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第十一話 いよいよ

すいません。遅くなりました。

 ヘリコプター内で座り込む四人の少女。関兵第七部隊、盾部隊と医療班でそれぞれ分けられているため今彼女達が乗るヘリには運転手以外の隊員はいない。


 高度が高く本来であれば上昇気流で内部は安定しない揺れが続くはずだが、性能が良いためその影響も些細なもの。うとうとし始める智彩や既に寝ている日影から判断できるように戦闘前の緊張感とか不安や恐怖は全くと言っていいほど存在しない。


 しかしそんな現状に痺れを切らすように、


「それで、私はどういう役回りになるの?」


 全員が乗り込んで数分したのち、実璃が疑問を漏らす。第7部隊の専属サポーターと奏は言っていたが、詳しい内容を聞いていない。


―――もしもの時のお飾り…なんて言っていたけど、本当にそうならなんで私を連れてくるかわからないし。


 何も知らないまま現場に行っても足手纏いになってしまう。そんな心配をしている実璃の内心を見通すように、奏は文言を口にする。


「心配ないよ。みのりんには、医療班に混じって私達の武器点検と備品の管理を任せる予定だから。第七部隊の専属サポーターだからね」


 ふわぁ、と欠伸をこぼしながら、眠気に襲われている智彩と日影に配慮するよう実璃にそっと耳打ちする。


「大丈夫、怖くない?」


 心から実璃を案じる声のトーン。優しく思いやる気持ちに、実璃は自分の感情を伝える。


「……怖くないって言えば嘘になる。エネミーにはたくさんの大切なものを奪われたから」


 故郷、両親、絶対に離れないと約束をした友達ですら奴らのせいで離れ離れになった。


 恐怖より憎悪の方が強いが、それでも全く怖くないと言われたらそれは誤りになる。


「でも、もう大丈夫。だって、奏がいるから」

「!」


 奏は言ってくれた。絶対に裏切ったりしないと。


 なら実璃はその言葉を信じる、それだけだった。


「分かった。なら、実璃は私が絶対守る。敵の攻撃に触れさせたりはしないよ」


 力強く断言する奏に、実璃もまた深く頷く。まだ会って数日しか経ってないのに、両者共に互いを信じきっていた。


『あれぇ、完全に起きるタイミング失ったっす。軽く仮眠を取るつもりが、このままじゃ完璧に寝ちゃうっす!』


「スゥ…スゥ…」


『って、いつもはツッこむ奴がここにきて熟睡してる!? そんな、寝起きは体がだるいから動きたくないのに! 誰か助けてくれーっす!!』


 うっすらと涙目で寝る智彩であった。




「よっと! 着いたはいいけど随分な状況だね」


 ヘリコプターから降り、現場に到着した奏達は辺りを見渡し深刻そうな表情になる。


「医療班の最終ラインにまでエネミーの腐敗臭がする。これは、だいぶ戦線が押されているのかもしれないわ」

「そう…すね」

「何だか眠そうね」

「はは、誰のせいっすか」

「?」


 現場に到着した隊員が最初にやる事、それは戦線の統一である。


 最前列を盾部隊で並べ、エネミーの侵攻を防ぐ。関兵は十五分ごとにローテーションをしてエネミーの数を減らす。後衛隊はそこから少し離れた簡易的な砦で狙撃や爆薬を設置して関兵のサポート。それより更に後ろで医療班がテントを張り、負傷者の手当て、亡くなった者を設置された安置所まで運ぶ。これが基本的な内容になる。


 とはいえ毎回全ての部隊が揃っているわけではないので、現場にいる各部隊の隊長が作戦を示し合わせることになる。


―――今回、私たちの前の部隊には盾部隊がいない。関兵の人数を多くして、盾部隊なしの速さ重視の作戦で上層部は考えていたんだろうけど、完全に裏目に出たようだね。


 奏が腕時計に目をやると、出発から二十分が経過している。関兵がエネミー原産の武器を扱える時間は三時間程度。それ以上使えば身体から魔力が消え、死に至ってしまうため、急いで救援に向かわなければいけない。


「とりあえずみんな、装備は着てるね。なら智彩と日影、二人は第二部隊の救援に行ってくれる?」

「了解っす!」

「いいけど、勝手に行動しちゃって大丈夫なの?」


 日影が不安になるのも無理はない。通常ならそれぞれの隊長と任務の概要を照らし合わせる必要があるからだ。


「今回は非常時だし、しょうがないよ。それに、各部隊それぞれの救援に行ってるし」


 見れば、ヘリコプターが降り立つ場所は同一であるのに、各部隊集合なんて真似はせず、戦線へと駆けている。頭より身体を動かすのが得意な彼らにとって、この状況は当然とも言える具合だった。


「はぁ、分かったわ。部隊の場所は?」

「ここから北に六百メートル。まあ走っていけば辿り着くと思うよ」

「随分と漠然とした言い方ね」


 思わず笑みが溢れる日影。すぐに切り替えるように智彩に同じ文章を告げる。


「理解したっすよ!」

「じゃあとっとと連中を助けに行くわよ」

「はいっす!」


 パッとその場から走っていく二人。その背中を見つめながら、奏はどこか困った、それでいて寂しそうな顔をした。


「–––––の分まで、頑張って」

「…奏?」

「ううん、なんでもないよ」


 小さく呟かれた一言。それを隠すように、奏は話を切り替える。


「私たちも行こっか」

「それはいいんだけど、智彩と日影」


 エネミーに対応できるのは関兵であっても一人。その事実を知らない実璃であっても今危機に陥っている他の部隊の救援にたった二人で向かうことがどれだけ無謀なのか、予想はできる。


「奏は私のこと守るって言ってくれたけど、あの二人を見殺しになんてしないよね?」

「……」

「奏?」


 すっかり黙ってしまった奏に実璃が心配そうに呼びかける。一息ついて、何かを思い出すように、奏はさも簡単に主張を並べた。


「心配ないよ。あの二人はね、すごーく強いんだから」

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