ぶっ壊れてます。
ミュウたちの入社については取り合えず保留にして、俺とウィンは船室を後にした。
「てめえ、何であんなガキども入れようとしたんだよ?」
「ん? ああ、イメージだよ、イメージ。男臭い職場よりも女子供がいる方が、信用にも繋がると考えたんだ。孤児を雇っている会社。いいじゃないか、如何にも健全そうで」
なるほど……。
この嘘吐き野郎は、こういうことに関しては天才的だ。
「じゃあ、あいつらもお前が面倒見てくれよ」
「……お前……もしかして全部の責任から逃れようとしてないか?」
「あーん? ふざけんな! ルマンたちもあのガキどももてめえが引き入れてんだろうが。なら、てめえが責任持つのが筋ってもんだろ」
ちゃんと物事の道理を説いてやるが、ウィンはどこか納得いかなそうに首を捻る。
こいつが引き入れた奴をこいつが面倒見るのは当たり前の話だろ。
自分のやっていることを理解していないっぽいボンボンはさておき、俺は自分が引き入れた面倒を解決するために、謎の囁き声がする船室へと足を踏み入れた。
「ころころころころ……ころころころころころころころ……ころころ……」
「おい、なんでこいつはころころ言ってんだ?」
「訓練中のトラウマだよ。リーも何度も殺されかけたらしいからね。他にもやだやだバージョン、いたいたバージョン、しぬしぬバージョンは聞いたことがある……」
「な、なるほどな……」
狭い船室に置かれたベッドの上で、頭を抱えてころころ言っているリーを見ながら、俺たちも過去の訓練を思い出してしまい同時に身震いする。
訓練中のトラウマで同情しないブランズ隊員はいないだろう。
「さて……どうすっかな。てめえにも治し方わからねーなら色々試すしかねーが」
「酒、女、中には人形を持ち歩いてる奴もいたな。みんな独自の方法があるはずなんだが……」
ブランズ隊員のほとんどは負傷するとなんらかのPTSDに悩まされるが、リーのはかなり酷い類だ。
まずは、ヌンチャクを見せてみるが――反応はない。
それから、殴ってみたり、例の奇声を真似て話しかけたりしてみたが、さっぱりなので、こいつのことも取り合えず保留にすることにした。
「あ~っ! ったく、何も決まんねーじゃねーか!」
「仕方がないよ。リーの件はゆっくり考えるとして、そろそろ上に戻ってみよう。ルマンたちのことが気がかりだ」
「はんっ! てめえの女のことだからだろ」
どれもこれも思い通りにならなくてイライラしていると、船内スピーカーからイバンの声が聞こえてきた。
『バイス! ウィン! 至急戻って来てくれ! リネン海軍のお出ましのようだ!』




