港街ライオット3
「ミュウちゃん、しっかりね!」
「俺たちが付いてるぞ、負けんじゃねーぞ!」
声援が多すぎて、全部は拾いきれない。
警備の人たちと人波をかき分けながら、頭を下げたり、一人ひとりにお礼を言ったりしている間に、もう他の人たちの言葉が投げかけられて、私は軽くパニックに陥ってしまう。
「あうーっ、ハアハア。ミュウ様! 我らが反逆の女神!」
中には、拡大した私の写真をハートマークで飾ったパネルを掲げている少し変わった人たちもいる。
「あ、ありがとうございます。ありがとうございます」
「はうーっ! 御馳走さまです!」
こんなに大勢の人に注目されるのは最初は怖かった。
でも、今はこんな状況を有難く思っている。
十七年経ってようやく私たち家族がこの街に受け入れてもらえたとバイスさんに言ったら、
『おいおい、あんまり勘違いすんなよ。この騒動は俺たちが意図的に煽った結果だ。こういうのは終わったら潮が引くみたいに静かになるもんだからな』
と、窘められた。
それでも、差別されていたニーム人に同情してくれる人がこんなにもいたというのは、バイスさんたちでも予想外だったみたいだ。
「お母さん……」
お母さんは、政府の人や、この街を信用していなかった。だから、子どもである私も自分の殻に閉じこもって、なるべく周囲に期待しない癖が付いていたのだ。
でも、誰もお母さんを責められない。
ニーム人が差別されていたのは、この街で実際にあった揺るがない歴史の一部なのだから……。
「ラダ……」
弟が心配だ。
あの子は強がってるけど、まだ、十歳なのだ。
なのに、お父さんと同じ状況に……。
でも、バイスさんたちが大丈夫と言ったのだから、きっと大丈夫なのだと思いたい。
「お父さん……」
生きてるのか、それとも……。
ラダが捕まったのもそれを探るためなのだ。
「もし、生きてるならラダを守ってください」
ようやく人波が終わり、開けた場所に辿り着く。
正面にはパームカンパニーのオフィスビル。
ここで演説をするのが私の最後の仕事だ。
「大丈夫。軍人たちもパームカンパニーを嫌ってるからな。何もしてこないさ」
武装した軍人さんたちを見ていた私を心配してくれたのだろう、ルマンさんの所の警備の人が優しく声をかけてくれる。
「はい! みなさんご苦労様です!」
軍人さんたちにもお辞儀をしてから、私はバイスさんに渡されていた拡声器を両手で持ち、前に突き出した。
『いいか、口に近づけるんじゃねーぞ。力いっぱい握ってこう持つんだ。この角度でな。こいつは音を拾い過ぎるからこうした方がいいんだ。あとはこいつを引いてから、言いたいことを言やーいい』
私は言われた通りの角度に拡声器を向け、引き金みたいなものを引いて、叫んだ。
「私の家族を返してーーー!!」
次の瞬間、目の前が真っ白になった。




