第二の刺客2
「そんなところにいないで、下りてきて貰えるとありがたいのですが……少し話をしましょう!」
「…………」
とにかく、ここは下りるしかない。
これはニームを飛び出して以来最大のピンチだ。
俺に続いてウィンも手すりを飛び越えて、甲板に下りる。
「素直に従って貰えてうれしいです」
高い位置で束ねたくせのある長い藍色の髪を揺らしながら俺たちに軽く頭を下げると、ディーは灰色の瞳を真っすぐに向けてくる。ぶかぶかのジャンプスーツを着た子供みたいに見えるが、顔はきっちり女だ。
「単刀直入に申し上げます。私の第一任務は、ゴッズテック――アグニスロワー、ヴァーユガン、インドラウェイブの三器とヴィシュラフォン二台を回収し、持ち帰ることであります。お二人が保有していることは既に確認済みですので、今すぐ渡してください。もし抵抗されるというのなら命の保証はいたしませんので、あしからず」
屈託のない笑みを浮かべながら、物騒なことを言うこの怪物に、俺は言葉を詰まらせる。
はっきり言って、こいつとまともにやり合って勝てる気がしない。
「わかった。ちょっと待ってろ、すぐに持ってくる」
「同行しましょう」
考える時間さえ与えてくれない。
だめだ! 何も思い浮かばねえ。逃げるにしても、ここは海の上だ。陸地だとしてもこいつから逃げ切れる確率は低いのに、海上だとさらに低くなる。
唯一の救いは、こいつがまだ話す姿勢を持っている点だが……。
「ディー。発言してもいいかい?」
「……なんでしょうか?」
ウィンがわざわざ発言許可を取ると、探るように目だけを向けるディー。
「第一の任務がゴッズテックなのはわかったけど、第一があるということは第二もあるんだろう? それを教えて貰えないかな?」
「ああ、その事ですか。第二の任務は、お二人と――あれ、そういえばリー先生は? 一緒じゃないんですか? まあ、先生は後で探せばいいとして、第二の任務は、生死を問わず三人を連れ帰る事ですね、はい」
後ろ手を組みながら、一切の隙を見せずに、剣呑な言葉を口にするディーに、ウィンでさえ少し顔を青くしている。
「……そうか、ついでにもう一つ聞かせて貰いたいんだが、僕もバイスも既に辞表を提出している件を君は聞いているかい?」
「……いえ、寡聞にして存じておりませんが」
「そうか……軍規に忠実な君ならもちろん知っていると思うが、十年以上軍務に従事した者は自由退職が認められるのは知っているよね?」
うおーっ! ナイスだウィン!
こいつの口の上手さに、これほど期待したことなんて未だかつてない。
「……はい、もちろん知っていますが、それが何か?」
「僕たちは、自由退職を願い出たにも関わらず、それを断られた。だから、こういう状況になっているということを君に知ってもらいたくてね」
「…………」
ウィンの口撃に、ディーが詰まった。
おい、これいけんじゃね?




