第二の刺客6
「いえいえ、これ以上はお構いなく……あ、いやー、え? そうですか? それじゃあお言葉に甘えて……あっ! リー先生!」
食堂に戻ると、ミュウにおかわりを勧められ任務よりも食欲を優先している最中のディーが立ち上がり、リーに敬礼する。それに続いてなぜかラダも立ち上がり敬礼する。
「そちらの二人はともかく、先生とはちゃんとお話ししなければと思っていたのです。今の自分があるのはリー先生のおかげです……なので、信じています! 嘘ですよね、裏切ったなんて?」
「ふぉあーう……」
「え!? 先生の方からもお話が……なんでしょう?」
「ふぉあふぉあふぉー、ふぉーうふぅ~」
「ッ!? そ、そんなまさか……では、これまでの一連の騒ぎは全て作戦行動だったと言うんですか?」
「ふぉあちゃ」
「でも、あれだけ目立つ行動を取る必要が……あっ、もしかして、ニーム軍とは無関係ということにするにために国境壁を破壊した……ニームからの逃亡者ということにすれば、何かあっても国は責任を取る必要がない」
「ふぉう」
「し、しかし、ゴッズテックを使用し、ミロク守備兵を殺害する必要があったのでしょうか?」
「あちょ。ふぉあおうっ! ふぉふーっ!」
「ええええっ!? 彼は他国との内通者だったのですか? それは初耳です……では、パームカンパニーのオフィスビルをゴッズテックを使用してまで破壊したのにも意味が……?」
「ふぉあっふ~ぅっ! あちょおあ~」
「ま、まさか……一民間企業の傭兵団がゴッズテックを……はっ、そういえば、私も港で先生たちを監視していたとき、支部長と思しき男がインドラウェイブに似た武器を使用するのを見ました……なるほど我が国の上層部は既にその情報を握っていたんですね」
「……ふぉ、ふぉあちょ。あちゃ~ふぉーお~あっ!」
「真の任務は、自由国家連合での諜報活動……なるほど、かの国にはまだ潜入員がいませ――失礼」
ミュウがおかわりを持ってきたことで再び話が中断され、代わりにパスタを啜る音が響く。
よくわからないが、ものすごくこっちに都合良く話が進んでくれているようだ。
「なあ……もしかしてリー語わからないの俺だけ?」
「バイスさん……俺もわからねーよ……」
「ディーがまだローブランズの頃に、リーは格闘技術の講師をしていたからな。それでわかるのだろう」
リーが講師をしてたなんて初耳だ。
ということは、リーの生徒だった奴らはみんなこいつが何を言っているのか理解出来るということか?
……いやいや、そもそもこいつを講師に採用した奴誰だよ!
「……なあ、俺たちの国ってもしかしてイカれてんじゃねーのか……」
「なあなあ、師匠もそうだけど、あんたらってニームで一体何やってたんだ?」
ラダが今さらな質問をして来たが、さっき見たときよりも早くディーがおかわりを食べ終わる。
「ふぉうふぉあふ」
「ちょ、ちょ、違いますよ、先生! 最近はずっとましになってて……なのに、彼女のパスタ食べたら止まらなくなってしまって!」
「おかわり持ってきましょうか?」
「え、いや……あー、じゃあ、お願いします」
「ふぉー! あちゃふぉう」
ミュウに対して深々と頭を下げているディーが、リーに何か言われ、ばっと立ち上がる。
「じ、自分もですか? その諜報部隊に加われと!?」
「ふぉあ」
「ディー、知ってるかい? 自由国家連合ではスイーツという菓子を食後に食べるらしいが、それがかなりの絶品らしいよ」
絶好のタイミングとばかりにウィンが割って入ると、ディーはゴクリと喉を鳴らした。




