●六章-3.方針決定
①小説管理ページを見る。
②あれ? まだ6-1で2は投稿してなかったっけ?
③2を見直す。割と書き直す
④小説管理ページに『>>2』という言葉がある事に気付く
101話から2ページ目なんすネ……w
※前回のあらすじ
・俺たちを一瞬で呪うヤツはヤバいやつ。
-fate アキヒト-
「……シノ君。君はその女性を見ていないのかい?」
「はい。私は異常を察知できませんでした」
自分でも時々何を言っているのか分からなくなるような説明を黙して聞いていたダティアマーカさんは、まずシノへと問いを向けた。
若干申し訳なさそうな表情をするシノだが、彼は納得するような頷きを見せる。
「いや、確認したまでだよ。
27号……ニーナだったね。こいつの機能が働いた事をね」
「それはどういうことで?」
そういえばニーナを預けられた際、色々と言葉を濁していたことを思い出し、問う。
「ニーナには君たちの関係にとってのブレーカーと延長ケーブルの役割を与えている」
ブレーカーに延長ケーブル……電源関係のアレだよな?
「ブレーカーの方はおまけのようなものだけど、元々ニーナがやらかした事による補填だったからね。不意に100メートル以上離れてもニーナを間に置くことで接続距離を延ばす試みを入れたんだ。もちろんニーナから君たちが100メートル以上離れれば機能しないし、気軽に実験する訳にもいかないから過信はできない。だからその事はあえて伝えなかったのだけどね」
半年以上経過したが、未だに100メートル以上離れるとどうなるのか分かっていない。接続が切れたら最後、復旧できない可能性すらあるらしいので、彼の言葉通り安易に検証なんて事もできないままだ。シノには不便を掛けていると思うが、やはり離れない事が最善だ。
「で、今回働いたのはブレーカーの方だ。今回に関してはファイアウォールと言うべきかな。恐らく君に掛けようとした呪いは魂に干渉する物だった。だから『一つの魂』を捕捉するためにシノ君まで影響を及ぼそうとしたが、途中に挟まったニーナがブロックしたわけだ」
随分と昔のことに思えるが、確か掃除部隊の救出作戦の時に聞いた覚えがある。すっかり記憶の彼方だったけど。
「……それなら俺も呪われているということですか?」
「いや、ニーナがその大半を受け持った事により、君に対する呪いは成立前で止まっている。
ニーナも現状は呪われたわけでなく、進行を止めるのに精いっぱいで身体の制御に手が回らないだけだよ」
「じゃあ、なんとかできるんですか?」
とりあえず気付いたら死んでいた、という事は無いということだよな? 少し肩に入った力が抜けた。
しかしそんな俺とは反対に、ダティアマーカさんの表情は険しいままだ。
「……呪いというものは成立に条件が多い分、中途半端な状態でも解除が難しい。館長は毒を例に出していたが、致死量でなくても毒は毒という事だね。
お嬢、これの解呪はできそうかい?」
お嬢と呼ばれた少女は目を細めてニーナの首を纏う文字を見る。
「わしには無理じゃな。そも、解呪なぞしたこともない。
仮に専門家だとしても、やはり難しいと思うぞ」
「……まぁ、そうだろうね。呪術なのに使徒の従属体であるアキヒト君やニーナの耐性をあっさり抜いている。
呪いには特別に強い種だというのに神災級……神器でも持ち込んだか?」
「主人を定めぬとも発動できる神器なぞ、核爆弾のようなものじゃが……
アキヒト。ぬしはその女性の特徴を何一つ知覚できなかったと言ったのぅ?」
「ああ。女の人って事は分かった。でも目の前に確かにいる光景は思い浮かぶのにその女性の姿だけがどうしても、何と言うか、煙で造った像のような、特徴を上手く言えないんだ」
「アキヒトにはシノの権能、観察に特化した力が僅かなりにも備わっておるのじゃったな。
それでその有様というのであれば、神種か亜神種、限定的な性質に特化した妖怪種などを疑うべきじゃろうな」
ティアロットさんが館長に視線を投げる。
「……確かに『たそかれ』を代表として姿が解らないという特性を持つ妖怪種はいくつか思い浮かぶが、シノ君たちに即座に影響を及ぼせるほどの呪いを有した者なら、シュテン殿が野放しにしているとも思えん」
顎鬚をしごきつつ館長が応じる。
音で聞いている分には声音が全く違うので混乱は無いが、これ、文章で書かれたらどっちの発言か分かりにくいだろうなとか考えるのは思考放棄ではない。口を挟むだけの知識が無いだけです。
「シノ君たちを狙ったという事でもあるし、犯人捜しは管理組合に協力を仰ぐべきじゃな。
君たちはまず呪いを解く事を優先しなさい」
「館長に同意するよ。そして恐らくこの呪いは明確な解呪方法を用意する事でそれ以外の手段での解呪を難しくしているようだ」
「それは……やっぱりオアシスまで行かないといけないって事ですか?」
館長の言葉はクロスロードの中で完結することが難しいと断じる物だった。
逃れられないという予感は確かにあったが、改めて認識すると足が竦む。それでも一歩を踏み出せないような自分ではない。そんな安い度胸が付いたことは良い事か悪い事か。
「ふむ。なればわしが同行しよう」
「お嬢が?」
全く予想外の提案に俺ばかりか、ダティアマーカさんも館長も意外そうな顔で少女を見る。
「なんじゃ?」
「いや、ティアロット君から言いだすとは思わなかったからのぅ。
儂から頼もうと思っておったが」
「ユウヤやレイファに合わせる前に死なれたら顔向けができん。
それに……厄介な問題のようじゃからな。少し噛んでおいた方が良いじゃろう」
色々と異名を誇り、いろんな人から一目置かれる彼女の助力は心強い事この上ない。
しかし、と彼女を見た。
「三人乗り……はティアロットさんならいけるか?」
「ああ、移動手段なら気にすることは無い。バイク程度の速度であれば追従できる」
え? とフリルお化けを見る。白くて細い手は良いところのお嬢様としか思えず、とてもではないが時速100キロメートルを優に超すヴェルメと並走できると思えない。もちろん人は見た目に寄らないがこの世界だが。
「アキヒト君? 彼女は飛行魔術で追従すると言っているんだけど、分かっているかい?」
「え? でもヴェルメは時速百キロは越えますよ?
外ならもっと出せるかもしれませんし」
「この間おぬしの世界に行った時に見た、新幹線とやらよりは早かったが?」
「は?」
日本の誇る特急列車には帰省の時にお世話になっているのでその速度も知っている。
……確か時速二百キロ越えてたよな?
「時速百キロを超えられるならばオアシスまで一時間掛からぬ。
ぬしらの権能なら空に食われる心配が限りなく低いから、問題はあるまい」
誰にも観測されないまま空を行くと消える。そんな現象もあったっけか。
確かにシノやヴェルメならば到着まで彼女を見失う事は無いだろう。
「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
「うむ。準備が良いならすぐに向かうとするかの」
準備と言われて色々と思い浮かべるが、先ほど彼女が言った通り何事も無ければ一時間以内に到着する場所だ。
「拠点設営部隊がおるから、仮に一泊することになっても大して問題にはならんじゃろう。
君もティアロット君も管理組合には顔が利くからのぅ」
そう言われると有名人ぽいが……有名というだけなら有名なんだろうなぁ。主にエンジェルウィングスとヴェルメが理由で。
「わかりました」
「問題無いようじゃな。では往こうか」
ふわりと浮かび上がるように椅子から立ち上がった少女は踊るように身を翻し喫茶店から出ていく。
「最悪ニーナの中に呪いは封印します。
無理と思ったら一度戻りなさい」
「なるべくそうならないように頑張ります」
普段うるさいと喧嘩のようなやり取りをしていても、もう家族の一員だ。それが静かなままというのは看過すべきではないだろう。俺はニーナを抱き上げると、二人に頭を下げ、シノを伴ってヴェルメの元へと向かうのだった。




