新入社員
船に戻ると、前にゲスたちが乗っていた補給船が横づけされていた。
不信に思うも、とにかく荷物を載せ換える。
船の高低差があるから、一個ずつロープで吊るして引き上げるという面倒な作業だ。
「あんたら手際いいな。まあ、俺っちたちのせいで無駄足食った分は補給しねえとだもんな……」
「……いや、僕たちはそんな指示を出した覚えはないんだが」
バーチの言う通り、無駄足の分の補給は必要だ。
「こんな気の利く野郎なんてイバンしかいねーだろ」
「まあ、何にせよ、この船ならもう補給なしでウールまで行けるだろう」
「社長―っ! これで最後っす! 上がってきてください!」
イカサマ野郎が上から叫んでくる。
「じゃあな、バーチ。次に会うときゃ、俺は大社長になってっからよ」
「がははっ! じゃあ、俺っちは大運送会社の社長でも目指すよ」
バーチは俺と固く握手を交わすしてから、高速艇で港へと戻っていった。
「さてと、気の利くイバンにじじいの秘蔵の酒でも振る舞ってやるか」
「そんなものまで持ち出してたのか……」
俺が懐から取り出した最高級の酒瓶を見て、ウィンが溜息を吐く。
そんで、階段を上り、甲板に下りると――
「あーっ、しゃちょ! 待ってたネ!」
じじいの秘書の眼鏡女がこっちに駆け寄ってくる。
「おいおいおいおい、何でてめえがここにいるんだ?」
「……ん? 私しゃちょの会社に入社した。皆さん歓迎してくれたよ」
眼鏡女がルマンたちを見ると、全員がどこか気まずそうに手を振ってくる。
あの馬鹿どもが~~~。
「いやいやいや、俺の許可なく勝手なことさせねえぞ」
「まあ、落ち着けよ、バイス。君は確かアンズだったよね。僕はウィン。良かったら君がどうしてここにいるのか聞かせてもらってもいいかい?」
「私最初にここ来たときからこうする決めてた。ゲスにこの船襲うけしかけた私よ」
俺と同じ質問をしているのに、なぜかウィンにはちゃんと答える眼鏡女。
「でもしゃちょたち強い私見抜いてたネ。それで報復のためあの屋敷襲うもわかてたよ」
「……つまり、君はこうなることを全て計算してたってことかい?」
眼鏡女はこくりと頷くと、俺の方を向いた。
「ゲスがヌーロンのこと嘘ついてしゃちょたち騙そうとした。でも、私しゃちょの有利になることしか言わなかったの覚えてるか」
そういえば、こいつは妙にこっちに肩入れするようなことばっか言ってたな。
「なるほどな。確かにてめえがあそこでペラペラ喋んなかったらあのじじいはしらを切り通したかもしれねえ」
「そでしょ! 私最初からしゃちょのとこで働きたい決めてた。だからこれからよろしくネ」
すっかりその気なのか、弾けるような笑みを浮かべて、両手を合わせてお辞儀してくる眼鏡女……。
何か勘違いしているようだから、ここははっきりと言ってやる必要がある。
「だがな、てめえのせいで俺たちは危うく殺されそうになった。それにてめえはじじいを裏切った。てことは、てめえはまた俺たちを裏切る可能性がある。そんな奴は社員にできねえな~」




