少女に手を引かれて
少女に手を引かれ、知らない街の裏通りを足早に移動する。
「嬢ちゃん、情熱的なのは望むところだけどな、そんな焦らなくてもいいんじゃねえか?」
「あ、すいません……速かったですよね」
冗談に気づかないところは、いかにも子どもらしい。
「こうやって手なんか握りしめられたら男なら勘違いしちまうぜ」
「えっ? あっ! 痛かったですか……すいません」
はっとなって少女は、俺の手を放し、立ち止まる。
「あなたが、なんだか逃げちゃいそうだったので……」
どうやらこのガキは相当初心だが、勘はいいらしい。
服装からして学生には見えないが、手を握った感じ、かなり苦労をしているのがわかる。
「もうここまで来たら逃げねえよ。それよか、嬢ちゃん名前は?」
「あっ、し、失礼しました。私はミュウといいます」
慌てた様子で足を止め振り向いたミュウが、深くお辞儀をして名乗る。藍色の髪と灰色の瞳。生粋のニーム人に多い特徴だ。
「なるほどね。嬢ちゃんもニーム出身ってわけか」
「あ、いえ、私は生まれも育ちもこの街なんですが、両親がニーム人なんです」
そういうことか。
「で、どうして俺がニーム人だってわかった?」
「え、それはすごく分かりやすいというか……あなたがさっきのお店で話しているとき訛っていたので」
服を変えてからは、街を歩いていても視線を感じることがなかったのに、この子はすぐに俺がニーム人だと見抜いたのがずっと気になっていたのだが……そういうことだったのか。
確かに、世界共通語は、国によって多少の差があるというのは聞いていた。
俺たちは外国まで行ったことは何度もあるが、行き先のほとんど戦場だった。まれに暗殺目的で街に入ることもあるが、任務以外のことをする時間なんてなかったし、敵や現地人と会話を交わすこともなかったから、そういうことに疎い。
「そうか。俺の話し方ってそんなに変?」
「あ、いえ。私は両親がニーム人なのでわかるんだと思います。この街には他にニーム人はいませんから、訛りを知らない人にはちょっと変わってるぐらいにしか聞こえないと思いますよ」
なるほど。話し方に関しては、そこまで警戒する必要はないかもしれないが、一応ウィンには報告しておこう。
「そうか、ならいい。んでもって、俺はバイスってんだ、よろしくなミュウ」
俺が差し出した手を今度は遠慮がちに握ってきたミュウの手は、やはりマメが多くかさかさしていた。




