餌撒き
「ぼ、ボスっ、大変です! パームの兵隊にラダが攫われちまった……」
「どうしてラダがっ!? 」
突然、飛び込んできたハゲの報告に、ルマンが親指の爪を噛む。
「ら、ラダが……弟が……そんな」
「大丈夫だよ……あんたの弟は私が必ず助け出すから。大丈夫」
震えるミュウをルマンが抱きしめる。
そういえば、こいつらにはまだ言ってなかったか。
「おい、それなら問題ねーぞ。リーの野郎がラダを見張ってるからな。ちなみにパームカンパニーにあいつがニーム人だってバラしたのは、俺だ」
「「「えっ!?」」」
仲良く三人で同じリアクションをしてくる。
「お前みんなに伝えてなかったのか?」
「……忘れてた」
ウィンが呆れたように肩を竦める。
「ラダなら大丈夫だよ。パームカンパニーがニーム人をどこに攫っていくのかを確かめるための陽動だよ」
「そーすりゃ、お前の父ちゃんの居場所がわかるかもしれねーだろ?」
「あっ……」
俺たちの意図を聞いても、ミュウは不安気に肩を震わせている。
「そ、それにしたって、なんで一番幼いラダをっ! お前たちが捕まればいいじゃねーか!」
「言っただろ、俺たちはワケありだから別のところに引き渡される可能性があんだよ」
ルマンは納得してないのか、頭を掻きむしり唸り声を上げる。
一応空気を読んで、別に攫われるのはミュウでも良かった、とは口にしないでおいた。
どうせ、良心があるこいつには理解出来ないだろう。
「ミュウちゃん……事前に伝えなかったのは僕らのミスだ。許してほしい。でもね、ラダなら絶対に大丈夫だよ」
ウィンの言葉にミュウが顔を上げる。
「なにせ、最強の御守りが付いてるからね」
「あの変人が最強だって……?」
「リーの野郎なら下手したら一人であいつらやっちまうかもしんねーぞ」
目を丸くするルマン。そして、ミュウの不安が少し和らいだのを見てとり、俺は立ち上がる。
「っしゃっ! じゃあそろそろ俺たちもやるか」
「そうだ、ルマン。これを渡しておくよ」
「な、なんだい、これ?」
「これはヴィシュラフォン。ニームではみんな持ってる通信機器だよ。まあ言うなれば小型の電話だね」
ウィンがヴィシュラフォンの使い方をルマンに教えている間、俺はバックパックの中から必要なものを取り出す。
「ミュウ。お前の最後の仕事だ。タイミング間違えんじゃねーぞ」
「は、はい、わかりました!」
俺が手渡したものを受け取りながら、ミュウは勢いよく返事をした。




