起動!
船を乗り換えるとなると、どうしても解決しておかなければならない大問題があることに俺たちは気付いた。
じじいの家からかっぱらった物ならまだしも、これを一般客船で運ぶのは目立ち過ぎる——
「さてと……じゃあやってくれ」
「ふぉあちょお~、あたっ! あたっ! あたっ!」
リーが大げさな構えで生体兵器ことヌーロンが入ったガラスケースに、人差し指で穴を開けていく。
空いた穴からケースの液体がみるみると抜けていき、裸の美女が底に両膝を突き、項垂れる。
「……なあ、これ死んでんじゃないの?」
「いや、故障してると言うべきだろう」
「それどっちでいいネ」
膝を突き両腕をだらりと下げたまま動かないヌーロン。それをケース越しに見下ろし、頭の悪そうなことを言い合うルマンとウィンに対してアンズがツッコむ。だがしかし――
「いや、待て。どっちでもよくねえかもだぞ。もし機械なら何かしらのボタンがあるはずだろ。おい、イカサマ! ちょっと細い棒持ってこい」
イカサマの持ってきた棒を俺は、穴の中から突っ込んで裸の美女の色んな所を突っついてみる。
感触的には、人間と変わらないのだが……。
「……おい、社長……なんでさっきから胸ばっかつついてんだよ?」
俺の慎重な行動に、ルマンがいちゃもん付けてくる
「馬鹿てめえ! どう考えてもまずはこのボタン試すだろうが!」
なぜか、その場の全員が白い目を向けてくる。
その後も色んな箇所を押してみるがピクリともしないから、俺はケースを割って中身を外に出すことにした。
「……大丈夫なのかよ。いきなり殴りかかってきたりしないよな?」
「そのときは、私が破壊しましょう」
ヌーロンを両腋から持ち上げようとする俺とウィンを見て心配するルマンに、ディーが剣呑なことを口にする。
ケースから出して、地面に寝かせると、男どもが謎の歓声を上げる。
「す、すげえ。極上じゃないっすか」
「み、見ろよ、あの肌……俺なんかやべえ趣味に目覚めそう」
「ちょ、社長、顔の髪の毛どけてくださいよ」
確かにいい女だ。
作り物だからだろうか。
俺が顔に貼り付いている髪の毛を払ってやると、また馬鹿どもが騒ぎ出した。
「すごく美人よ、このヌーロン。でもこれ作り物違う。この人もともとこういう見た目ネ」
「なんでそんなことわかんだよ?」
「ほくろ。ここと、ここにほくろあるよ。生体兵器造るのにわざわざここまでするか?」
なるほど。
このヌーロンには、ほくろとか毛穴とか機械なら必要ないものがちゃんとある。
「なるほどな……戦うだけなら下の毛はいらねえもんな」
腕を組み嘆息する俺を見て、アンズが微妙な表情をする。
「とにかく、このままじゃこれが壊れているのかどうかすらわからない。ここはひとまずおいっ! お前何を……」
ウィンが何か言おうとするが、その前に俺はヌーロンの目を指で開いてみたり、頬を叩いてみたり、あれをあれしたり、とにかく色々試してみる。
「さ、最低だ……この人」
「俺たちこの人に付いていって大丈夫なのか?」
馬鹿どものそんな声を無視して、実験を続けてると、
「あ、バイス社長。もしかしたら、肺胞に液体溜まっているだけの可能性がありますね」
ディーが手を上げて衛生兵みたいなことを言うから、俺はニーム式の心肺蘇生術を試してみようとするが……やり方を忘れた。
ということで、代わりにディーがドアをノックするみたいにヌーロンの左胸辺りを小刻みに叩くと、
「がはっ! ごぼっ……げほっげほっげほっ」
ヌーロンが口から大量の液体を吐き出した。




