第二の刺客7
「そ、そういうことなら一度本国に確認を――」
「ふぉあっ!」
立ち上がろうとするディーをリーが片手で制する。
「ふぉあふっふーっ、ふぉあ!」
「盗聴ですか……確かに上席からは任務完了以外では連絡しないように言われていますが……」
「本国は他国に情報が漏れるのを何よりも嫌う。ましてや、僕らの任務は極秘中の極秘。もう言わなくてもわかるね?」
「……はっ! なるほど……この作戦のことを電波に流す、それ自体が危険ということですね」
ディーは引くぐらいこっちの都合良く解釈してくれる。
もしかしたら、既にこっちの嘘を見抜いているにも関わらず、スイーツとやらを食べてみたいだけなのではと勘ぐってしまうほどだ。
「では、正式にここで隊長から辞令を出してもらおう」
ウィンがそんなことをほざいて俺の方を見ると、ディーも居ずまいを正し敬礼してくる。
「ごほんっ、あー。ではディー軍曹——え? もう中尉になった? あー、そうだったな! ごほん。ディー中尉、君は本日付けで我々のチームへ正式に配属された。今後はこの俺バイス少佐の指示に従うように」
「はっ!」
ハイブランズが、まさかここまで簡単に騙されるとは……。ブランズって実は大したことないんじゃないか?
「それじゃあ、改めてチームにようこそ。では、僕からこのアンダーカバー作戦について説明させてもらおう」
船舵室。
外はすっかり日が落ちて、船の周囲は真っ暗だ。
「では、みんな紹介するよ、彼女はディー、うちの正社員だ」
「みなさん。初めまして。ディーと申します。社会経験は乏しいですが、戦闘には自信があります。以後、お見知りおきを」
「彼女はルマン。こっちがイバンだ」
「こいつは異常に食い意地が張ってるからな、食糧庫には監視置いとけよ!」
「し、小、いえ社長! 自分は出されたものは遠慮なく食べますが仲間のものを盗んだりはしません!」
ウィンによるディーの取り扱い説明が行われたあと、ディーを皆に紹介する事になった。
ディーには俺たちの(嘘の)任務を漏らさないように伝えてある。
ルマンのニーム人びいきを聞かされているディーを見て、俺はふとある事を思い出した。
「そういやよ……お前あの巡洋艦の連中どうしたんだ?」
「ああ。一食の恩があったので抵抗しないように注意はしたんですが、発砲してきたので残念ながら私が乗っていた方の船は、操縦士以外の乗組員は皆殺しにしました」
事もなげにそんな言葉を吐くディーにどん引くルマンたちをしり目に、俺はもう見えなくなった巡洋艦の方を眺める。それならもう、俺たちのこと追ってる場合じゃねえな、あっちも。
ああ、今日はもう考えるのも面倒臭い……。
「そっか、じゃあもうあいつらはほっとくか。港湾局の職員たちは次の港で降ろしてやろうぜ。そんじゃ出航だ。てめえらも休めるときに休んどけ! 明日も忙しいぞ」
ようやく長い一日が終わろうとしていた。




