43話 open the door
「……さてと」
珍しく喧しかった昼休みから時は流れ放課後。
俺は前に九条さんと話した公園にいる。
まあ、昼休みと午後の授業の間、クラスの一部の視線が痛かったな。斉藤が突撃してきて俺も色々とはっちゃけた……わけではないが、それなりに騒がしくしてしまいムダに目立ってしまった。基本大人しいというかほぼほぼ口を開かない人物がこうもうるさかったら、そりゃ見られるよなって話だ。妙に居心地悪かった。好機の視線に晒されるの慣れてないんだよ。
『私としては面白かったけどね。アハハ』
レーヴェの昼休みの感想はこの一言だった。そして、めちゃくちゃ笑ってた。夢の中でレーヴェの表情見れたらそれはいい笑顔だろうな。
でしょうね。レーヴェは基本的にSな性格だから。レーヴェからしたら、困る俺の様子を眺めては愉悦でも感じているのだろう。楽しそうでしたね。良い性格しているよ、ホントに。
で、俺がこんな人気のない公園で何をしているのかと言うと、単純に人がいない場所へ行きたかっただけだ。独り言を呟いていても誰にも聞かれないように。放課後だってのに子ども1人もいないとはこの公園マジで寂れてるな……。俺としてはありがたいけど。
「アイツをどうやって探すかだな……」
レーヴェと話し合いたかったのだ。ナザリがどこへ逃げたか、居場所を突き止めることが目的だ。本来なら学校は行かずに街をひたすら歩き回った方がいいのかもしれないが、俺は学生。この立場上、当然自由に動けない。奏さんたちに迷惑かけることになるし。
だから、フリーな時間帯にこうやって動くことにした。ナザリは人に危害を加えるつもりはないと言っていたが、そんなの信用できないというか、絶対じゃない。早めに探し当てないと何が起こるか分かったもんじゃない。
「魔力の反応は追えないんだな?」
『そうだね。アイツは隠れるのがかなり上手い。さすがに近くまで行けばそりゃ分かるが、こんなにも離れていると魔力を追うのは厳しい。何か一発どでかい魔力行使でもあればいいんだが』
そうなるよな。簡単に探し出せたら苦労しないか。こっちの動きは補足されている可能性はあるし……相変わらず後手後手だな。
「じゃあ、俺が魔力を使うってのは? 撒き餌みたいな感じで」
『だとしても、あっちがノッてくるのか微妙だね。アイツは今、回復に努めているはずだ。……あの君を傷付けた力は不明だが、あれは魔力を通じて放たれたように思える。要するに魔力を中継してあの謎の攻撃に変換し、夢幻を突破してきたということ』
「なるほど」
レーヴェの説明で何となくのイメージはつく。
『それで、あの力は1回行使するだけでかなりの魔力を使ったように感じた。だからしばらくは動かないと予想するよ。もちろん、断言はできないけどね』
「そうか。……なら、どのくらいで回復すると思う?」
『アイツの魔力のキャパは分からないが、最低でも5日は猶予があるかな。私にバレない程度にコソコソと魔力を貰ったらの話だが。もし誰かに後遺症が出るレベルで魔力を奪ったらすぐにでも復活するが……アイツの性格からして』
その線は薄いか。
「もし誰かと契約したら?」
『だとしても魔力を取りすぎたら、わざわざ契約したのに契約した人が死ぬっていう本末転倒な気がするからねぇ。もしそうなったら契約での縛り上、こちらに不利益を被る形になるかもしれない。だから、私としては誰かと契約してもペースはあまり変わらない……と思うが。もちろんこれも――――』
「断言はできない……か」
……ダメだな、前途多難すぎる。前のロードのときも感じたが、証拠とか情報が足りなさすぎる。どう動けばいいか分からないし、向こうがどう動くかが分からない。
最初の案として思い付いた歩き回って探す……という考えにも、そもそも天生市は広いからな。個人の足では限界がある。どうするかね……。
よし、とりあえず昨日ナザリがいた住宅街へ移動しよう。人気のない場所で身を隠すにはうってつけだが、わざわざ律儀に同じ場所に戻っている可能性は普通に考えれば低いよな。何か手がかりでもあればいいか。暗くなる前に回ってみよう。
「そういや、今さらだけどレーヴェってさ、いくら日本語学んだとか言っても普通に流暢だよな」
『おや、本当に今さらだね?』
移動中、雑談がてらに話しかける。もちろん、周りに人がいないときに。いざとなったら、携帯を耳に当てて話すのもアリかもしれないな。
レーヴェの顔が見れたら、俺の一言に意外そうに目を丸くしているだろう。この話題は前にもしたことあるけど、改めてそう思う。
「いやだって、ノッてくるとかキャパとかあまり俺が言わないような単語も使ってるし。どこでそんなに覚えたのかなって」
『ふむ、そう言われるとそうなのかもしれないね。まあ、凪ちゃんや君の友だちが使っているのを真似てるだけさ。意味は理解できるからね。あとは……勉強がてら君が読んでいる本を君の視界を通じて私も読んだりしてしたこともあったよ』
お、それは初耳。
「え、そうなんだ。どう? 面白かった本とかあった?」
『まあね。さすがに全部というわけではないが、私なりに楽しんで読んでいたさ。うーん、そうだね……動物の骨が大好きな女性に振り回される男の子の小説は読んでいてかなり面白かったね』
「ああ……あれか。確かに面白かったなぁ」
奏さんお気に入りのシリーズだな。タイトルが衝撃的だったのが覚えている。
俺も何回も読ませてもらった。あれは文庫本で、基本ラノベしか読まない凪も好きな話だったな。どうやらアニメ化やドラマ化もしていたらしいが、俺は特に触れてないかな。小説で満足する人種なので。逆に凪はアニメを見てから原作に興味を持ったと。
『今度君のオススメでも教えておくれ。君と一緒に読むことにしよう』
「おう。それはまたいずれな」
『また都合のいいときにね。……お、着いたか』
――――と、昨日ナザリと遭遇した路地裏に戻ってきた。
やはり街中と比べるとけっこう薄暗く、人影もこの時間だと全然見当たらない。軽く廃墟だな。
「どうだ? ナザリの魔力の反応はあるか?」
『……いや、残念ながらアイツはここにはいないね。ないこど……これは? とりあえず何か探してみようか』
やっばりそう上手くはいかないか。にしても、レーヴェの反応が少しばかし微妙だったが、どうしたんだ? 何かあるの?
というより、今さらだがそれこそナザリがいたら話早かったな。リベンジというか、早く仕留めにかかりたかったが。回復する前にこちらから仕掛けることができたのに。
愚痴は置いといて、辺りを見渡す。特にこれといって目立つ物は見当たらない。
……ん? なんか地面や壁に黒い染みがあるがこれは……? あ、あれだ、俺の血か。昨日やられたときの。飛び散ったか……。これ知らない人に見られたら面倒だな。いや、こんな怪しい路地裏にわざわざ来る人とかいないか。いたとして、いわゆる不良と言うべき人くらいかな。……はっ、もしかして俺は不良だったのか…!?
……独りでボケても楽しくないな。普段は鬼塚とかが突っ込んでくれるけど。
俺の血を除けば、他にはせいぜい空き缶などのゴミしか落ちてない。何か収穫あれば良かったんだがな。
『……葵』
「ん? どうした?」
「隣の廃ビルに一旦移動してくれ」
「? ……分かった」
イマイチ要領が掴めないままレーヴェの支持通り動くことにする。何かその廃ビルにあるのか?
路地裏から出て廃ビルの入り口に行く。シャッターはかなりボロボロでところどころ錆のせいで穴が空いている。普通に人が通れるくらいの大きさだ。俺も余裕で通れるので廃ビルに入る。
「…………」
入ってから最初に耳を澄ませる。……足音は特にしない。この廃ビルの中にいる人はどうやらいなさそうだ。レーヴェも特に何も言わないから大丈夫だろう。
それにしても……。
「暗いな」
建物内の電気系統は当然壊れており、割れている窓から光がほんの少し入ってくる程度の明るさ。元の立地の悪さも災いして、足下をはっきりと見ることさえ難しい。
うーん、なんでこの辺りの地域このまま放置しているんだろう。ビルを解体するのにもお金がかなり必要と聞くけど、ちゃんと改築でもすればまた人呼び込めるかもしれないのにな。再開発都市! みたいな触れ込みで。……って、なんで俺は天生市側の目線で話しているんだろ。
とりあえず携帯の明かりを使って足下を照らす。うーん、やっぱり暗い。あまり長くここにいたくはないかな。
「レーヴェ、どこに行けばいい? そもそも何があるんだ?」
『あっちの方……何か落ちてないかい? アイツとはまた違う別の魔力の反応がするんだが』
……ナザリと別のロードが潜んでいる? いや、いくら暗いと言っても生物がいるかいないかくらいは分かる。ここにはいない。それにレーヴェは何か落ちてないか聞いてきた。そうすると、生物ではなくあるのは物体。ナザリに繋がる証拠があるのかもしれない。探してみよう。
「んー……」
足下を照らしながら歩く。辺りを注意しながら慎重に歩いているが、特にこれといって珍しい、怪しい物は見当たらない。床がところどころ割れていたり、誰かが捨てたゴミが転がっていたり……本当にその程度。
『葵、それだよ、そこにある』
「え? ……これ?」
レーヴェが指さした……いや、俺の中にいるから指さすも何もないんだが、レーヴェが発見した物体を拾い上げる。
「……ビー玉?」
360度どこから見てもビー玉だ。
それはとても小さく、そしてとても綺麗で、透明なガラス細工のようだ。
ただ、触った感じ、ガラスって感覚はしないんだよな。確かにツルツルはしているんだけど……この感触。何だろう。いや、ガラスっぽいけど、なんか違う。見た目は透明だけど、どことなく金属みたいな触り心地。
金属なのに透明……意味が分からない。いや、別にこれが金属製とかどうかの判別つかないんだけどね。
とはいえだ。このビー玉の正体は置いておいて、ここに落ちている物はとしてはどうにも不釣り合いのうように思える。やっぱりどこからどう見てもビー玉だし……そうたな、せいぜい理由をつけるなら、子どもが遊んいるときに落とした……というイメージしか湧かないが。
「これが?」
本当に? こんな小さい物がロードと関係する物?
『うん、魔力が籠められているね。しかしまあ、さっきも言ったが、アイツとは違う魔力だ』
「それは分かったが――にしても、一体何なんだ、これ? 魔力があるって何かの道具……武器とか?」
『少し時間をちょうだい。解析を進める。そのままそれを持っておいてくれ』
「りょーかい」
解析か。レーヴェってそんなこともできるんだな。意外っちゃ意外かな。ならその間に外に出ておくか。お目当ての物が見付かった以上、ここには長くいたくないな。ぶっちゃけると怖い。まだ外の方が明るいもんで。
「…………」
で、廃ビルの壁に寄りかかりレーヴェの返答を待つ。
『お待たせ』
「……おう。何か分かったか?」
『ああ。さすがに全部解明――――とまではいかなかったが、大まかな概要は理解した』
へぇ。そんな短時間で分かるもんなのか。
「それで、これ何なんだ?」
『――――簡単に言うと、地球とロードの世界を繋ぐ鍵……いや、その表現は微妙に不適切か。2つの世界を繋ぐ扉……かな』
去年と合わせてカーマが宝具レベル3になりました
ただ、高難易度がほんとに難しい……




