姉弟の決断
俺とウィンは一番大きい船室に入る。
「あっ、バイスさん!」
そこにはミュウとラダ、それとハゲのイバンがいた。
「無事だったんですね……よかった~」
「俺は絶対大丈夫だって言ってたんだぜ」
思っていたよりも明るい様子のミュウ。
その横で、指に包帯を巻かれているラダが何やら目を輝かせる。
「こう広いと消毒液とか包帯一つ探すのにも手間取っちまってな。よし、これで大丈夫だ」
「ところで、その指はどうしたんだい?」
「こんなの大したことねーよ。ちょっと爪を剝がされただけだって! でもまあ、もし師匠が助けてくれなかったらヤバかったけど」
気勢良く答えるラダだが、その言葉に俺とウィンは顔を見合わせる。
「「師匠?」」
「リーさんのことです。この子ったらさっきからずっとリーさんの話ばっかりしてて……」
「姉ちゃんも見ただろ? あの人こそ俺の理想の男だ……いつかきっと師匠みたいになるんだ、俺」
無事な方の手を握りしめ、ラダが遠く未来を見つめる。
どうやら、ラダは俺が思っていたよりも数倍アホだったらしい……。
「おい、言っとくがリーは――」
「そうか! 目標が出来たのは素晴らしいことだね。僕は応援してるよ」
リーを目指すのがどれほど無謀かを教えてやろうとする俺の言葉を遮り、ウィンが目で合図してくる。
どうやら、こいつはこの幼気な少年をおかっぱ頭の変人にしたいらしい。
「ちっ、まあいいや……それよか、てめえらに話さなけりゃならないことがある――お前らの父親だけどな、やっぱ死んでたわ」
俺の言葉に室内が静まり返る。
ウィンが苦虫を嚙み潰したような目で見てくるが、こういうのはストレートに伝えた方が良いのだ。
回りくどい言い方をしても内容が変わるわけではない、というのが俺が至った結論だ。
「……そうですか……覚悟はしていました……」
俯き、悲壮な声でそういうミュウとは裏腹に、ラダの様子はさっきと変わらない。
「依頼とは関係ねーが、お前らを追っていた偉そうなおっさんは俺が殺しておいた。たぶん、殺したのはあいつだ」
今度はイバンまで俺を冷たい目で見てくる。
そんな目で見られる覚えはない。俺はクライアントに仕事の報告をしているだけだ。
「……俺はいつか復讐してやる。師匠みたいに強くなってパームカンパニーの本部を壊滅させるんだ」
「いや、待て。お前の父親を殺したっぽい奴は俺が殺したって言ってんだろ……」
なぜか淡々と復讐を誓うラダを俺は諫めるが、
「バイスさん。俺は父さんだけの復讐がしたいんじゃないんだ。あの街で殺されたニーム人全員の復讐がしたいんだ……」
そう言って、ガキが男の顔で見返してきた。




