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第427話 台帳と狼

 ヴェラ・クラウスは優秀な軍人だった。少なくとも、それを疑う者はOCM海外部門にはほとんどいない。兵士としてなら一流どころか化け物に近く、WEREWOLFを纏って前線へ出れば、敵の視線、足運び、発砲間隔、味方の疲労、退路の狭まり方まで肌で読み取り、その場で最善の一手を選べる。部隊指揮でも同じだった。地図の上では同じ戦力でも、兵士の呼吸ひとつで「今なら押せる」「ここは退くべきだ」を判断し、それによって戦闘の勝敗をひっくり返す。だが、新開市で必要とされるものは、戦場の空気を読む力だけではなかった。三日後にどの企業が動くか。一か月後にどの契約が都市規格へ食い込むか。誰が誰と組めば、半年後に新開市という都市そのものの重心がどちらへ傾くか。ヴェラは、そういう盤面を見ることが苦手だった。


 最初に新開市へ来た頃は、レオン・ヴァルケンの指揮下で戦えばよかった。何を目的に、どこまで押し、いつ退くかという大きな判断は上が決めてくれた。大泉晴翔と関係を持つようになってからは、もっと奇妙だった。晴翔が盤面のどこかへ歯車を置き、人間が勝手に回り始めたところへヴェラが投入される。あの男は嫌いだったが、使い勝手はよかった。前線で勝つべき局面だけが、あらかじめ異様なほど自然に用意されていたからだ。そして今、晴翔はいない。代わりに海外部門の上にはオスカー・ラインハルトがいる。オスカーはヴェラほど戦えない。だが、ヴェラが三歩先を見る間に、あの男は盤面の外まで見ている。その事実が気に入らないからといって、無視できるわけでもなかった。


「先行部隊、いつ新開市へ入れます?」


 新開市から離れたOCM海外部門の臨時待機拠点で、部下が訊いた。格納庫にはVX-32 TIGER、VX-30 PANTHER、VX-48 EAGLEが待機し、その奥にはヴェラ専用のWEREWOLFが整備状態で吊られている。戦力は十分だった。


「まだ」


 ヴェラは答えた。


「オスカーの許可待ちですか」


「それもある」


「他には?」


 ヴェラは端末に表示された新開市の企業進出状況を見る。天領機工。JX-01《REGALIA》。日本国系工兵ドローン。アライアンス再建事業。マティアス・ヴァン・ローン。御厨綴。それぞれの名前と契約関係が並んでいるのに、自分の部隊をどこへ差し込めば最も効率よくOCM海外部門の影響力へ繋がるのかが見えない。戦闘なら、こんな苛立ちはなかった。


「理由が足りない」


「入る理由?」


「そう」


「新開市でOCM海外部門の存在感を戻す。それでは?」


「それは目的。理由じゃない」


 部下が黙った。


 ヴェラは椅子へ深くもたれた。


「私は戦争はできる」


「知ってます」


「戦争を始めるのが、下手なのね」


 言ってから、自分で少し笑った。


「珍しいですね」


「何が」


「自分の苦手を認めるの」


「殴るわよ」


「そういうところです」


 ヴェラが睨む。部下はすぐに視線を逸らした。


 だが、間違ってはいなかった。


 そこでヴェラは、御厨綴を思い出した。


     *


 御厨綴は、その日も新開市の記録に埋もれていた。人物だけならまだよかった。犯罪歴、行政処分、警備記録、再犯、社会復帰、所属変更、ヒーロー活動、ヴィラン活動。人間一人の履歴なら、時間をかければ辿れる。しかし企業となると話が変わる。名前が変わる。子会社が増える。合併する。海外法人へ資産を逃がす。昔の契約だけ残り、人だけ入れ替わる。晴翔事件で使われた部品や物流を調べようにも、その下請け、そのまた下請け、その先の保守会社まで辿れば枝は際限なく増えた。


「一人欲しいですねえ」


 御厨が呟いた。


 同行職員が顔を上げる。


「補佐官ですか」


「百人くらい」


「一人じゃないですね」


「そうでした」


 その時、端末へ着信が入った。


 ヴェラ・クラウス。


 御厨は一瞬だけ目を細め、それから柔らかな表情に戻った。


「はい、御厨です」


『仕事の話』


「前回の倉庫についてでしたら、まだ調べていますよ」


『それもいい』


「では?」


『人手、足りないでしょ』


 御厨は机の上の資料を見る。紙と電子記録と企業関係図が、既に机の端を越えそうになっていた。


「よくご存じですねえ」


『見れば分かる』


「何を提供してくださるんです?」


 ヴェラは遠慮しなかった。OCM海外部門が長年蓄積してきた企業間取引、海外法人、軍需契約、装備流通、実質支配関係、下請け系列、元社員、過去の事故報告、係争、債務、取引停止先。公的機関だけでは辿りづらい情報を、合法的に提供可能な範囲で開示するという。


 御厨の目が変わった。


「ずいぶん豪華ですね」


『欲しい?』


「欲しくないと言ったら嘘になります」


『なら条件』


「でしょうねえ」


『OCM海外部門を、あなたの調査事業に参加させて』


 御厨の笑みが少し薄くなる。


「どういう意味で?」


『企業調査。現地確認。危険区域への同行。海外企業との照会。必要なら実働』


「実働とは」


『あなたが調べる。真鍋が捕まえる。私たちは、あなたがそこまで行けるようにする』


「逮捕権はありませんよ」


『知ってる』


「捜査機関でもありません」


『知ってる』


「それでも?」


『私たちは兵士よ。できることをやるだけ』


 御厨はしばらく何も言わなかった。


「一日ください」


『何で』


「あなたを調べます」


 一瞬の沈黙。


 それからヴェラが笑った。


『いいわ』


     *


 翌日、御厨はヴェラ・クラウスについて知ることのできる範囲を一通り洗った。複数国軍歴の噂。OCM海外部門への加入。WEREWOLF。レオン・ヴァルケン指揮下での活動。晴翔との接触。新開市での作戦参加。先日のOCM旧資産保管施設への鍵流出疑惑。本人が語らない部分は多いが、語らないことまで記録には残る。


 ヴェラが再び現れた時、御厨は湯呑みを置いて言った。


「一つ条件があります」


「何」


「あなた自身も記録対象です」


 ヴェラの表情が少し止まる。


「私も?」


「はい」


「協力者なのに」


「協力者だから調査対象から外れる、という方が問題でしょう?」


「私が渡す情報も?」


「出所を記録します」


「私の部隊も?」


「当然です」


 ヴェラは数秒、御厨を見た。それから椅子へ座る。


「公平ね」


「公平でありたいだけですよ」


「違いある?」


「かなり」


 御厨は一枚の契約案を出した。


「それでもよろしければ」


 ヴェラは読む。アライアンスの都市安定化調査における実地協力事業者。限定された区域での護衛・危険排除・企業間照会。独自行動の禁止。収集情報の出所明示。新開市治安機関による司法権の尊重。アライアンスによる資格停止条項。


「これ」


「はい」


「便利ね」


 ヴェラが笑う。


「便利だから、悪用しないでくださいね」


「努力する」


 御厨が顔を上げた。


「その返答、大泉さんみたいですよ」


 ヴェラの顔から笑みが消えた。


「やめて」


「嫌でした?」


「かなり」


「では、もう少し違う返答をお願いします」


「分かった。守る」


「よろしい」


     *


 許可が出てから、ヴェラの動きは早かった。


 早すぎた。


 新開市外で待機していたOCM海外部門の先行部隊が、その日のうちに移動を開始した。VX-32 TIGER。VX-30 PANTHER。VX-48 EAGLE。技術支援班。調査支援班。通信車両。重装備の一部は武装を制限されていたが、どう見ても企業調査員の一団ではない。


 オスカー・ラインハルトへ報告が入ったのは、第一陣が新開市外縁の検査区域へ到着した後だった。


「何機だ」


『先行だけで二十七。航空支援含めると――』


「止めろ」


『現地責任者はヴェラ・クラウスです』


「知っている」


 オスカーは即座に通信を繋いだ。


『ヴェラ』


「何」


『部隊を止めろ』


「なぜ」


『私の許可を取っていない』


「海外部門の現地運用権限内」


『新開市へのまとまった戦力投入は別だ』


「アライアンスの調査協力」


『御厨綴個人の事業への協力だろう』


「アライアンスが承認してる」


『それを免罪符にするな』


 ヴェラは少し笑った。


「免罪符って便利な言葉ね」


『戻せ』


「嫌」


『ヴェラ』


「新開市で日本企業がアライアンスの看板使って増えてる。OCM海外部門だけ外で待ってろって?」


『政治的なタイミングの話をしている』


「だから、そういうの苦手なの」


『自覚があるなら従え』


「だから別の人に見てもらうことにした」


 オスカーが黙った。


『御厨か』


「そう」


『最悪だな』


「何で」


『そのうち分かる』


     *


 オスカーは、その足でアライアンスへ照会を入れた。


「OCM海外部門の新開市進出を、あなた方が要請したのですか」


 氷の母は静かに答えた。


『いいえ』


「では停止を」


『現時点で停止要件を満たしていません』


「重装備部隊です」


『武装制限を受けています』


「指揮官はヴェラ・クラウス」


『承知しています』


「先日、OCM資産を利用した危機演出を試みた疑いがある」


『その件も御厨綴が調査中です』


 オスカーは少しだけ目を細めた。


「つまり、調査対象本人を調査協力者として入れた」


『監督条件付きで』


「危険です」


『可能性はあります』


「なら」


『ですが』


 氷の母は声を変えなかった。


『現時点で、彼女たちは規則に従っています』


「規則に従う危険人物ほど厄介ですよ」


『同意します』


「なら止めてください」


『規則に従っている者を、危険かもしれないという理由だけで排除することはできません』


 オスカーは一瞬、何も言えなかった。


 それは。


 アライアンス。


 らしい。


 そして。


 だから。


 面倒。


『逸脱が確認されれば、資格は即時停止します』


「確認されてからでは遅い場合もある」


『そのために御厨綴を置いています』


 オスカーは通信を切った。


 机の隅。


 サボテン。


 見る。


「最悪だ」


     *


 OCM海外部門が御厨の調査へ加わったことで、今まで止まっていた企業関係の枝が一気に伸び始めた。表向き別会社だった二社が、過去に同じ軍需子会社から資金提供を受けていた。晴翔事件で使われた部品を運んだ物流企業が、数年前にOCM海外部門の下請けをしていた。ある警備企業は現在こそ新開市で市民警備を請け負っているが、過去にはヴィラン向け装備の横流し疑惑を持っていた。表面上は消えた企業名が海外法人として残り、別名義で都市復旧案件へ再参入しようとしている例もあった。


「今まで」


 御厨は巨大化した関係図を見ながら言った。


「人を中心に見ていました」


 ヴェラは椅子へ逆向きに座り、背もたれへ腕を乗せている。


「企業も人間の集まりでしょ」


「それだけではないですね」


「何」


「人は辞めます」


「うん」


「死にます」


「そうね」


「名前も変えます」


「企業も変える」


「でも企業は」


 御厨は一本の線を引いた。


「人より長く、記録を持ちます」


 ある企業の過去の事故。担当者はもういない。社長も代わった。ブランド名も変わった。しかし設備だけは残っている。保守契約も残っている。被害者への補償義務も残る。


「責任って」


 ヴェラ。


「人から企業に逃げる時もある」


「逆もあります」


「企業から人に?」


「はい」


 御厨は楽しそうではなかった。ただ、目だけが鋭くなっていた。


「だから両方残した方がいい」


 記録。


 増える。


 過去。


 現在。


 企業。


 人。


 役割。


 繋がる。


 その中で、一つの大きな名前が浮かび上がる。


 OCM。


 そして。


 オスカー・ラインハルト。


     *


「ここも見るの?」


 ヴェラが訊いた。


「当然です」


「私たちの本社側」


「あなたの海外部門も見ていますよ」


「そうだけど」


「除外します?」


 御厨が穏やかに聞く。


 ヴェラは一瞬だけ黙った。


 オスカー。


 嫌い。


 うるさい。


 政治。


 見る。


 自分。


 止める。


 でも。


 OCM。


 中。


 人。


 でも。


 ある。


「……しない」


「よろしい」


 御厨はオスカーに関する面談要請を送った。


 返答。


 早い。


《拒否》


 御厨。


「あら」


 ヴェラが覗く。


「拒否できるの?」


「できますよ」


「じゃあどうするの」


「記録します」


 御厨は端末へ入力した。


《面談要請に対し、現時点では回答拒否》


 ヴェラ。


「それだけ?」


「それだけです」


「圧力かけない?」


「なぜ」


「拒否したから」


「拒否する権利があります」


 御厨は普通に言った。


「ただ」


 一拍。


「拒否した記録も、残ります」


 ヴェラは御厨を見る。


「あなた」


「何でしょう」


「静かに怖いわね」


「よく言われます」


     *


 御厨の調査項目は、オスカー個人の「罪状」を作るようなものではなかった。榊圭吾をゴースト・ヒーローとして雇用した経緯。NECRO兄弟姉妹に対するOCMの保護・訓練・装備供与責任。海外部門に与えられた実働権限。ヴェラが晴翔と接触していた期間に、オスカーがどこまで報告を受けていたか。新開市内資産の名義。危険技術の取り扱い履歴。情報開示の範囲。どれも単独では犯罪とは限らない。ただし、どこまで知り、何を許し、何を止め、何を止めなかったのかという責任の輪郭を作るには必要だった。


 御厨はそれを一つずつ集めた。


 オスカーは、その様子を別の回線から見ていた。


「彼女は」


 サボテンの鉢を少し回しながら、オスカーが呟く。


 通信相手はアリスだった。


『何』


「嘘をつかない」


『良いじゃん』


「だから危険なんだ」


『何で』


「記録というものは」


 オスカーはサボテンの棘を見る。


「正しければ安全になるわけではない」


 アリスは少し黙った。


『ヴェラ止めてほしいの』


「できれば」


『嫌』


「即答か」


『私、女王辞めようとしてる』


「知っている」


『OCMの内輪揉めまで、王冠で止めない』


「それも正しい」


『じゃあ何』


 オスカーは少し考えた。


「境界の確認だ」


『何の』


「NECROの兄弟姉妹」


 アリスの声が少し変わる。


『そこ』


「そう」


『勝手に触ったら』


 一拍。


『話、別』


 オスカーは僅かに笑った。


「それでいい」


『それだけ?』


「それだけだ」


『サボテンにでも相談しろ』


「している」


『してるんだ……』


     *


 御厨綴の机には、新しい構想書が置かれていた。


《都市責任履歴統合台帳》


 まだ正式名称ではない。


 内容も完成していない。


 目的。


 単純。


 役割を変えても。


 所属を変えても。


 会社を変えても。


 責任が。


 消えない。


 犯罪歴。


 行政処分。


 企業不祥事。


 事故。


 救助失敗。


 契約違反。


 過去発言。


 内部告発。


 再発防止措置。


 その後の改善。


 全部。


 残す。


 同行職員が構想書を読む。


「これ、最終的には信用情報とも連携しますか」


「可能性はあります」


「警備AI」


「可能性は」


「採用」


「将来的には」


「住宅」


「……」


 御厨は少し考える。


「そこは慎重に」


 ヴェラが後ろから覗く。


「繋げれば便利じゃない?」


 御厨が振り向く。


「便利でしょうねえ」


「じゃあ」


「便利と正しいは別ですよ」


「そういうもの?」


「そういうものです」


 御厨は構想書へ注記を加えた。


《記録と制限利用を分離すること》


「今は」


 御厨は言う。


「まず残す」


 ヴェラ。


「後で使う?」


「必要なら」


「あなた、私の後ろ見てくれる人として最高ね」


 御厨が顔を上げる。


「何の話です?」


「あなたが後ろ」


「はい?」


「私が前」


「私はあなたの参謀ではありませんよ」


「似たようなもの」


「違います」


「後方見るでしょ」


「調査です」


「私は前線見る」


「私はあなたを前線へ送る仕事をしていません」


 ヴェラが少し笑う。


「そのうち慣れる」


 御厨も笑った。


「そのうち、という言葉は記録しておきますね」


「本当に怖いわね、あなた」


     *


 夜。


 新開市へ入ったOCM海外部門の部隊は、まだ一発も撃っていなかった。TIGERは危険区域の警護に立ち、PANTHERは企業倉庫の現地確認へ同行し、EAGLEは空から物流経路を撮影していた。ヴェラ自身もWEREWOLFを使わず、御厨の現地調査に付き添っている。


 全部。


 合法。


 全部。


 協力。


 全部。


 役立ってる。


 御厨の仕事は以前より速くなった。


 ヴェラは、新開市へ入る理由を手に入れた。


 OCM海外部門は、アライアンス協力事業者という看板を手に入れた。


 アライアンスは、企業調査を進める実働力を手に入れた。


 誰も損をしていないように見えた。


 だからこそ、止める理由もなかった。


     *


 御厨綴は、その夜最後の記録を開いた。


《OSCAR REINHARDT》


 企業幹部。


 OCM。


 現地影響力。


 NECRO。


 海外部門。


 榊圭吾。


 新開市。


 いくつもの線。


 伸びる。


 ヴェラは少し離れたところから画面を見ていた。


「随分あるわね」


「企業幹部ですから」


「悪党?」


 御厨の手が止まった。


 目だけ。


 ヴェラ。


 見る。


「まだ」


 一拍。


「そんな話はしていません」


「じゃあ何」


 御厨は穏やかに笑った。


「記録します」


「それだけ?」


「はい」


 画面へ新しい項目が増える。


「判断は」


 一拍。


「その後です」


 窓の向こうでは、新開市へ入ったOCM海外部門の機体が夜間警戒灯を点けていた。そのさらに向こうでは、日本国企業の工兵ドローンが復旧作業を続け、アライアンスのQbs.Bm.が静かに巡回している。


 人が増えた。


 企業が増えた。


 武装が増えた。


 そして、それらを結ぶ線も増えた。


 御厨の台帳へ、毎日新しい名前が流れ込む。


 ヴェラはその横で、ようやく自分の欠けていたものを見つけた気になっていた。盤面全体を自分で見る必要はない。後ろを見られる人間がいるなら、自分は前だけを見ればいい。


 だが御厨綴は、ヴェラ・クラウスの後方司令官になったつもりなどなかった。


 彼女にとってヴェラも、OCM海外部門も、オスカーも、アリスも、久我原も、マティアスも、まだ同じだった。


 見る。


 残す。


 比べる。


 判断する。


 そのための対象。


 ただし。


 以前と違うことが一つだけあった。


 今の御厨には、台帳を持って現場へ行くための足があった。


 危険な場所へ入るための兵士がいた。


 そして、必要なら人を止められるQbs.Bm.までいた。


 記録を集める手は、もう御厨綴一人の手ではなかった。


 台帳と狼は、その日初めて、同じ方向を向いて歩き始めた。


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