雨上がりの港
「眠てえ……」
「夜通しだったからな。まあ、こうして一仕事終えたあとに港で朝日を浴びるのも悪くない」
俺たちは、沖に停泊させてある輸送船に運ぶため、じじいの家からいただいた金目のものをバーチたちの高速艇に積み込んでいる。
「ちっ、あのじじい、期待してたより全然しけてやがったな……」
「だな。本人があれじゃあもうどうしようもないさ」
絶対に現金とか宝石とかをもっと隠し持ってると踏んだ俺は、じじいに在り処を吐かせようと色々試したが、ぶっ壊れちまったらしく、何をしても秘書の名前しか言わなかった。
「ハァ~、何か骨折り損のくたびれ儲けだな……うおいっ、見ろよあの犬散歩させてるちゃんねー、絶対欲求不満だぞ!」
「どこをどう見たら欲求不満だと思うんだ……」
「あんなに脚出すか普通? あれは「私をどうにかしてください」ってサインなんだよ。ったく、てめえは何もわかっちゃいねえなっ!」
「お、お、おう、そ、そうなのか……そこで怒鳴る意味はわからないが……」
正直、ここの港に下りたとき、俺はこの島が気に入った。
リネンの港街はごちゃごちゃと発展していたが、ここには高い建物もないし、街並みがいい感じに田舎臭い。改めてこうして朝に眺めてみると、何か良い予感みたいなのがしてくる。
「なあ、自由国家連合まで行かなくても、もうここでよくね?」
「……また勝手なことを……まあ、確かにここは美しいな。終の棲家には悪くないかもしれない」
終の棲家とか、また格好付けたことを言うウィン。
「でも、ここは観光地らしいからな、シーズンオフになったら閑散とするらしいぞ」
「シーズンオフねえ……まあ、商売には不向きってことか。そりゃ残念だな」
「荷物は全部積んだぜ。あとはあんたらだけだ」
俺が街を眺めながら名残を惜しんでいると、バーチが声をかけてくる。
ここまでの道中、俺はこいつと妙に馬が合うことがわかった。
「おい、他の奴らはともかく、てめえが入社すんなら俺は大歓迎だぞ」
「気持ちは嬉しいが、俺っちには妻と子供がいるからな。このまましがない運び屋を続けるよ」
「へっ、そうかよ。後悔しても知らねーからな」
「さっき家に電話したら『とっとと帰ってこい! 帰りにおむつ買ってこなかったらぶっ殺す!』って怒鳴られたんだぜ……今回の件がバレでもしたらマジで殺されるからな」
やっぱりこいつは女の趣味が良い。わかってる。
「ふっ、結婚というのも大変そうだな。じゃあ、これで奥さんの機嫌が良くなることを祈るよ」
「……マジかよ……いいのかこんなに? 俺はあんたたちを殺そうとしたのに……本来なら殺されてもおかしくないはずだぞ」
なぜか勝手に報酬を渡すウィンの横面を思いっきり睨む。
それは俺の仕事だろうが! とは声に出さず、心の広い社長の俺は、こういう部下のちょっとした見栄を許してやるのだ。
「ばーか、あの海賊連中にはてめえから払ってやれよ。こっちも手違いで一人やっちまったしな。それ込みだ」
「それでも多いよ。ありがとう。あんたらはやっぱり上客だな。もし何かあったら、いつでも俺に言ってくれ。最優先にさせてもらう」
「おう、そんときゃよろしく頼むぜ」




