悪徳の代償2
門が開かれ車のエンジン音が聞こえると、ゲスは居ても立っても居られなくなり、急いで階段を下りた。
「ッ!? ど、どういうことだ?」
玄関の両開きの扉が開け放たれ、外にはトラックが一台また一台と停車していく。
「おい! 貴様らなんだこの数は! 一台で事足りるだッ!?」
ゲスは外に飛び出し、トラックから降りてきた男に怒鳴りつけるが、その男の顔を見て口を噤んだ。
「よお、じじい。元気そうで何よりだな」
「き、貴様は……」
驚愕に言葉を震わせるゲスの前で、次々とトラックから人が降りてくる。その中に――
「ば、バーチ! おい、これはどういう……」
そこで、ゲスは全てを察した。
「まさか……裏切られたのか……」
「裏切る? 俺はより良いクライアントを見つけただけだ。あんたならわかるだろ?」
バーチはこともなげにそう答え肩を竦める。
「そういうこった。残念だったな」
「ぐ……ぐ……貴様ら~~~~っ、わしにこんなことをしてただで済むと思っているのかっ!」
「思ってませんよ、ゲスさん」
武器の見積もりをしたときに見た、赤毛の美男子がゲスの肩に手を置く。
「ちゃんと迷惑料は払ってもらいます。じゃあみんな、仕事にかかろう」
「なっ!?」
そう言って男が顎をしゃくると、男たちが続々と邸内に入ってくる。
「おい、勝手なことをするな! 止まれ! おいっ! アンズ! アンズはどこだ?」
ゲスは自分の秘書の名を叫ぶが、反応がない。
出迎える準備をすると言っていったはずだ。
「なんだよじじい。てめえ秘書にも見捨てられちまったのか? かー、やっぱ汚ねえ事はするもんじゃねーな」
「ばかな……アンズが……まさか」
アンズが裏切るはずない。
あの娘は自分を家族同然に思っているはずだ。
そう考えたところで、ゲスははたと気がついた。
「貴様らがたぶらかしたんだな! アンズはどこだ? 言え!」
「あん? いや、知らねーよ。それよか濡れるから俺も上がらせてもらうぞ」
鼻に傷のある男は、ゲスを押しのけ屋敷に入る。
「どうなっているんだ……アンズは、アンズはどこだ」
ゲスは正体を失ったように、その場にへたり込む。
バーチの裏切りやこの男たちの押し込みなんて取るに足らないことだ。金はまた稼げばいい。
しかし、アンズはだめだ。あの娘はゲス商会の全てを握っている。もはや、アンズなしではゲス商会は成り立たない。
「アンズ……どこだ……どこにいる」
呆然と雨に向かって呟くゲスの背後で、男たちが忙しなく屋敷を荒らす音がしていた。




