歓迎会前
「おい! てめえイカサマしただろ!」
「ひっでえな~、そんなことしないって何度も言ってるじゃないっすか」
暇な海上生活が、雨のせいでさらに暇になり、俺はルマンの部下の一人と食堂でカードをしている。
あ、もう俺の社員だから、元部下か……まあ、どっちでもいいが。
「いーや、こんだけ俺が負けるなんて有り得ねえ! あっ! さてはてめえカードに細工してやがるな!」
「いやいや、これはこの船にあったやつで、持ってきたのは社長じゃないっすか……」
「…………そういうことか。事前にカードをすり替えやがったな!」
「どこまで疑り深いんすっか! んなことしませんよ! それよか俺も船倉に移動したいんすけど……」
うちの社員になったからつっても、こいつらの根性は所詮チンピラだ。油断も隙もねえ。
「ちっ、下手な嘘付きやがって――」
そのとき、轟音とともに船が大きく揺れた。
「ば、バイスさん……」
俺たちの横で本を読んでいたミュウが、顔を上げて声を震わせる。
食堂の隅で鍋から直接がっついていたディーが、――微動だにせずそのままがっついている……。
「おい、イカサマ! てめえは船舵室行って停船するように言え、それから船倉に移動だ!」
俺はそう言ってから、急いで船外へと出た。
雨のせいで何も見えないが、雰囲気でわかる。敵は複数人いる。
「おい、どこかやられたのか?」
「外れてる。ただの威嚇だよ。注意を引くのと停船させるためだろう」
既に船外に出ていたウィンが答える。
そこでさらに轟音。前方で大きな水しぶきが上がり、船が揺れる。
「ふーん。予想通りかよ。つまんねえ……で、歓迎の準備は出来てんのか?」
「今のでリー以外は皆船倉に移ってるはずだ。食堂の方は?」
「イカサマ野郎とミュウだ。ディーは飯食ってる」
「おいおい、なんでミュウちゃんが食堂にいるんだ? 船倉に近いところにいる予定だろ」
「知らねえよ……あいつが食堂のが落ち着くって言うからさ」
「……まあ、いずれにしろ、ディーがいるから問題ないだろうが……」
「ああ、そろそろ食い終わってるだろうし。移動させんじゃね?」
「ふっ……じゃあ、僕たちもラストステージで待つか」
なんか格好付けて「ラストステージ」とか言っちゃってるウィンが船内に入る。
「あー、シャワー浴びてえけど、止めといた方がいいか……」
せっかくの暇つぶしだ。最初から最後まで楽しませてもらうとするか。




