港街ライオット
背格好からして、眼前に連れてこられたのは、まだ年端のいかない少年だ。
どこか誇らしげな部下の間抜け面を一瞥し、イラは腰に下げている短銃を抜いてから、袋を被せられた少年を見下ろす。
「おい、貴様。これはなんだ?」
「はっ! 例の一味の一人かと」
確かこの兵士は勤続三年か四年目だ。
まだ新人に毛が生えた程度の存在に過ぎないが、栄えあるパームカンパニーの団員が、国境分断壁を破った賊と子どもとを見間違えるなんてあってはならない。
イラは、銃口を定めトリガーを引いた。
湿っぽく冷たい地下室に乾いた音が響き、硝煙の臭いがイラの鼻腔をくすぐる。
「こんな子どもがニームからの逃亡者なわけがない。そんなこともも見抜けない愚か者はこのパームカンパニーには必要ないのお」
突然の出来事に身を固くしていた団員たちが、イラの言葉にびくっと震える。
「この愚か者はニーム人によって殺されたということにしろ。よいな?」
「「「はっ!!」」」
団員たちは軍靴の踵を合わせ敬礼する。
「では、次は愚かな失態を見ずに済むよう期待する。行け!」
イラの命令で、死体を運ぶ者以外は、片足を後ろに下げ、一糸乱れず後ろを向くと、そのまま歩調を揃えて退室して行った。
二人の兵士が、それぞれ死体の頭と足を持って、その後に続いた。
「さて……」
イラは少年に被せられている亜麻袋を取り、その顔を見た。
「つまらぬのお」
少年の瞳に宿っているのは怒りや敵意ではなく恐怖。見ると、ズボンを濡らし、その雫が床を染めている。
「お前のような気概のない子どもはいたぶりがいに欠ける」
自分に向けられた殺意が大きければ大きいほど、相手としては面白い。
これは長く戦場で暮らしてきたイラの一種の嗜好のようなものではあるが、決してそこに性的興奮を感じるわけではない。
勝者と敗者、強者と弱者、生者と死者をはっきりさせたいという願望。
多寡はあっても、優秀な兵士ほどこの原始的な欲求を持っていると、イラは確信している。
故に、予め戦意を喪失している者にはあまり興味が湧かない。
しかし――
「が、ニーム人であるならば話は別だ」
イラは子どもに「付いてこい」と言うと、冷たい地下室の奥へと足を進める。
その先にある、鉄扉の向こう側を知る者はイラとごくわずかな団員しかいない。
「さっさと来い。その身でニームの罪を贖うがいい」




