パームカンパニー支部長
「――などなど、街の住民たちによる我々への抗議活動は枚挙に暇がないほど広がっております。このままですと、いずれ行政も動かざるを得ない事態に陥るかと……」
「支部長閣下! 個人的見解を述べさせていただきますと、背後で何者かが糸を引いてる可能性が高いように思われます! すぐに行動を!」
「落ち着け。もしそれがリネン政府や他国の工作だった場合どうする? 今動けばまんまと奴らの思う壺だぞ」
「例の貨物の事が漏れたのでは? アレを移動させるのが先決だろう」
「まずは情報収取だ。情報が少なすぎる! 」
パームカンパニー支部のオフィスビル。
その会議室で報告を受けた支部長のイラは、喧々諤々の議論を交わす部下たちに向けて咳払いをする。そして、一瞬で静まり返った居並ぶ面々に、鋭い視線投げかけた。
「貴様らは栄えあるパームカンパニーの団員であろうに。その狼狽はなんだ」
淡々と読み上げるように言葉を発するイラに、部下たちは背筋を正す。
「よいか。このリネン国を含め、本部は各国政府に太いパイプを構築しておる。もし、他国がパームカンパニーを相手にするというのなら、もはやそれは我らの手に余る事態である」
「支部長閣下! よろしいでしょうか?」
部下の一人が挙手したのを見て、他の部下たちがばっとそっちを向き、すぐにまた視線を戻し自分たちの上司の様子を窺う。
「――よろしい。述べてみよ」
「はっ! 失礼いたします。今回の騒動が起こる少し前に、国境壁を破壊しこちら側に逃亡して来たニーム人が、現在この街に潜伏している可能性が高いとの情報を覚えておいででしょうか?」
確かにそういう報告を受けた記憶がある。だが、そういう事案はリネン軍の領分であり、かつニームが自国の逃亡者を放っておくはずがないため、捨て置いたのだ。
いくらニームの豚を始末するチャンスとはいえ、政府の犬と揉めてまでするようなことでもない。
イラは肘掛けに義手の方の肘を載せ、頬杖を付いて首肯し、先を促す。
「ここからは個人的な憶測になりますが、もし、そのニーム人がリネン国内のニーム人と通じて、今回の騒動を起こしている、としまし、たら……」
顔が強張ったのが伝わったのか、意見していた部下が言葉を詰まらせた。
「ふむ。豚どもがまだこの国にいるというのは俄かに信じられぬが、その逃亡してきた豚というのは、確かに怪しいのお」
かつて海外に逃げられ、捕らえ損ねた豚の数を思い出しイラは一瞬歯嚙みする。が、これは再びニーム人を狩れるという好機でもある。
「くっくっ。ニームの豚がわざわざ自分たちから殺されに来てるのならば、歓迎してやらんわけにはいかんのう。よし、すぐにそいつらを探し出して、ここに連れてこい。軍人やニームに先を越されるな! よいな?」
部下たちは一斉に立ち上がり敬礼するのを見て、イラは満足そうに頷いた。




