盗みはおまかせ
「ほい、ミュウ。これだけあれば足りんだろ?」
「はい! 十分です。ありがとうございます。こんなにお世話になってしまって……。いつかこのご恩はお返ししますので」
「いいってことよ、私がニーム人に世話になった話はしただろ? これは私の恩返しなんだから、あんたが気に病む必要なんてこれっぽちもないんだ」
「ルマンさん……ありがとうございます」
「と、ところで、あんたたちは何してんだよ?」
ミュウに生活物資を届けて、これ見よがしに恩返しをしているルマンを、俺は布団に寝っ転がって煙草を吸いながら眺める。そして、ウィンはエプロンを着けて鼻歌混じりに部屋の掃除をしている。
「お前が幼気な少女を恩返しという名の鎖で縛ってる所を見てんだよ」
「ッ!? な、なに言ってんだ! 私は本気でニーム人に恩を返したいだけだ!」
「いーや、腹黒いお前はミュウの性格も読んだ上で、今のうちに恩を返すってことを教え込んで、いつか自分の手駒にしようと企んでるに違いない。俺にはわかる」
「……どこまでひねくれてんだよ、あんた」
「まあ、俺はお前のそんな所も嫌いじゃないぜ」
「き、気持ち悪いこと言うなっ! 殺すぞ!」
俺のウィンクに辛辣な言葉を吐くルマン。
相変わらずこいつは照れ屋だ。まったく。
「で、お前に頼んでた例の件は上手くやれんのか?」
「その格好でよく私にそんな口が利けるな……なんか、あんたとの取り引きを反故にしたい気分だよ」
艶のある銅色の髪をかき上げながらルマンが、パンツ一丁で寝転がる俺を蔑むように見下してくる。
「まあ、仕事に関しては心配しなくていいよ。半端な奴らは手を引かせたから、出来る奴しかこのヤマには関わらない。まあ、私らに盗めないもんなんてこの世にないね」
「……俺の心は今一歩の所で盗み損ねたけどな」
「そもそも、盗もうなんてしちゃいないっ! そっちが襲ってきたんだろうがっ~~」
歯ぎしりしながら怒りを露わにするルマン。
ちっ、素直じゃねーけど、怒った姿はやっぱり美人だ。
「さてと、掃除も終わったし、お昼は何にしようかな~。ルマンも食べてくかい?」
「え、あー、うーんどうしよっかな……ってか! これがこれからパームカンパニーを壊滅させようとしてる奴らかよっ!」
ルマンのツッコみの意味が良くわからず、俺とウィンは顔を見合わせる。
「僕たちは大体いつもこんな感じだよ」
「そうそう」
「いや、もっとこう、大仕事の前に緊張したり、もう一度作戦を擦り合わせたり、そういうのあんだろっ!」
はぁー、世話の焼ける女だ……何もわかっちゃいねーなー。
「馬鹿かてめえ。そんな心配今してたら今が無駄になんだろーが。まったくてめえはー。そういうとこだぞっ!」
「あっ、ご、ごめん……ってどういうとこだよっ! 私には何の落ち度もねーよっ! お前も私に例の件は大丈夫か? とか言ってただろっ! 殺すぞっ!」
すっかり俺たちの玩具になっているルマンを可愛がっていると、ルマンの部下のハゲが血相変えて家に飛び込んできた。




