ナンパという名の儀式
ピマ中心街を歩く二人組がいる。
一人は癖のある黒髪を後ろに流し、身に着けているジャケットやアクセサリーは、目立たないが見るものが見れば高級品だとわかる類のものばかりだ。
もう片方の男は、短く刈り込んだ金髪と右上腕に施された刺青から一見粗暴に見えるが、洗練されたカジュアルなファッションと整った容貌に目を移せば、ファッションモデルのように見える。
「今日の注文はどうやらかなりのヒュ~イらしい」
ショウウィンドウに映った自分を点検しながらジャケットの男が言う。
「まあ、ブスだろうがヒュ~イだろうが一緒っしょ。どっちみちフラれなけりゃなんだから」
吐き捨てるようにそう言って、モデル風の男は道に唾を吐く。
「全力で口説いて、全力でフラれる。これで何回目だっけ?」
「ちょうど百人目な。まあ、楽で報酬は上々。出費は俺たちのプライドだけなんだから美味しい仕事っしょ」
「間違いない」
ジャケットの男は同意すると同時に歩き出す。
今回のターゲットの特徴は、長い銅色の髪、高身長、フード付きのパーカーを着用した、二十四、五の女。
人口の多いここピマで、たったこれだけの情報を頼りに人を探すのは難しい。だが、極上の美人だという情報が加わればかなり絞れる。
幸い、小一時間前に目撃された場所もわかっている。後は、周辺を散策していれば――
「おい、あれだろ?」
「ああ、あれだな」
二人の視線の先には、レストランのテラスで肘を付いている銅色の髪の女。
見た目は情報通りだ。
「「ヒュ~イッ!」」
二人は同時に感嘆の声を上げる。
ピマの若者の間で流行っている隠語のようなもので、意味は「とにかくすごい」だ。
「あの感じだと、お前が行った方がいいんじゃね?」
ジャケットの男は、女の雰囲気から全力で口説くならばモデル風の方が良いと判断。
いつも二人で行動しているのは、より相手の好みに合わせようとする配慮だ。
「まあ、さくっとフラれてくるわ」
そう言ってモデル風の男はレストランへと入って行った。が、すぐに出て来た。
「おい! なんか子供連れだぞ」
「なんだそれ? 聞いてないって」
二人はレストランを通り過ぎる振りをしながら、店内を窺う。
テラスに座る美女の正面、店内側に確かに少女がいる。
「なんか、めっちゃ食ってね? あの子供……」
「いや、あれちっこい女じゃね? ……なんか顔が出来上がってるっしょ」
情報にない美女の連れを観察しながら、男たちは囁き合う。
「子連れじゃないなら、二対二だろここは。それが全力っしょ」
「しゃーない、俺も行くわ」
ジャケットの男は、ブレスレットをカチャっと鳴らしながら、髪を後ろに撫で付ける。
そして、二人はレストランへと入った。




