ミュウは語る2
「――父が連れて行かれてから、母は政府に何度も訴えに行きました。でも、ニーム人というだけで相手にされなかったんです……休戦したとはいえ、ここではニーム人への反感はまだ残っていたので」
「で、お前の父ちゃんは何で兵隊に連れて行かれたんだ?」
「ニーム人だからです」
ミュウは俺の目を真っすぐに見据えて、はっきりと答える。
「傭兵団パームカンパニーは、反ニームであることを公に口にしています」
パームカンパニーっていうと、酒場のおばちゃんが言ってた奴らか。
「そのパームカンパニーがお前の父ちゃんを連れていったってのは間違いねえのか?」
「はい。父が連れ去られた頃、パームカンパニーはニーム狩りと称して、ニーム人を誘拐していたと聞きます」
「なるほどな。それでお前の母ちゃんは?」
「……母は一昨年……肺病で救世主様の下に召されました……」
「……そっか」
「母は最期まで父の捜索を諦めませんでした。何度追い返されても諦めずに政府に訴えに行って……街に張り紙をして捕まったことも」
それでこいつらは、ここらでニーム人だと認識されてるってことだな。
「んで、お前は俺にどうして欲しいんだ?」
「父を……お願いします! どうか、父を助けてください」
「生きてるかどうかもわからない人間をか? ――断る」
「えっ! そ、そんな……」
俺の即断に驚いたのか、断られたこと自体に驚いたのか、ミュウは世界が終わったみたいな顔をする。
「まず、俺はわけあって出来れば目立ちたくねえ。次にお前の父ちゃんが生きてるって保証がねえ。最後に、俺にはお前を助ける義理がねえ」
「ど、同郷人じゃないですか……母はいつも困ったら同じニーム人を頼りなさいって言ってたのに……」
諦めたように俯き、誰にともなくミュウは言う。
何だかんだでやっぱり子どもだ。その言葉には少しすねた響きがある。
「ま、だが……」
俺は、すっかり冷めた薄い茶を飲み干す。
「こう見えて俺は商売人を志してる。つまり金か労力に見合うものさえ貰えりゃ、多少は無理してでもクライアントの期待に応えるのも吝かじゃねえ」
俯いていたミュウが、ぱっと顔を上げる。
「で、お前の父ちゃんを助けたら、俺にどんな対価をくれるんだ?」




