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我ら救世傭兵団!  作者: zionPoP
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【幕間】パームカンパニー団長の慌ただしい一日

※ 幕間は文字数多めになっております。

 ――リネン国首都リンネル LSS(リネン保安局)本部の取調室


「――賊は御社ビルを破壊。このとき警備にあたっていた軍人数名が射殺されています。そして、御社所有の輸送船パームビーチを盗み出してから港湾局職員二名を拉致し海外へと逃亡……さらには、追跡に向かった我が国海軍の巡洋艦乗組員三十六名を殺害。――この未曾有の惨事の首謀者はパームカンパニーに怨恨のある組織ということで我々も捜査を進めているわけですが……ヒル団長、率直にお聞きしますが、この件の首謀者に心当たりは?」


「こっちも社員と支部長を含め何人もやられてるんです。もし、わかっているのであれば我々自ら制裁を科していますよ、ランス局長」


「これは、物騒なことをおっしゃる……まあ、あなたとは長い付き合いだ。我々はこれまで幾度となく御社には便宜を図ってきたつもりですが、今回の件は軍人が三十六名も殺害されてしまった。上もかなり動揺しておりましてね。今回ばかりは手ぶらというわけにはいかんのですよ」


「便宜を図ってきたのはお互いさまでしょう。恩の売り合いならこっちに分があるのでは?」


「なるほど……では、まずはこちらから誠意を示すべきですかな……まずは、これを――」


「この四人は?」


「二名の男は先月ミロクを破壊し我が国に逃亡してきたニーム人です。子供の方は街に住み着いていたニーム人……どうやらこの娘は御社への抗議デモの中心人物の一人のようですな」


「ニームからの国際指名手配は?」


「今のところありませんが、国境壁を破ってまで逃亡した人間をニームが放っておくはずがありません。おそらくニーム側はこの件を内々で処理したい理由があるんでしょうな」


「リネン国は彼らを国際指名手配しないのですか?」


「いくら中立国といえど、自国の防衛戦力の脆弱さを晒すのには、上も慎重です」


「なるほど、今のところ奴らは野放しということですか……残念ですが、私は彼らを見るのは初めてです」


「この二人を事件前に街で見かけたという目撃証言が多数ありましてね……御社への抗議デモに関わっていた確証も得ております。ただ、この子供たちとの接点がわからない。奴らが現れてから、事件が起こるまで二週間もかかっていない。デモや強奪の規模からいって、二週間という準備期間は短か過ぎる」


「子供たちの他にも協力者がいた、ということですか」


「そう考えるのが妥当でしょうな。この二人がニームから逃亡を図る前に、あの街で既に内部工作を担っていた者がいた。そして、二人の到着と同時に作戦を実行に移したと考えれば辻褄が合う」


「ニーム軍の工作という可能性は?」


「国境壁が破壊されたという事実がある以上、その可能性は低いですな」


「いずれにしても行動が派手過ぎますね。この写真、いただいても?」


「どうぞ、どうぞ。ただし、まだ公にはしないでいただきたい」


「わかりました。では、こっちからは、倉庫から盗まれた武器のリスト……それと、これを」


「これは? 紐、いやワイヤーですか」


「倉庫を警備していた者たちが拘束されていたワイヤーです。これはニーム軍が使用しているものと同じなんですよ」


「なるほど。これで奴らがニーム軍関係者である可能性がぐっと上がりましたな」


「加えてもう一つ、これはニーム軍が使用しているナイフ、それと、破壊されたミロクの欠片です。街の質屋に売りに来たのはニームの服を着た二人組の男だったそうです」


「……あなたも人が悪い。奴らが国境壁を破ったニーム軍人、もしくは軍関係者であることはほぼ確定。最初からご存知だったとは」


「奴らは関係者でなく間違いなくニーム軍人です。それもかなりの訓練を受けた者と見て間違いない」


「どうやら、まだ何か持っておいでのようだ」


「ここにはありませんがね。弊社のイラに撃ち込まれていた二発の銃痕がその証拠になりますが、よかったら見に行きますか? ご説明差し上げましょう」


「……なるほど………まあ、今日のところはこれで手を打ちましょう。しかし、もし他にも何か話す気になったら是非ご連絡いただきたい。あと、この件に関しては我々に花を持たせていただけるとありがたいですな」


「お約束は出来ませんが、努力はしましょう。それでは失礼しますよ」




 LSS本部を出たヒルは、外の明るさに一瞬目を細めた。この陰気臭い建物から出るときはいつもこうなる。


「あらあらあらあらあら、団長ぉ、思ったよりも遅かったわねぇ」


「軍人が三十六人も殺されたんだ。彼らも必死さ。何にせよ、イラ支部長たちが軍人を殺害した件も奴らのせいになっているのは暁光だった」


「行き先は把握してたぁ?」


「いや、そのことには触れてこなかった。どうやらリネン政府もこの件にはかなり慎重みたいだ。まあ、行き先がわかったところで彼らには少し荷が重いだろうけどね」


「まあまあまあまあまあ、保安局が先に捕まえてもぉ、横取りすればばいいじゃない」


 そう言って、ヒルに腕を絡めて歩き出したのは、パームカンパニー人事部長ロエ。むわっと熟れた果実のような匂いがする。彼女を知らない人間なら、この香りだけで欲情してしまうだろう。


「でもでもでもでもでも、一人だけで三十六人も素手で殺せるものなのぉ? しかもそれぞれを一撃でぇ」


「ああ、直接見たわけではないから何とも言えないけど、誇張されてる気がするね、それ」


 自社調査によれば、巡洋艦内にいた軍人の多くはそれなりの訓練を積んだ屈強な男たちばかりだが、実戦経験のほとんどない彼らは、ヒルからしてみれば雑魚だ。一撃で殴り殺せるかと問われたら首を縦に振るだろう。しかし、三十六人を連続でとなると即答出来ない。


「そうよねぇ、団長以外にそんなこと出来そうな人って『エルヴォーグ』のファニー社長ぐらいしか思い浮かばないものぉ」


「拉致されていた港湾局職員の話だと、そいつは空を飛んだらしいからね……LSSはもっと詳細な情報を握っているだろうが、今回はそのカードを切ってこなかったよ」


「私たちの知らない『パターン』を使った可能性があるわね」


 急に真顔になり口調が変わるロエを横目に、ヒルは続ける。


「そうだね。そして、奴らが支社ビルを破壊したときに使ったという武器」


「現場の証言からして間違いなく『インドラパターン』」


「まあ、わかってはいたが、ニームも『ゴッドパターン』を保有していることがこれで確実に証明された。これまで隠してきた技術にも関わらず、白昼堂々と大勢の前で使用するなんて、今回の件はニーム軍からしても青天の霹靂の可能性が高いね」


「ええ、思わぬ事態だったんでしょうね。犯人の意図はわからないけど……」


「ニームは奴らに国際指名手配をかけていないらしい。おそらく他国にゴッドパターンの存在が漏れるのを怖れたんだろう」


「あのニーム軍がリネンで彼らを捕獲出来なかったのが気になるわね……まあ、何にせよ、奴らを捕らえるべき理由はこっちの方が多いわよ」


 二人が待機している車の近くまで行くと、ドライバーが後部座席のドアを開けた。


「ああ。これからその理由のなかでも一番重要な件で釈明しなければいけないんだ。――二番邸に向かってくれ」


「……ヌーロン。まったく面倒なことをしてくれるわね。どうしてあんなものまで……顔も知らないけど軽く殺意が湧いちゃうわ」


「そういえばお土産があったんだ」


 ヒルがLSSで貰った写真を渡すと、ロエは目を見開き、口を半開きにして固まった。


「どうしたんだい?」


「い、いえ、なんでもないわ……これ、各支部に送っておくわね」


「ああ、頼むよ。これで顔もわかったし、行方もだいたいは掴めている。場合によっては僕が出向いてもいい」


「私が行くっ!」


 突然、声を荒げるロエに、ヒルは少し身を引く。

 白い肌が紅潮し、鼻息荒く肩が上下している。


「ど、どうしたんだ急に。君がそんなにやる気になるなんて珍しいね……」


「当然よお、イラを勧誘したのは私よお。彼とはそれなりに付き合いがあったものお」


「なんだか口調がいつもより投げやりな気がするが……まあ、それじゃあ君に任せるよ。ある意味僕より確実かもしれないからね」


「任せてぇ」


「それじゃあ、最も面倒な仕事を終わらせるとするか」

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