第二の刺客5
ウィンと急いでリーの所へと向かう。
あのポンコツを回収してから、救命ボートで脱出する作戦だ。
せっかく手に入れた報酬を手放すのは惜しいが、ここで捕まるわけにはいかない。
「それにしても薄情な奴だな、お前は」
走りながらウィンがおかしなことを言ってくる。
「あん? あいつらにはちゃんと助言しただろ。後はもう知らねーよ」
「ふっ」
ふっ、じゃねーよ!
こいつだって同じなくせに、何格好付けてやがんだ?
まあ、さしずめルマンのことでも惜しんでやがるんだろうが、こうやって一緒に逃げている以上、結局こいつも自分優先なのに変わりはない。
「――お前、スイーツというものを知ってるか?」
突然、意味不明な質問をしてくるウィンを横目に、俺は目を細めるだけで答える。
「知らないだろうな。甘い菓子の総称で大変美味らしい。何でも、ウールでは食後にこのスイーツというものを食べるらしいんだ」
「だからなんだってんだよ? お前ピンチ過ぎてイカれちまったのか?」
「違う……ディーをそれで釣るというのはどうだろうか?」
ちょうどリーがいる船室の前で、俺たちは足を止めた。
食い物で釣るなんていう発想は、普通、動物か子供相手にしか思い浮かばないが、――ディーは別だ。あいつなら、その手に乗ってくる可能性は十分にある……。
「悪くねえ手だ……悪くねえが、あいつの生真面目さを考えると、食欲だけじゃ不安だな」
「それなんだが、その生真面目さを逆手に取るというのはどうだ?」
「てめえ、何考えてやがる?」
自分の頭の中が読めない俺に優越感を抱いたのか、ウィンはいつもの様にふっと笑い、
「後は僕に任せてくれ。それには何としてでもリーを復活させる必要がある」
と言って、部屋のドアを開けた。
「ころころころころころころころ……」
さっきと同じ場所で、同じ様に頭を抱えてころころ呟いているリーを見て、ウィンは腕を組む。
「もう本気でぶん殴っちまおうぜ。衝撃で元に戻んじゃね?」
「……いや、それはだめだ。しかし衝撃か……はっ!? そうだ!」
何かが閃いたらしいウィンが部屋を出て戻ってくると、その手には水の入ったバケツが握られていた。
そして――、一気にリーの頭の上でバケツをひっくり返し、手で頭を揉みくちゃにする。
「ころころころころころころッ!? ふぉーーーーーーーっ!!!」
突然、リーは立ち上がり、ペタペタと頭を触りながら、鏡の前に移動し、
「ふぉあっ!? ふぉううううう~。ふぉううううう~」
と情けない奇声を上げながら、髪型を直し始める。
「……やっぱりね。リーは髪型を死ぬほど気にしているから、もしやと思ったんだ」
いや、もしやと思わねえだろう、普通……。




