港街ライオット12
「撃て撃て撃てーーーーぇいっ!!!」
装甲戦闘車の助手席で、窓から体を半分乗り出したイラが叫ぶ。
「もう死体でも構わん! 皆殺しだっ!」
上部に取り付けられた銃架から機関銃を乱射していた部下は、その命令に反し発砲を止めた。
「支部長閣下っ! この先は港になります! 港湾きょ――」
「貴様ーっ! 黙って撃て! 責任は持つ!」
倉庫に保管しているヌーロンが狙われていると察したイラは、港に向かう途中で、あの忌々しき奇声を発するヌーロンと少年の一団を発見し、急襲したのだが……。
「……おかしい」
あれだけの実力を持った生体兵器が、防戦一方。
というか、反撃する素振りすら見せずに、完全に逃げに徹している。
装甲戦闘車相手に怯んだ? いや、機関銃との相性が悪いのか……。
何にせよ、これは奴を仕留めるチャンスだ。
あんな化け物は仕留められるときに仕留めておくのが得策。
それに、もし仮に万が一にもヌーロンが盗まれたとしても、あのもう一体を死体ででも入手すれば、本部への言い訳に使える。
「あのおかっぱ頭を狙えっ! 他はどうでもいい……いや」
とはいえ、コンテナと倉庫が並ぶ港は、遮蔽物の多い入り組んだ路地と同じく逃げ場が多く、かつ、戦闘車両では小回りが利かないため、追い込むのは難しい。
「倉庫だ! 倉庫に向かえっ! 今はそっちを優先する」
この場は、私怨よりも目的を優先。
そう判断したイラは、部下に命令を下す。
いずれにせよ、奴らもパームカンパニーの倉庫街に向かうはずだ。
「……ぬごぐぬ……がーーーっ!!!!」
倉庫街にたどり着いたイラの目に入ってきたのは、扉を開け放たれ荒らされた倉庫の数々、そして一箇所に固められ、両手足を拘束された警備兵だった。
そして――、
ヌーロンを保管していた倉庫の中を見て、イラは声にもならない声を上げた。
周囲を探させても、奴らの姿はない。
他にも仲間がいるということだ。
薄々勘づいてはいたが、社屋で起こった全ての事はブラフ。
今さらながらに、まんまと嵌められた痛恨と決められた事案に泥を塗った重責とで、イラは一瞬半狂乱に陥る。
そのとき――、
「支部長閣下! 港湾局に向かった者から、埠頭にて、予定にない我が社の輸送船が停泊しているとの連絡が!」
まだ間に合う!
船まで盗まれていることを顧みることなく、イラの頭に最初に浮かんだのは天啓のようなその一言だった。
「直ちに港湾局に事情を説明して出港を止めさせろ! 我々は埠頭へ向かうぞ」
正気を取り戻したイラは、号令すると、急ぎ車両に乗り込む。
「ここを襲った奴らは船でおかっぱ頭たちを待っている……くかかっ」
ひとりごち、異様な笑声を上げるイラに部下たちの困惑の視線が集まる。
「これは奴らを一網打尽にする好機と捉えよっ! 出せっ!」




