明るい未来と暗い過去3
船倉に下りると、美女入りガラスケースの前でウィンが腕を組んでいた。
「おい! いくらなんでもそれにまで手え出すってんなら、てめえとの付き合い方考え直すぞ!」
「ふっ……相変わらず馬鹿だなお前は。僕がそこまで女に飢えてると思うのか?」
きざったらしっく髪をかき上げながら、ウィンは答えるが、その表情は心なしか固い。
「……僕はね、このヌーロンという生体兵器に興味があるんだ」
「男だったら誰でも興味あるだろう。なんつっても裸の美人だからな」
呆れたという風に溜息を吐いてからウィンはまた腕を組む。
「いいか。こんなものはニームですら開発していなかった。それをあのシルクが開発しているんだぞ。お前も知っての通り、あそこの軍事技術は相当遅れているにも関わらず、だ」
「ふーん……でも、これがちゃんと動くかまだわかんねーだろ? もしかしたらポンコツかもしれねえじゃねーか」
「確かに性能に関しては、実際に起動しているところを見ないと何とも言えないな。僕が気になっているのは、その技術だよ。生体兵器ということは、コレは人間と機械が融合している存在ということになる。そんな技術なんて聞いたこともない……それにあのパームカンパニーの男の腕に仕込まれていたゴッズテックのような武器……そもそもなぜパームカンパニーがこれを所有していたんだろう……?」
そして、段々と独り言みたいにぼそぼそ呟きだす。
なるほど……かなりどうでもいい。
こいつは根が小心者だから、そういうことが気になるのだろう。
「これがもしブランズ――僕らを上回る力を持っていたら……ニームが危ないかもしれないぞ」
ウィンは俺の方に身体を向ける。
「人口が少なく内陸国、且つ、大国と交易をしていないニームにとって、軍事的優位性は国家存続の要だからな」
「けっ、今さらあの国の心配なんかしてどーすんだよ。俺からしたら滅ぼされてくれた方がスッキリするけどな。そうなりゃもう追っても来ないだろうし」
ウィンはいつもみたいに「ふっ」と笑うと、俺の肩に手を置いてくる。
「事はそう単純じゃないさ。もしニームが敗れるようなことになれば、大陸の勢力図は一変するぞ……僕は嫌な予感がしてならないんだ……」
やっぱり、こいつがいつもの不安症からくる臆病風を吹かしているだけだった。
認めたくないが俺たちは田舎者だ。情報統制された国で生まれ育ったから、外の情報を正確に把握していないのである。それだけの話だ。
「ああ、俺も嫌な予感がしてならねーよ。今日にでもこの美人を盗みに来る奴がいるんじゃねーかってな」




