた。
トロールという大型の魔物。パワー型であることはもちろん、再生能力もあるらしい。
再生が追いつく前に、早めに高攻撃で倒すことを推奨している。
チクチク攻撃して倒す私の戦闘方法とはあまり合わないかもしれないが、薙ぎ払うや五月雨で攻撃して最終的に隙をつき一閃突きで倒せないだろうか?
まあ、考えるだけならなんだってできるか。
実際はそんなに甘くないだろうし、やはりもう少しレベル上げを頑張ったほうがいいなという結論に達した。
翌日、十階層への挑戦を開始。
十階層のモンスターは蛇型モンスター。
大きさは七、八メートルはあろうかという巨体だ。
地を這う速さはとても素早く、足を取られて巻きつかれてしまった時は焦った。
でも、これまた運が良かったのか、噛みついてこようとしたところを上から突き刺せて倒せたのだ。
一応噛み付く瞬間はスローモーションに見えていたので、運ではなくちゃんと狙って突き刺しているんだと思うが、まだその動作と心が追いついていなかったので、運と言った。
巻きつかれた足は、少し締め付けでヒリヒリするが動けないというほどでもない。
なので、次の蛇型モンスターを探していく。
だんだんと速さに慣れていくもので、次からは巻きつかれることもなく、薙ぎ払い切り倒してく。
小さくなく、巨体だったから狙いやすいという点も良かったのかもしれない。
十階層ではモンスターとの遭遇率が高いように感じ、二時間ほどで大体二十体以上は倒した。
遭遇率が高いなら嬉しい、休憩を挟みながらもどんどん倒していく。
セーフティエリアでないところで休憩しているときに初めて見たが、他の《挑戦者》が蛇に巻き付かれて、噛みつかれ身動きが取れなくなり消えてしまった。
これがいわゆる負けてダンジョン放出ということかと思った。
外から蛇型モンスターとの戦闘を見ていると、消えていく《挑戦者》を何人か見たので、私が狙い易く倒しやすいと思っているのは、それなりにレベルがなせる技なんだと改めて思い知った。
記憶がない時の私は本当にすごいなと感心するばかりだ。
そんなことを思いながらも休憩を挟みつつ、戦闘になり倒していくこと八時間。
今日1日で100体以上を倒した。
戦いすぎて、すごく疲れた。
明日はお休みにしてもいいかもしれない。いや休みにしよう、三日間も戦い続けているのだから。
明日は休みと決め、今日の頑張りを数字で見ることにした。
【名前】 佐藤 月姫
【クラス】 槍術士 Lv.43
【HP】 1,725/3,130
【MP】 560/1,252
【武器】 白金の槍
【スキル】 一閃突き・薙ぎ払う・五月雨
【エクストラスキル】 アイテムボックス(上)
【EXP】 331,041/ 2,116,999
【残存EXP】 7,411,377
【残存ライフ】 3
うん、頑張った。
レベルアップまではまだまだだけど、目に見えて成果があるのは嬉しい。アイテムも手に入ればなお良いが。
明日はゆっくり休もう。
お読みくださりありがとうございます。




