第二の刺客
イバンを押しのけ備え付けの望遠鏡を覗くと、確かに一隻だけがゆっくりと回転するように船尾を前に向けようとしている。
「何してんだ、ありゃ?」
「なんだろう……主砲は船の向き関係なく動かせるはずだし、こっちに民間人が乗っている以上、向こうから攻撃してくるはずはない……あんな操船をする意味がわからない……」
無線を打つのを止めて隣に来たウィンが双眼鏡を構えながら言う。
こいつがわからないなら俺にもわからない。
ここは逃げた方が良いのかと、考えていると、
「「「ッ!?」」」
俺たちは声なき声を上げる。
半回転した巡洋艦の船尾から、何かが飛びだしたのだ。
「錨!?」
それは錨だった。
当たり前だが、軍艦の錨が、こんな風に飛んでくることなんて普通はない。
錨は鎖をしならせながらみるみるこっちに接近し、やがて勢いを失って着水する――寸前、
「おい、やばいぞ! ディーだっ!」
双眼鏡を覗いていたウィンが叫んだ。
鎖の上を疾走して、錨が着水すると同時に大きく跳躍したそれは、視界から消えた。
最悪だ。
「まさかあれ送ってくるとは思わねーだろーっ!」
俺は叫びながらウィンと一緒に、操舵室を出て、急いで手すりから身を乗り出し甲板を見下ろす。
そこには、俺の指示で港湾局職員を連れたルマンの部下たちが。
「てめえらっ! 死にたくねえなら黙ってろ!」
俺が叫ぶのと同時に、ドンっと音を響かせ、甲板の上に下り立つ人影。
「な、ど、どうしたんだよ? あんたらがそんなに慌てるなんて?」
「ルマン、隠れてるんだ。これは本当にヤバい!」
イバンと一緒に飛び出して来たルマンに、ウィンが鬼気迫る様子で叫ぶ。
そう、これはマジでヤバい。
「まさかハイブランズを使うとはな……」
「次は絶対グラーだと思ってたのに……くそっ、何も用意してねーぞ」
その人影は、甲板に出ていた奴らを無視して、跳ねるようにして悠々とこっちに向かってくる。
そして、俺たちの真下に来ると、
「ご無沙汰しております! バイス少佐! ウィン少佐!」
子どもみたいな女が、敬礼してきた。




