オーダー!
「オーダー! 俺だけのハーレムをくれっ!」
「お、おい……大丈夫か、お前?」
起き抜けにさっそく奇跡を受けようとした俺の傍で、ウィンが身を引いている。
……どうやら、奇跡とやらは万能ではないらしい。
「……お、おう。なんだよてめえ。勝手に人の部屋に入って来てんじゃねーよ」
「もう、正午だぞ。そろそろ起きてくれ。ルマンたちから話があるそうだ」
身支度を整えてから、ウィンと一緒に船舵室へと向かう。
既に日が高く、周囲には空と海しか見えない。
「今どの辺りにいんだ?」
「詳しい位置まではわからないが、シーアイランドまでは後四日はかかるそうだ」
あと四日も海の上にいなけりゃならないとは……地獄かよ。
溜息混じりに船舵室に入ると、ルマンと部下たちが勢ぞろいしていた。
「おう、起きたのか、社長」
「オーダー! この女を水着秘書にしてくれ!」
「…………なあ、ウィン。こいつ昨日のごたごたで頭でも打ったのか?」
「それはないと思うが……」
殊勝なことに俺を社長とか言ってくるルマンを水着秘書にすらしてくれないとは、とんだポンコツ奇跡だ。
「で、なんだよ話ってのは?」
「みんな腹を決めたんだ――ここにいる全員あんたの所で働かせてもらいたい」
どうやら、使えない社員を大量採用するはめになったようだ。
「その件かよ。好きにしろ。あとは人事部長に従ってよろしくやれ」
「じ、人事部長だと! 僕の立ち位置からすると副社長、いや共同経営者だろう!?」
どうでもいいことを気にするウィンをしり目に俺は、息苦しい船舵室を後にする。
朝飯前から、ぐだぐだつまんねー話は勘弁だ。
「あ、バイス小、社長! おはようございます」
食堂に行くと、昨日と同じ席にディーが座っていた。
テーブルの上には既に食い終わった皿が積まれている。
「オーダー! こいつの食欲を普通にしてくれ!」
「……そ、そのポーズはいったい……社長変なものでも食べたんですか?」
昨日のデジャヴみたく、ミュウがおかわりの皿をテーブルに置くと、三日ぶりの飯かというぐらいの勢いでそれにがっつく腹ペコ女。まったくもってこの奇跡は使えない……。
「バイスさん、さっきのは新しい遊びですか?」
「…………ちげーよ」
ツッコまれるならまだしも、ガキにそういう風に言われるとなぜか恥ずかしい。
どうやら使えないみたいだし、奇跡のことはもう忘れよう。
「そんなことよりも、こいつにあんまり食わせ過ぎんなよ。港に着くまでに食料がなくなっちまうだろ」
「あ、それなら大丈夫です。ここの食料備蓄は半月分くらいありますし、ルマンさんが次の港で食料いっぱい買ってくれるそうなので」
ちっ、俺抜きで勝手に色々決めやがって。




