馬鹿ばっか
どうやらこの爺さんは、余程このヌーロンとやらが欲しいらしい。
まあ、俺からしたらそこそこの金にはなるようだから、ここで売っぱらってしまってもまったく問題はない。
が、この爺さんは俺を騙くらかそうとしやがった。最初は一千万モメンって言ってたのに、今は二億モメン――武器の金を差し引くと、このヌーロンとやらに一億五千万モメン出すと言っている。
吹っ掛けてきたこと自体はまあ大目に見るとして、この差額だ。相当なめてないとこれだけ吹っ掛けてくるわけがない。
「爺さん。今日の所はそのねーちゃんの言う通り、武器の金だけ置いて帰んな。これをあんたに売る気は失せた」
「そ、そんな! こんな代物、他に誰が買うと思っているんだね? これを扱える商人は私しかいないと断言しておこう!」
「おいおい、爺さん。別に俺はこいつを売ると決めたわけじゃねー。こんだけの美人だ、事務所にでも飾るってのも悪くねえ」
「うえっ」
「……おい、それはやめてくれよ。会社全体の趣味を疑われかねない」
「私もおすすめしないネ。それすごく気味悪いよ」
人がせっかく高度な駆け引きをしているのに、ルマンとウィン、それになぜか爺さんの秘書までもが茶々を入れてくる。
「うっせえ! とにかくだ、今はこれを売る気はねえ。諦めろ」
「そうですか……仕方ありませんな。諦めるとしましょう。年甲斐もなく失礼な態度を取ってしまったことをお詫びいたします」
もはや交渉の余地なしと察したのか、ゲスは最初の慇懃な態度に戻ると、俺に頭を下げてきた。
それから武器をゲスの船に移し、こっちの燃料と食料の補給を確認してから、現金の入ったカバンをイバンが受け取る。
「確かに。社長、ちゃんとあるぜ」
「それでは、今後とも何かありましたら私どもをお使い下さい」
「……ああ、わかった」
「どうやら無事に取引も終わったようで良かったよ。さあ、軍資金も出来たし、いよいよここからだな」
「ねえ……ウィン。あんたウールに着いたらどうすんだい?」
「ん? どうって?」
「……あ、あのさ。良かったら一緒に住まないか? あんたさえ良かったらなんだけど……」
「……ふっ」
甲板で二人を見送りながら、ウィンとルマンが俺の隣で何やら楽し気に将来の話をし始める。
「おい! てめえは仮にもチンピラのボスだったんだろ? それからウィン! てめえは嘘吐きの天才だろーが? どうやったら、そんだけ脳みそお花畑に出来んだよ……」
「な、なんだよ、突然。あっ……わかった。どうせあんたもウィンと一緒に住みたいと思ってたんだろ。家事とかしてもらえるから」
「違げーよ、クソビッチ! ってか「も」ってなんだよ「も」って。があああっ!…んなこたぁどうでもいいんだよっ!」
「どうしたんだ? 気になることがあるなら言ってくれ」
「ちっ、色ボケ共が! いいか、あの爺さん……十中八九あれ狙ってくんぞ!」
そう怒鳴ってから、俺は馬鹿二人に背を向けて船内に入った。




