報酬はいかほどで?
「ぱ、わ、私のパンツでどうですか!」
前のめりに声を荒げ、顔を真っ赤にするミュウ。
「……お前……まずそれが頭に浮かんだのか……」
俺は初めてこの憐れな少女に同情してしまった。
「いいか、ミュウ。お前のパンツには1リベット、いや1リーネの価値もねえ。むしろお前が使った分だけ価値は下がってるからな」
「そ、そんな……でも前に私のパンツを欲しがったおじさんはいくらでも出すからと……」
この街の変態たちは、下手したら俺よりも業が深そうだ。
「……もういい。とにかく、二度と自分のパンツに価値があるなんて思うんじゃねえぞ。わかったか!」
「は、はいっ!!」
思わず声を荒げてしまい、ミュウが背筋をぴんっと伸ばす。
「ま、まあ。わかればいい、わかれば」
いったい俺は何をしてるのだろうか……。
もう放っておいて宿に行こうか考えていると、玄関から人が入って来る音が聞こえてくる。
「あ、弟が帰って来たみたいです」
入って来たのはミュウと同じ髪色をした少年……そして入って来るなり、俺を睨みつける。
「姉ちゃん、こいつ何?」
「この人はお父さんを探してくれるの。バイスさん、弟のラダです。ほら、ちゃんと挨拶しなさい」
「おい、まだやるって決まってねーぞ……ちっ、おう、よろしくなガキ」
「あん? おい、おっさん。姉ちゃんのパンツ目当てに近づいてんならただじゃおかねえぞ?」
先走るミュウの真摯な瞳に不覚にも気圧されてしまい、一応、弟に挨拶してやると、とんでもない疑いをかけられる。
どうやら、この街でのミュウのパンツ需要は俺の想像を超えているらしい。
「おい、クソガキ、よく聞けよ。俺はしょんべん臭せえパンツなんか――いや、そもそもパンツなんか欲しがらねえ。あと、俺はおっさんじゃねーぞ」
「へんっ、おっさんはみんなそう言うんだよ、おっさん!」
このクソガキ~。
「わかったらとっとと出てふげっ!」
「謝りなさいっ! バイスさん、本当にすみません。弟は躾がなってなくて……ほら、早くっ!」
ミュウにげんこつを喰らった弟は、物凄く不本意そうに悪かったなとぼそっと言うと、大した額ではないが、ポケットから何枚かのリーネ紙幣を取り出してミュウに手渡した。
「……今日の稼ぎだよ。親方ってばすっかり俺が気に入ったみたいで、また給料上げてくれたよ」
「そう……今日もお疲れ様。お腹減ってるでしょ? バイスさんとお話が終わったら夕食にするからちょっと待ってなさい」
まだ十かそこそこのくせにいっぱしを気取る弟の態度や口調、そしてそのやり取りを見て、俺はピンときた。
このガキはあの金をまっとうに稼いじゃいない。
「おい、お前ら、今日は俺が飯を奢ってやる! 父ちゃんの話は飯を食いながらしようじゃねーか、な?」




