ホテルまでの間に
ガキ二人を連れて、俺は宿に向かう。
「あれ? っかしーな。さっきここを曲がったよな」
「あの~よかったらその地図見せてもらってもいいですか?」
ガールズパブのねーちゃんが書いた簡単な地図を頼りに俺は宿を目指していたのだが、肝心の現在地がずれてしまったことで、同じ所を一周してしまった。
それを見かねたミュウが俺から地図を受け取ると、すぐに地図を返してきた。
「あ、このホテルならわかります。私に付いてきてください」
「へっ、だっせー」
奢ってやるなんて格好を付けたくせに、少女に先導される俺を見て、その弟が嘲るように鼻で笑う。
「おっさんさー、都会は初めてなんだろ? 俺ぐらいになりゃ見たらわかるよ」
「おう、そうだなこんな自由に人が行き来してる街を普通に歩くのは初めてだな」
挑発に乗ってこない俺に少し気勢を殺がれたのか、つまらなさそうに石を蹴る弟。
「で、おっさん、あんたどこの人なんだよ?」
「ニームだ。だから、てめえのねーちゃんは俺に頼ってきてんだよ」
「に、ニームだぁー!?」
弟は自分の出した声に驚いたように口に手をやり、周囲を伺ってから声を下げる。
「マジで言ってんのかよ?」
「ああ、マジで言ってる」
「いつ、どうやって、なんで、ここに来たんだよ?」
「おい、ガキ。二度と言わねえから良く聞けよ。次に俺のことをあれこれ聞いたら、てめえの父ちゃんを探す件からは下りるからな」
「ラダっ! バイスさんに変なこと言ったら許さないからね。お願いだから今日は大人しくして」
根掘り葉掘り質問してきた弟は、姉にそう言われると、見る影もなく大人しくなった。
「あ、バイスさん。着きましたよ。あそこです」
ミュウが指さしたのは、周囲にヤシの木が植えてある港街らしい雰囲気の白塗りのホテルだった。
「へー、おっさん。良い所に泊ってんだな」
弟が小走りで俺の横にやって来る。
やっぱりガキだな。金の匂いに敏感なのを隠せていない。
なんて考えていると、前方から色々と高そうな女を連れた男がやって来るのが見えた。
「ん? おおっ、バイスじゃないか!」
ウィンだった。
「この人はルラさん。色々とこの街をガイドして貰ってたんだ。ルラさん、こっちが僕のパートナーのバイスです」
「初めまして、バイスさん。よろしくね」
ルラというその女は極上だった。
スラッとしているくせに出る所は出ていて、顔も良い。何よりも着ている服からして、金持ちなのがわかる。
「それじゃ、私はここで。ウィン、また連絡待ってるわ」
「ええ……名残惜しいですが。またいずれ」
固まっている俺の脇をその女が歩いて行くとき、嗅いだことのないいい匂いがした。
「おい、ウィン……てめえどういうつもりだ……」
「な、なんだよ。どういうつもりって?」
「あんなキレイなねーちゃん侍らして、お気楽に観光か? あ? 有益な情報とやらはどーした? この嘘吐き野郎!」
「ば、馬鹿、違う!」
余りの怒りに思わず身構える俺に、ウィンは両手を前に突き出す。
「お、落ち着けって! 後でちゃんと説明するから……それよりも、そこの子どもたちは?」
頭に血が上っていた俺はウィンの質問で我に返り、唖然としているミュウとラダを見て……ものすごく惨めな気分になる。
かたや超ハイクラス美女と港街を観光、かたや貧乏姉弟の御守り。
神様なんて絶対にいねえ! いたとしても、しみったれのドケチに違いねえ!
「ちっ! クソったれが……あー、こいつらは、俺たちの最初の客だ」
俺は悔し紛れに不適に笑い、
「丁重に扱えよなっ!」
と声高に言った。




